長寿のワインに失恋の治療薬!?エストニア・タリンにあるヨーロッパ最古の薬局に行ってみた
|旧市街がまるごと世界遺産に登録されているエストニアの首都、タリン。
タリン旧市街は北ヨーロッパで最もよく保存された旧市街のひとつといわれ、そのメルヘンチックな町並みは世界中の旅行者を魅了しています。
そんなタリン旧市街の中心をなすラエコヤ広場に面して立つのが、ヨーロッパ最古の薬局のひとつ、その名も「市議会薬局」。1422年にはすでに3代目が経営していたという記録が残っており、ロシアの皇帝も薬を注文していたことで知られています。
中世の時代、この薬局ではヘビの皮や手作りのジュース、精力増強剤として使われたユニコーンの角の粉末などに加え、ジャムやお茶といった一般的な食品も販売されていたといいます。
建物の正面には、薬学を象徴するヒュギエイアの杯(ヘビが巻き付いた杯)のマークがあり、見るからにレトロ。
ドキドキしつつ店内に足を踏み入れると、木の棚や木製の天井がいかにも歴史ある薬局といった雰囲気を醸し出す、クラシカルな空間が広がっています。
ヨーロッパ最古の薬局といえど、まだまだ現役。中世の面影を残す薬局でありながら、現代の薬や化粧品なども販売されていて、日常生活に密着したごく普通の薬局として機能している光景がなんだか不思議です。
とはいえ、ここには他の薬局では手に入らない特製の商品も売られています。
そのひとつがクラレットワイン。一見普通の赤ワインと変わりませんが、8種類のスパイスが入ったワインで、古くから「長寿のワイン」として重宝されてきました。
クラレットワインはタリンを訪れる観光客に大変人気があるため、450ミリリットル入りの瓶のほか、自宅で作れる材料の入ったセットも販売されています。
もうひとつ、この市議会薬局の名物となっているのが、「失恋の治療薬」。薬といってもマジパンのようなお菓子で、中世の時代から、この薬局では失恋の苦しみを癒す薬として処方されてきました。
材料の72パーセントはアーモンドで、残り28パーセントの成分は秘密。中世から伝わる秘伝のレシピゆえ、門外不出なのです。昔から恋の痛みを訴えてこの薬局を訪れる「患者」は後を絶たないといい、今も昔も人の悩みに変わりがないことになんだかほっとさせられるような気がします。
薬局の奥の部屋は小さな博物館となっており、ワニの剥製やヘビのホルマリン漬け、乾燥したカエルの足などのほか、さまざまな薬草や17~20世紀の薬学にまつわる器具が展示されています。
これらの展示品と、中世の時代に装飾が施されたという木製の天井とがあいまって、数百年前にタイムスリップしたような気分に。
薬局の窓の向こうには、中世からずっと変わっていないであろう旧市庁舎の立つ風景が広がっています。
数世紀にわたって人々の暮らしと健康を見守ってきた市議会薬局。ここは中世の町並みがまるごと保存されているタリンにふさわしい、今も生き続ける歴史の遺産なのです。
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