ポルトガルの大航海時代を象徴する壮麗なる世界遺産、ジェロニモス修道院が美しい
|情緒あふれる坂の多い街並み、歴史ある教会や城跡、日本ともゆかりの深いミュージアムなど、多彩な魅力をもつポルトガルの首都リスボン。
そんなリスボンを代表する観光スポットのひとつが、大航海時代の歴史的建造物が残るベレン地区の中心にたたずむジェロニモス修道院です。
ジェロニモス修道院は、まさにポルトガルの黄金時代を象徴する存在。「マヌエル様式の最高傑作」と称され、世界遺産にも登録されています。
マヌエル様式とは、当時のヨーロッパでは最先端であったゴシック建築をベースに、イスラム建築のドームや出窓を取り入れ、華やかな装飾を施した建築様式のこと。世界各地の建築様式を取り入れて完成したマヌエル様式には、世界に進出した当時のポルトガルの栄光が詰まっているのです。
ジェロニモス修道院は、ヴァスコ・ダ・ガマとエンリケ航海王子の偉業をたたえ、1502年、マヌエル1世の命により着工。東方貿易や植民地支配で得た莫大な富が投入され、最終的な完成まではおよそ300年もの歳月が費やされました。
ジェロニモス修道院の外観で必見なのが南門。スペイン人建築家のジョアン・デカスティーリョが制作した聖母マリア像を中心に、24の聖人や高位聖職者の像が並びます。
海洋大国ポルトガルの誇りを見せつけるかのような彫刻は圧巻。1584年にジェロニモス修道院を訪れた天正遣欧少年使節団も、この南門の壮麗さに驚嘆したのだとか。
ジェロニモス修道院最大の見どころともいえるのが、中庭を取り囲む2階建ての回廊。
1階は数多くのマヌエル様式建築を生み出したフランス人建築家ボイタック、2階は彼の死後を引き継いだジョアン・デ・カシュティーリョによって設計されました。
光の加減や見る角度によって、ベージュや白、グレーなど異なる色合いを見せる回廊部分。光と影が生み出すさまざまな表情が、どこかとらえどころのない神秘的な雰囲気を生んでいます。
柱やアーチを覆いつくす精緻な彫刻にも注目。これらの彫刻はイスラム建築のアラベスクの影響を受けています。
海洋大国らしく、ロープや珊瑚といった海や航海にかかわるモチーフが多用されており、何種類見つけられるか、挑戦してみるのも楽しいですね。天球儀のモチーフには、マヌエル1世の治世をたたえる意味合いが込められています。
回廊の2階部分は、修道院に付属するサンタ・マリア教会の2階へとつながっています。複雑なシルエットを描く天井と、細やかな彫刻で覆われた柱の数々が幻想的。
サンタマリア教会の1階へは、西門から入場します。ヤシの木をモチーフにしたとされる細い柱が連なる光景はまるで森のよう。
ゴシック建築らしい重厚感と荘厳さのみならず、どこか近未来を思わせる独特の雰囲気も併せ持っています。高い天井をもつ壮大な空間には、すべてを包み込む優しさと、力強さを感じずにはいられません。
教会の内部には、インド航路を発見したヴァスコ・ダ・ガマと、その偉業を抒情詩としてたたえたポルトガルを代表する詩人、ルイス・デ・カモンイスの石棺が安置されています。
教科書でその名を目にした偉人が目の前で眠っているなんて、なんだか不思議な気分になりますね。
ポルトガルの大航海時代の栄華が肌で感じられるジェロニモス修道院。この壮麗な世界遺産は、今日も誇り高く、世界中の訪問者を迎え入れているのです。
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