【世界遺産】「眠りこけている」といわれるモロッコの古都・メクネスのメディナを歩く

モロッコのメディナ(旧市街)といえば、マラケシュやフェズのように喧騒に満ちたカオスな町が思い浮かぶかもしれません。

しかし、モロッコにはゆったりとした落ち着いた空気が流れるメディナも存在します。それが、「古都メクネス」として世界遺産にも登録されているメクネスのメディナです。

メクネスの最盛期は17世紀、アラウィー朝のスルタン、ムーレイ・イスマイルの時代。彼は壮大な王都の建設の建設を夢見て、すでにあった古い建物を次々と壊しては城壁や門、モスクなどの新しい建物を建設しました。その背景には、同じ時代にヨーロッパで「太陽王」としてその名をとどろかせていたルイ14世が造ったヴェルサイユ宮殿への対抗心があったといわれています。

ところが、首都としてのメクネスは約半世紀続いただけで、その後首都がフェズやマラケシュに移ると、メクネスはしだいに衰退していきます。

今では「現在のメクネスは眠りこけているように見える」ともいわれるほど。しかし、メクネス独特ののんびりとした空気は、旅人を魅了する不思議な力をもっています。

メクネスのシンボル的存在が、かつての王都へのメインゲート、マンスール門。ムーレイ・イスマイルの命によって建てられた最後の建築物で、彼の死後、息子のシディ・ムハンマド・イブン・アブダラーの時代、1732年に完成しました。

「アフリカで最も美しい門」といわれるだけに、網の目のような彫刻と緑のモザイクで彩られた門は目を見張るほどの壮麗さ。この門をひと目見ただけで、かつてのメクネスの繁栄ぶりがうかがえます。

マンスール門の南にはかつての王都の跡が広がり、その北側には迷路のようなメディナ(旧市街)が広がっています。

マンスール門のすぐ向かいには、メディナ歩きの起点となるエディム広場があります。

夕方になるとさまざまな物売りやパフォーマーが集まってくるにぎやかな広場で、広場の規模とにぎやかさの度合いは違えど、どこかマラケシュのジャマ・エル・フナ広場を彷彿とさせます。カフェやレストランも並び、食事や休憩にもぴったり。

広場の北側には19世紀末に建てられた王宮を利用したジャメイ博物館が立っています。外からはとても小さく見えますが、モロッコの伝統的な建築や生活習慣がわかる充実した展示内容は必見。

エディム広場から北に進んでいくと、迷路のような細い路地が張り巡らされたメディナが待っています。

メクネスのメディナ最大の見どころが、スーク(市場)のなかにひっそりと立つブー・イナニア・マドラサ。誰が書いたのか、日本語の文字が目印です。

マリーン朝時代の14世紀に建てられたイスラム神学校で、内部に一歩足を踏み入れた瞬間、中世イスラム都市にタイムスリップしたような感覚に包まれます。

床や壁を彩るモザイクタイルや、壁に施された精巧な彫刻の数々は息を呑むほどの美しさ。

マラケシュやフェズに比べると、メクネスは観光客が少ないので、よりじっくりとこの建築美を堪能することができます。2階のテラスから眺めるメクネスの風景も古都の情緒たっぷり。

ここから見える緑の美しい塔は、スークの真ん中にあるメクネス最大のモスク、グラン・モスクのミナレット(尖塔)。非イスラム教徒は入れませんが、メディナ散策の目印として覚えておきましょう。

ムーレイ・イスマイルによって築かれたメディナの北の入口となる門が、ベルダン門。馬蹄形の模様やモザイクタイルが美しく、その堅牢な姿には圧倒されます。

城壁に囲まれたメクネスのメディナは、マラケシュやフェズに比べるとずっと規模は小さいものの、方向感覚に自信のない人はすぐに迷ってしまいそうな迷路のような町。

この日はイスラム教の集団礼拝が行われる金曜日だったため、メディナのお店はほとんどが休業で、人通りも少なくひっそりとしています。

衣料品や陶器、革製品、香辛料など、さまざまなお店がひしめき合う活気あふれるメディナも魅力ですが、時間が止まってしまったかのようにゆったりした空気が流れるメディナもまた味わい深いもの。

落ち着いたたたずまいが魅力の古都・メクネスで、しばしのタイムトラベルを楽しんでみませんか。

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