スペイン・テネリフェ島のサンタ・クルスにある広大な植物園「パルメトゥム」

大西洋のアフリカ大陸近くに浮かぶカナリア諸島のなかで、最も大きな島であるテネリフェ島。リゾート地が集まる南部と比べ、北部の町サンタ・クルスではビルや建物が並ぶ都会的な雰囲気が感じられます。

港町としても重要な役割を担っており、港に面した道を歩けばいくつもの船が行き交う様子を観察できます。タイミングが合えば、カナリア諸島や地中海を巡る巨大なクルーズ船にも出会えるかもしれません。

そんなサンタ・クルスの海岸沿いあるのが、面積12ヘクタールの巨大な植物園「パルメトゥム」。「ヤシ科の植物」を意味する「パルメ」という言葉が名前にもある様に、世界中のヤシ科植物に特化した面白い植物園です。

植物園があるのは、かつてゴミ集積場だった場所。集積場の操業が1983年に停止された後、残された高さ40mものゴミの山の処理をめぐり、市民の間で激しい議論が繰り広げられました。結局良い解決策が見つからないまま90年代に突入し、ゴミの山問題も忘れ去られていた頃、1つの革新的な案が提案されます。それが、この山を植物園に変えてしまおうという案だったのです。

ごみ集積場を植物園へと転換するプロジェクトは1996年にはじまりました。欧州各地の団体などから資金や協力を得ながら約20年もの歳月をかけ、ゴミの山から植物園が形作られていったのです。

そして2014年、遂に植物園「パルメトゥム」がオープンを迎えました。ここではかつてゴミ集積場だったことがまるで嘘のような、緑豊かな丘が広がります。

丘の上はサンタ・クルスの町も一望できる絶景スポット。

パルメトゥムに集められている植物はおよそ2000種。うち400種以上がヤシ科の植物で占められています。園内ではアジアやアフリカといった地域のほか、マダガスカル島やポリネシア諸島といった島ごとにエリア分けされ、それぞれの地特有の植物が植えられています。

どのエリアでも訪れる者の目を引くのは、やはりヤシ科の植物。高さ10メートル以上ある大きなヤシの木から人間の背くらいのものまで、高さも太さも様々なヤシの木々が目に飛び込んできます。

アジアを再現したエリアでは、ヤシに負けないくらい巨大なバナナも。池や滝なども見事に再現されていますが、これら全てが人の手により造られたのだから驚きです。

見た事のないような奇妙な形をした植物があるのも、南国の植物園ならでは。

園内を歩いていると、あることに気が付きます。それはここにある植物の多くが、とても巨大だということ。年中温暖な気候が関係しているのかバナナやヤシ、サボテンなど巨大な植物ばかりで、まるで自分が小人になったような気分になることも。

そして、ゴミの山をここまで多様な植物が集まる場所にした人々の功績も忘れてはいけません。彼らの情熱と沢山の協力があったからこそ、20年にわたる壮大なプロジェクトが実りを迎えたのです。

サンタ・クルスの海岸線の一角を彩る緑のオアシス「パルメトゥム」。まだ見ぬ珍しい植物を探しに出かけてみてはいかがでしょうか?

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