【旅コラム】宇都宮徹壱の『そこにフットボールがあるから』第4回「松山」
現在J2に所属している愛媛FCは、ふだんは全国メディアに取り上げられることのない、典型的なローカルクラブである。
かつての所属選手には、齋藤学(現横浜FM)、高萩洋次郎(現広島)、森脇朗太(現浦和)といった代表クラスの選手が所属していたが、いずれも期限付き移籍。残念ながら、現所属チームに全国区の選手はいない。
むしろこのクラブの場合、マスコットの数の多さと認知度の高さでつとに有名である。オ~レくん、たま媛ちゃん、伊予柑太の「3柑」、そしてカエルの一平くんと金太という総勢5匹(?)。愛媛のホームスタジアム、ニンスタで彼らが勢揃いする図は、まさに圧巻である。
このうち非公認マスコットの一平くんは、アウエーの会場や日本代表の試合にも出没するので、サッカーファンの間で知らぬ者はない存在だ。もともとは、愛媛の飲食店「ゆうゆう亭」(今年9月15日に惜しまれながら閉店)のイメージキャラクターだったのが、あまりにも無断欠勤が続いたために解雇。その後、愛媛の応援を中心としたさまざまな活動が話題となって、今ではサッカーファンの間では知らぬ者がない存在となっている。
そんな一平くんに会いに、四国松山を訪れてみるというのはどうだろう? 松山といえば、松山城、道後温泉、坊っちゃん列車、そして四国八十八箇所の1つである石手寺など、なかなか見どころの多い街である。
しかし今では一平くんもまた、愛媛の立派な観光資源のひとつとなっており、松山空港の土産物コーナーにはさまざまな一平くんグッズであふれている。愛媛の土産といえば、かつては「坊っちゃん●●」と命名されたものがほとんどであったが、時代は刻一刻と変わりつつあることを実感する。
そんな一平くんが主戦場としているニンスタは、松山市駅バスターミナルより20分ほど。決してアクセスが良いとは言えないが、ニンスタの近くには、日本初の人工哺育で育った「しろくまピース」で知られる県立とべ動物園もあり、こちらと併せて愉しむことをお勧めする。
象やトラやフラミンゴを間近で観察し、巨大なカエルと戯れてから、愛媛FCのホームゲームを観戦する。これこそが、新しい松山観光のあり方である。ゆうゆう亭の閉店は残念だが、一平くんはますます元気。ぜひ、会いに行っていただきたい。
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