悲惨な歴史の物語を現代に伝える、アイルランド・ダブリンのキルメイナム刑務所

アイルランドの首都ダブリンの中心地からバスで10分ほど走った所にあるキルメイナム刑務所。

ここはアイルランド独立や内戦の歴史と密接に関わっている需要な場所です。その美しい建築から、数々の映画やミュージックビデオの撮影にも使用されてきました。

観光スポットとして人気となっており、いまなお多くの人が訪れるこの場所では、現在の楽しくて陽気なダブリンの町からは想像できない悲しい物語が存在します。

今回はそんなアイルランドの首都ダブリンのキルメイナム刑務所の歴史を紐解いてみましょう。

キルメイナム刑務所が建てられたのは1796年。世界ではアメリカの独立やフランス革命などが起き、アイルランド内でも独立の運気が高まっていた頃、それがこの刑務所が建設された時代です。

1924年に刑務所が閉鎖されるまで、ここには様々な囚人が収容されていました。

その中でも特に有名なのがイースター蜂起の主導者たちです。1916年のイースターにイギリスからの独立を目指して起こった武力蜂起では400人以上が死亡し、その後16人の蜂起指導者がここキルメイナム刑務所で処刑されました。

その中の1人、ジョセフ・プランケットは処刑2時間前に刑務所内にあるチャペルで結婚式を挙げました。

妻のグレース・ギフォードと一緒に過ごした時間はわずか10分ほど。この悲しい話はあまりにも有名です。

市民戦争の際、夫が処刑されたこの刑務所にはグレース自身も投獄されました。アーティストであった彼女が収容されていた独房には、彼女が描いた母と子の壁画が残されています。彼女はその後釈放され、再婚はせず画家として生涯を全うしました。

刑務所内部はガイドツアーで周るようになっており、独房や刑務所内のチャペル、要人の部屋を見学します。所々でガイドが当時の状況や施設の説明をしてくれ、興味深い話を聞くことが出来るとともに、劣悪な刑務所内の環境に思わず眉をひそめてしまいます。

独房として作られたはずの室内には、5人もの人が収容されていたという話もあります。当初は廊下の窓ガラスも無く、湿気や寒さによる健康被害も多く発生しました。

ガイドツアーで最後に訪れるのが、イースター蜂起の指導者が処刑された外のスペースです。

16人の指導者が銃殺された場所では、アイルランド独立のために自らの命を犠牲にして戦った彼らの思いが伝わってきます。蜂起は失敗に終わりましたが、これを機に国民の中で独立への機運が更に高まっていきました。

アイルランド史における悲しい物語。決して忘れてはならないアイルランドの歴史が、この地ではこれからも語られつづけるのです。

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名前 キルメイナム刑務所
住所 Inchicore Road, Kilmainham, Dublin 8
営業時間 9:30~17:30 (最終入場 16:15)
休業日 12月24、25、26日
HP http://kilmainhamgaolmuseum.ie/