モンテネグロの至宝、山と湾に囲まれた世界遺産の中世の街・コトル

バルカン半島の小国・モンテネグロの至宝が、世界遺産の街・コトル。

隣国クロアチアの世界遺産の街・ドゥブロヴニクからバスでおよそ3時間と日帰りが可能なため、ドゥブロヴニクからの小旅行先として人気を集めています。

モンテネグロ西部、ボカ・コトルスカと呼ばれる地域に形成された湾の最奥に位置するコトルは、複雑な海岸線と険しい山々に囲まれた天然の要塞。

その起源を古代ローマ時代にさかのぼり、ビザンツ帝国やハンガリー王国に支配されながらも一定の自治を維持、14世紀にはセルビア王国のもとで最盛期を迎えます。その後ヴェネツィア共和国の支配下に置かれ、およそ400年にわたって海運貿易の拠点として栄えました。

街を取り囲む自然美と、中世の面影を色濃く残す旧市街が織り成す風景が魅力の、コトルを歩いてみましょう。

コトル湾とシュクルダ川にはさまれ、堅牢な城壁に囲まれたコトルの旧市街。

正門から旧市街の中に入ると、山をバックにして、時計塔をはじめとする石造りの建物が並ぶ光景が目に入ります。

旧市街は50メートル四方に収まるほどの規模ですが、歴史的建造物がぎっしりと並ぶ街は見どころ満載。

今も残る豪華な館の数々は、海運貿易で栄えたコトルの富を物語っています。街を歩く際には、建物に施された精緻な装飾にも注目してみましょう。

細い石畳の路地が張り巡らされたコトルの旧市街には、雰囲気のいいバーやカフェ、ギャラリー、ショップなどが点在。気になるお店をのぞいたり、カフェのテラス席でくつろいだりするうちに、心地良く時間が過ぎていきます。

観光地らしい賑わいがありながら、人々の日常が感じられるゆったりとした空気がコトルの魅力です。

コトルはローマ・カトリック文化圏と、東方正教文化圏の境界に位置するため、街には両方の教会が建っています。コトルのランドマークが、聖トリプン大聖堂。

聖トリプン大聖堂は、ローマ・カトリックの教会で、1160年にロマネスク様式で建てられました。塔以外は創建当時の姿をとどめていますが、内部は1667年と1979年の地震の後に改修されたため、意外にも新しい印象。

その一方で、天井付近のアーチ部分に残るフレスコ画が、中世の雰囲気を今に伝えています。

大聖堂2階に設けられた、宝物を展示するミュージアムも見ごたえあり。

聖二コラ広場には、聖二コラ教会と、聖ルカ教会、2つの教会が建っています。そのうち小さなほうが聖ルカ教会。

1195年に建てられたこの教会は、もともとカトリック教会でしたが、17世紀にセルビア正教会へと鞍替え。以降19世紀までは、カトリックと正教会の両方の祭壇が祀られていたという、カトリック圏と東方正教会圏のはざまにあるコトルらしいエピソードのある教会なのです。

内部には、ビザンチン様式のカトリック壁画や、正教会独特のイコンなど、この教会がたどってきたユニークな歴史を物語る芸術作品を見ることができます。

世界遺産の街・コトルは、実は「猫の街」としても有名。

もともとはネズミ退治のために飼い始めた猫が増え、いまでは「猫の博物館」や猫雑貨専門店なども登場、コトルの街おこしに一役買っています。

そんなコトルの街を歩けば、あちこちで猫に遭遇。街全体でゆるやかに猫を飼っている、そんな雰囲気が漂っていて、猫たちもすっかりリラックスしている様子です。

手作りの猫雑貨を販売するショップも充実していて、猫好きにはたまらないはず。コトルのおみやげは、ハンドメイドの猫グッズで決まり!?

城壁に囲まれた旧市街の風景も美しいですが、城壁の外から眺める山々の景色も圧巻。コトルを訪れるなら、何をするでもなく、ただこの美しい風景を眺めるのんびりとした時間をもちたいものです。

ダイナミックな自然美と中世の街並みが融合したコトルの街。ここに流れる優しい時間は、誰もを虜にしてしまうのです。

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