「宝石」と称される、日本人が知らないドイツの美しい街・ゲンゲンバッハを訪ねて
|ドイツには、日本では知られていない中世の面影を残すロマンティックな街がたくさんあります。そのひとつが、ドイツ南西部・黒い森地方に位置するバーデンワイン街道沿いの街、ゲンゲンバッハ。
木組みの建物が並ぶ美しい街並みと、花にあふれた風景から、「バーデン地方のニース」「ロマンチックな宝石のような街」と称えられています。
この街を有名にしているのは、なんといっても世界最大級のアドベントカレンダー。アドベントカレンダーとは、クリスマスの準備をしながらカウントダウンを行うためのカレンダーで、ゲンゲンバッハでは、市庁舎の24個の窓を使って、カレンダーに仕立てているのです。
ゲンゲンバッハで最も美しいといわれる市庁舎は、ロココ様式と初期古典様式の要素をあわせ持つ壮麗な建造物。三角形の切り妻屋根の上の三体の像は、正義の神と知恵の神、裕福な貴族を象徴しています。
市庁舎前のマルクト広場では、11月下旬から12月23日までクリスマスマーケットが開催され、期間中は一日にひとつずつ、絵が描かれた窓が公開されます。すべての絵が眺められるのは12月23日。それから、新年の最初の一週間ぐらいまでその姿を楽しむことができます。
アドベントカレンダーの絵は毎年違った芸術家によって手掛けられ、過去にはマルク・シャガールなどの作品も登場しました。
クリスマスの時期にはいっそうの盛り上がりを見せるゲンゲンバッハの街ですが、たくさんの花々や緑が街を彩る春から夏にかけての表情も魅力的。観光客の姿が少ないぶん、普段の街の息づかいが感じられますよ。
市庁舎前のマルクト広場では、日常的に市が開かれ、野菜や果物、はちみつといった普段使いの品物が売り買いされています。
広場にたたずむレールの泉。泉の上に立つのは、ゲンゲンバッハの人々に親しまれている街の英雄、シュヴェートの像です。
左手には街の紋章が描かれた盾を、右手には帝国都市特権状を持つその姿からは、神聖ローマ帝国から帝国自由都市の地位を与えられたゲンゲンバッハの誇りが感じられます。
マルクト広場の前に延びるハウプト通りが、ゲンゲンバッハのメインストリート。木組みの建物や南ドイツらしいカラフルな建物が並び、眺めながら歩くだけでも楽しい風景です。
これらの歴史的建造物は、銀行や本屋、肉屋などの店舗として利用されていて、人々の日常生活に欠かせないものとなっています。
建物の外壁に描かれた、ゲンゲンバッハの歴史にちなんだ絵画や、さまざまなデザインが施された牛のオブジェなどの街角アートを楽しみながら歩きましょう。
マルクト広場から、ハウプト通りを南に歩くと見えてくるのが、キンツィヒ門塔。ゲンゲンバッハで最も高く強固な門で、かつてはこの塔で24時間体制の警備が敷かれていたといいます。
中世の面影を残す、木組みの建物が連なるひっそりとした通りを歩けば、まるでタイムスリップしたかのような気分が味わえます。しかも、これらの民家には今も実際に人が暮らしていて、生活の場ならではの素朴な温かみに心癒されます。
地面に並ぶ斜めのドアは、半地下室への入口。近代的なドイツの住宅には見られない、歴史的ある建物ならではの興味深い特徴ですね。
美しい街並みを誇るゲンゲンバッハですが、クリスマスの時期を除けば、ローテンブルクなどの有名観光地に比べて圧倒的に観光客が少なく、街には穏やかで優しい空気が漂っています。
そんな、ドイツの街の日常の姿が見られるところもまた、ゲンゲンバッハの魅力といえるでしょう。
普段着のドイツが感じられる美しい街、ゲンゲンバッハ。ここならきっと、今まで知らなかったドイツの魅力に出会えるはずです。
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