【旅コラム】宇都宮徹壱の『そこにフットボールがあるから』第2回「鹿児島」

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 当連載で紹介するのは海外ばかりではない。国内にも「そこフト(『そこにフットボールがあるから』の略です)」的な場所はあまたある。

 今回はそんな中から、今年の夏に訪れた鹿児島について紹介することにしたい。九州最南端に位置する鹿児島は、東京で暮らす私にとってはなかなか縁のない土地であった。加えて同県には今のところJクラブがなく、私自身にとっても九州で唯一未踏の地となっていた。

 しかし実際に訪れてみると、鹿児島はまさに観光資源が盛りだくさんの素晴らしい土地であった。桜島をはじめとする雄大な自然は素晴らしいし、明治維新ゆかりのさまざまな史跡も興味深い。また県内あちこちに点在する温泉を愉しむのもいいだろうし、地元産の海の幸、山の幸を焼酎と共に味わうのもいい。

 とりわけ食事に関しては、まったく外れがない。魚であればマグロやキビナゴやカンパチ。肉であれば、さつま地鶏、黒豚、黒毛和牛。野菜や米も新鮮で滋味深い。ちなみに鹿児島の醤油は、関東の人間からするとかなり甘く感じられるが、地元の魚や肉との相性が抜群に良いので癖になる。

 地理的にアジアが身近に感じられるのも、鹿児島ならではの魅力のひとつである。薩摩焼の里として知られる美山には、さまざまな窯元や工房が点在しているのだが、最も有名なのは沈壽官(ちん・じゅかん)の窯元。豊臣秀吉の朝鮮出征の際に半島から連れて来られた陶工を開祖とし、以後、15代続く窯元として知られている(詳しくは司馬遼太郎の『故郷忘れじがたく候』を参照されたし)。併設された美術館では、ウィーン、セントルイス、パリの万博で展示された第12代沈壽官の作品群を鑑賞することができる。

 さて、先ほど鹿児島にJクラブはないと申し上げたが、将来的なJリーグ入りを目指しているクラブはある。今季からJFL(J1から数えて4部)で活動する、鹿児島ユナイテッドがそうだ。まだまだアマチュア然としたクラブであるが、サポーターの数も徐々に増え始めており、県内での知名度も上昇中。

 ユナイテッドが晴れてJクラブとなった暁には、鹿児島は新たな観光資源を手に入れることになるだろう。メイン会場は市内にある鴨池陸上競技場。もし週末に鹿児島を訪れる機会があったら、ぜひ訪れてみてほしい。

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