ドイツ発祥の地、世界遺産の1000年の古都・クヴェトリンブルクが驚くほど美しい
|ドイツのほぼ中央に位置するハルツ地方。ハルツの山には魔女が住んでいたという伝説もあり、どこか神秘的な雰囲気が残るこのエリアは、ドイツの秘境的存在です。
日本ではほとんど語られることはなく、まさに知る人ぞ知る地方ですが、実は個性豊かな中世の街の宝庫なのです。
そのひとつが、1000年の歴史をもつ古都・クヴェトリンブルク。ドイツの初代王、ハインリヒ1世が創設したザクセン王家の重要な拠点として位置づけたため「ドイツ発祥の地」とも呼ばれています。
ほとんど戦災を受けなかったため、交易で栄えた中世の時代の面影をそのままに残すクヴェトリンブルクの街。
世界遺産に登録されている旧市街には、なんと1300もの木組みの建物が残されていて、あらゆる建築様式と時代の木組みの建物を見ることができます。クヴェトリンブルクは、まさに天井のない木組みの家の博物館といえるでしょう。
世界遺産として登録されている範囲は80ヘクタールにも及び、これはドイツで最大の文化遺産。そのことからも、クヴェトリンブルクがいかに特別な街なのかがわかります。
クヴェトリンブルクの旧市街の中心が、マルクト広場。
ここで最も目を引く建物が、鮮やかな蔦で覆われた石造りの市庁舎。背後に建つ聖ベネディクト教会の塔と、隣に建つ木組みの建物と合わさって、物語の世界から飛び出してきたかのようなファンタジックな光景を生み出しています。
「マルクト(Markt)」とはドイツ語で「市場」や「市の立つ広場」の意味。その名の通り、午前中には市が開催され、地元の人々でにぎわっています。
ヴェトリンブルクで絶対に見逃してはいけないのが、旧市街の南西に築かれた城山。街のあちこちからその姿を見ることができます。
ふもとから見上げる壮大な城山は迫力満点。
この城はドイツの初代の王、ハインリヒ1世によって919年に築かれました。彼の死後、妻であるマティルデが貴族の娘たちの教育の場として女子修道院を設立。さらに、ハインリヒ1世の息子で、神聖ローマ帝国初代皇帝となったオットー1世が城を拡張し、宮殿としての機能を持たせました。
この城山の最大の見どころが、重厚な外観が圧倒的な存在感を醸し出す聖セルヴァティウス教会。もともとは9世紀初頭に建設されたものですが、現在のような姿になったのは1129年に建て直されてからのこと。
シンプルな造りですが、ロマネスク様式の傑作との呼び声高い教会内部には、オットー1世とマティルデの墓所があるのみならず、ドイツ屈指の教会財宝が展示されており、その歴史的・文化的価値は計り知れません。
マルクト広場周辺と城山周辺は、美しい木組みの建物の見本市状態。どこを歩いても個性豊かな木組みの建物が並んでいます。現在はレストランやショップとして使われている華やかなものから、民家として使われている素朴なものまで、その姿はさまざま。
美しい模様や彫刻が施されている建物も多く、その美しさに何度も立ち止まってしまいます。写真好きな人なら、シャッターが止まらなくなること請け合い。
その古さからたわんでいるものも多く、これらの家々がくぐり抜けてきた歳月の長さが感じられます。
クヴェトリンブルクは旧東ドイツに属していたこともあって、あまり近代的な発展を遂げている印象はありません。だからこそ、数百年ものあいだ時が止まったような街並みが残っているのです。
有名観光地に比べると観光客の姿もまばらで、飾らない日常の雰囲気が残っています。
素朴で、可愛らしくて、温かい。「これぞヨーロッパの美しい田舎街」といった優しい空気が流れるクヴェトリンブルクの風景を見ていると、世界屈指の経済大国・ドイツにいることを忘れそうになります。
ドイツの中世の街といえば、ロマンティック街道のローテンブルクが有名ですが、クヴェトリンブルクの街並みも決して負けていません。
クヴェトリンブルクを訪れれば、「こんなに素敵な場所があることを、もっとたくさんの人に伝えたい。でも、やっぱり秘密にしておこうかな。」と迷ってしまうことでしょう。
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