日常風景にローマ遺跡が溶け込んだ、2000年の歴史をもつ南仏の街・フレジュス

日本ではあまり知られていない、魅力ある街々が点在する南フランス、プロヴァンス地方。コート・ダジュール地方に近い、リゾート感漂うエリアに位置する小さな街がフレジュスです。

街の入口には、ブリタンニアへのローマ軍の遠征で活躍したグナエウス・ユリウス・アグリコラの像がたたずんでいます。

夏ともなるとビーチはバカンス客で溢れますが、少し内陸に入ったところにあるフレジュスの旧市街は、静かな風情が楽しめる歴史の街。カエサルによって築かれたフレジュスは、ローマ時代にはこの地方で最も重要な港のひとつとして栄えました。

現在のフレジュスは、ゆったりとした時間が流れる地方都市。南フランスらしいカラフルな建物のあいだにローマ時代の遺跡が点在する光景が、かつての栄華を物語っています。

フレジュスの旧市街の中心は、サン・レオンス大聖堂。

ローマ時代の寺院跡に建てられたもので、フランスで最も古いもののひとつに数えられる5世紀の洗礼堂、12~13世紀に造られた回廊などが見どころです。

大聖堂の前には広場が広がり、広場に面したカフェで人々が憩いのひとときを過ごしています。

広場から少し離れると、パステルカラーの建物が並ぶ路地に出会います。黄色、オレンジ、ピンク・・・南フランスのあたたかい日差しのもと、色とりどりの美しい建物を眺めているだけで幸せな気分に。

フレジュスの街の面白いところは、ローマ時代の遺構がほとんど無造作といってもいいような状態で点在していること。

決められた入口があって、入場料が必要な遺跡もありますが、水道橋や城壁などは何気なくそこにたたずんでいて、この街の日常風景の一部と化しています。

フレジュスに残るローマ遺跡のなかで特に大規模なものは1万人を収容できる円形闘技場。1世紀の終わりに建てられたもので、剣闘士の戦いや、野生動物の狩りなどのショーが繰り広げられました。

現在もコンサートをはじめとするさまざまなイベントの会場として使われているため、一見近代的なスタジアムのように見えますが、裏側に回り込むと、この闘技場が経てきた歳月の長さを実感します。

円形闘技場に次ぐ見どころが、古代劇場。いつ建設されたのかはっきりとはわかっていませんが、1世紀ごろに造られたと考えられています。わずかに残った支柱が、当時のステージの位置を今に伝えています。

ステージ前の特等席は裕福なローマ人たちのために設けられた特別席だったのだとか。

イタリアのローマやフランスのアルルのようなダイナミックな古代遺跡が見られるというわけではありませんが、日常風景に溶け込んだローマ遺跡の姿が見られるのがフレジュスらしさ。

ビーチの喧騒に疲れたら、ゆったりとした時間が流れるフレジュスで、心安らぐひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。

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