シンガポールの大手DVDショップ徹底解剖!「海賊版とは知らなかった」と言い張れば罪に問われない

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在シンガポール日本人におなじみのDVDショップ「Pho Kim」は、一見レンタルショップに見えるが扱う品物はセルDVDのみ。店構えも立派で、国内の主要ショッピングモールに数多く出店するシンガポール1の有名店だ。

しかしそのDVDが、ちょっと変。いや明らかに変。見た目もチープだけど、ドラマ1タイトルにつき30ドル前後、2タイトル買うと50ドルと安すぎる。店によっては2本で30ドルなんてことも。

普通に考えれば海賊版だが、こんなに堂々と売っていいの?罰金国家シンガポールで?とハラハラする。シンガポーリアンの友人に聞いたら「正規品だ」と言うのだが……。

そんなPoh Kimの不思議DVDを徹底解剖してみたい。今回お邪魔したのは、日本人の砦「リャンコート」にあるお店。日系スーパー「明治屋」のお向かいにある。

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こちらが店構え。なかなか立派である(このあと撮影に気づいた店員からべったり監視されたが)。

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ブルーレイを買ってみた。去年の大ヒット作「あまちゃん」。放送後すぐに売りに出ていたが、今回は二度目の入荷かな?前後編パックで約50SD(4000円)。ちなみ日本版は全3巻で、Amazonだと4万円以上するので大変お買い得。

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開けてみた。内側の統一感なし(笑)。全156話を6枚のディスクに奇跡の圧縮。

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1枚目には24話。最後の1枚はさらに話数が増えるのかな?

タイトル画面に流れるあまちゃんのオープニングテーマが、変なところで切れてループするので少々気が狂いそうになる。

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DVDプレーヤーでも再生できちゃうミラクルブルーレイ。

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民放ドラマでは、たまに提供も入る。スポンサーは重要情報だもんね。

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こちら「DOCTORS2最強の名医」。日本版の販売元はTCエンタテインメントだが、シンガポール版はTOEI VIDEOから。リージョンフリーのMade in Japanだ。

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「半沢直樹」は国内生産もしくは中国からの輸入かな?

日本の常識ではリージョンフリーで提供も入ってるとなれば完全に海賊版だが、こちらでは公式サイトやFBページ(https://www.facebook.com/pohkimvideo)もある「ちゃんとした企業」の「ちゃんとした商品」である。会社の歴史も所在地も連絡先も全て公開してある。自信満々だ。

サイトによれば、この会社は1984年にレンタルビデオショップとして開業、97年から(パチもんの王道である)VCD販売に乗り出す。同年「Overseas Movie Private Limited」という会社が売り出す海外コンテンツの著作権取得開始、「シンガポール正規品」のDVD販売に着手した。

創設者のLim chee yong氏は業界のリーダーとしてメディアへの露出も多く、熱心な慈善活動を讃えられ大統領賞も贈られた、とのこと。このOverseas Movie Private Limitedという企業は、検索する限りではiPadなどのアプリ制作会社しか出てこなかった。そこが売り出す「著作権」というのが一体何なのかは謎である。

シンガポールはアジアの知的財産保護のハブを目指し、海賊版が摘発されれば最高10万ドルの罰金または5年以下の禁錮刑に処される。なのになんでこんな真っ黒な商品が堂々と商売できるのか?そこには当然「法の抜け穴」がある。

まず権利侵害をうけた方が自力で証拠を集め告訴しなくてはならないのに、著作権侵害では警察の強制捜査が適用されない。そのうえ莫大な費用と手間をかけて刑事告訴しても、相手が「海賊版とは知らなかった」と言い張れば罪に問われない。並行輸入に関してはほぼスルー。

つまりできることといったら税関で摘発することぐらいなのだが、国内で作ってしまえばバレっこないわけで、特にPoh Kimぐらい堂々と商売しているとなれば、さらに巧妙な仕掛けを巡らせているのはずだ。海外企業も野放しにするしかないのだろう。

やはり東南アジアというべきか、華僑の国というべきか。実物を見たい方は、チャンギ空港第三ターミナル地下のショッピング街にも店があるのでチェックしてみよう。しかし日本の税関で見つかれば没収されるので要注意。

Post: 松下祥子