知名度の低さが信じられないほど美しいドイツの木組みの街、ハン・ミュンデン
|ドイツの中央部、メルヘン街道沿いに位置する小さな街、ハン・ミュンデン。この街には、知る人ぞ知る、ヨーロッパでも有数の美しさを誇る木組みの街並みが残されています。
驚くほどに美しい風景が広がっているにもかかわらず、なぜか観光客の姿はまばら。あまり観光地化されておらず、日常の穏やかな空気が流れるハン・ミュンデンは穴場の街なのです。
600年前から残る700以上の木組みの建物がひしめき合う旧市街を歩けば、たちまちメルヘンの世界に迷い込んだような気分になることでしょう。
ハン・ミュンデンの旧市街の中心が、市庁舎と聖ブラジウス教会の建つ広場。
ヴェーザールネッサンス様式の市庁舎は、ハン・ミュンデンで最も特徴的な建造物のひとつ。細部にいたるまで、豪華に装飾された壮麗な建物は、圧倒的な存在感で見る者の目と心を奪います。こんな建物、これまでに見たことがあったでしょうか。
なかでも、玄関の装飾扉は圧巻。黄色やオレンジ、青、緑、茶色といった鮮烈な色彩の競演と、ライオンや天使などの装飾があいまって、一度見ると忘れられないインパクトがあります。
市庁舎と背中を並べるようにして建つもうひとつの大きな建物が、13世紀に建設が始まったゴシック様式の聖ブラジウス教会。
内部に足を踏み入れると、ホールに響き渡る荘厳なパイプオルガンの調べが、私たちを別世界へといざないます。
市庁舎と聖ブラジウス教会を中心にして広がるハン・ミュンデンの旧市街は、どこを歩いてもメルヘンチックな木組みの建物でいっぱいです。
街のメインストリートが、ランゲ通り。通りの両側に華やかな木組みの建物が並び、地元の人々でにぎわっています。
ここでは、ブティックも、書店も、薬局も、携帯電話のショップも、何もかもが美しい木組みの建物。
数百年前から残る歴史的建造物が、現代の人々の生活に欠かせないお店として使われているのは、なんだか不思議な感じがしますね。
メインストリートをはずれて、小さな路地に入りこむと、そこは優しい時間が流れるメルヘンの世界。この街では、とにかく歩くことが一番の楽しみなのです。
ドイツの木組みの街並みといえば、ローテンブルクをはじめとする南ドイツの街を思い浮かべる人が多いかもしれません。ところが、ローテンブルクに代表されるような南ドイツの木組みの街並みと、ハン・ミュンデンで見る木組みの街並みはずいぶん印象が違います。
南ドイツの木組みの街並みが、砂糖菓子のように甘く可愛らしく、田舎っぽい素朴な温かみがあるのに対し、ハン・ミュンデンの木組みの建物は、可愛らしさや素朴さを備えつつも、どこか高貴でミステリアスな雰囲気を漂わせています。
それは、動きのある切妻屋根やファサードに施された優雅な装飾、おとぎの世界への入口を思わせる個性的な装飾扉といった、独自の建築様式によるもの。
カラフルで、可愛らしくて、素朴で、華麗で、気高いハン・ミュンデンの建物たち。これまでに何度も木組みの街並みを見たことがある人にとっても、この街の風景は特別なものに映るはずです。
ハン・ミュンデンを語るうえで忘れてはならないのが、「鉄ひげ博士」。かつてこの街に、「鉄ひげ」と呼ばれるお医者さんが住んでいました。
研究熱心なうえに目立ちたがり屋で、群衆の前で手術を披露したり、新しい治療法を生み出したりしていたため、ほかの医者たちから妬まれ、「やぶ医者」というレッテルを貼られてしまったのだとか。
実際には大変誠実な人物だったという鉄ひげ博士の家は、ランゲ通り79番地に残されています。軒先に掲げられた博士の像をお見逃しなく。
せっかくハン・ミュンデンを訪れたら、旧市街を一望できるとっておきの場所に足を運びましょう。それが、ティリーシャンツェと呼ばれる塔のある丘。1885年に建てられた高さ25メートルのティリーシャンツェは、街のシンボル的存在でもあります。
塔が立つ丘から、オレンジの屋根が連なる旧市街と周囲の森が織り成す絶景を堪能。美しい木組みの街並みのみならず、心安らぐ豊かな自然環境もまた、ハン・ミュンデンの魅力なのです。
「鉄ひげ博士」が活躍した木組みの街、ハン・ミュンデン。あまり知名度が高くないのが信じられないくらい素敵な街並みに、あなたもきっと感激するはずです。
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