ナポレオンの歯ブラシからダーウィンの杖まで、医学に関する珍コレクションがおもしろい、ロンドンのウェルカム・コレクション
|世界最高峰の博物館「大英博物館(The British Museum)」をはじめとし、大小様々な博物館が無数に存在するロンドン。
2016年の世界でもっとも入場者数の多いミュージアム・トップ20のうち、ロンドンのミュージアム4館がランクインし、ワシントンDCに並びその数で世界トップの座に輝きました。
そんな世界のミュージアムの中心地とも言えるロンドンには、日本人旅行者にまだあまり知られていないユニークなミュージアムが数多く存在します。
イギリス北部へのターミナル駅である「ユーストン(Euston)」ならびに「キングス・クロス(King’s Cross)」駅一帯からテムズ河にかけてのエリアは、「ミュージアム・マイル(Museum Mile)と呼ばれ、大小13の見応えのあるミュージアムがひしめいており、なんとそのうち8館が無料入場。
今回はその中から『医学・薬学に関するものなら何でもあり』のユニークでハイセンスなミュージアム「ウェルカム・コレクション(Wellcome Collection)」をご紹介しましょう。
『ウェルカム』と言っても『ようこそ-Welcome』のウェルカムではなく、ウェルカム・コレクションを運営する「ウェルカム・トラスト(Wellcome Trust)」の設立者である「サー・ヘンリー・ウェルカム(Sir Henry Wellcome)」の名が由来となっています。
ヘンリー・ウェルカムはアメリカ生まれのイギリスの企業家で、大学の友人であったシラス・バロウズとともに製薬会社を創業し大成功した人物。
液体と粉末の薬しかなかった時代に、2人は世界で初めての錠剤薬のひとつである「タブロイド(Tabloid)」を販売し、莫大な富を築きました。
ウェルカムは1936年に医療の研究支援を目的とした公益信託団体ウェルカム・トラストを設立し、同団体はウェルカム亡き後も世界中の生物医学研究に対して多くの支援を続けています。
現在のウェルカム・コレクションは2007年にオープンした比較的新しいミュージアムで、「医学と化学とアートの融合」をテーマにしています。
医学に関するものなら何でも集めるという収集癖のあったウェルカムが世界中を旅して手に入れた膨大なコレクションや、書籍、現代アート作品などを常設展示するほか、さまざまな企画展も開催しています。
多くの入場無料のミュージアムでは、企画展は有料というところが多いのですが、ウェルカム・コレクションはほとんどの企画展で入場無料!物価の高いロンドンでとてもありがたい存在です。
広々とした館内には世界中から集められた医学に関連するアンティーク・コレクションなどを展示するギャラリー、現代医学と食をテーマにしたギャラリーのほか、カフェやレストラン、ショップ、図書館や居心地の良い読書ルームまであり、至れりつくせりです。
それではアンティークからギョッとする現代アートまで、そのユニークなコレクションの一部をご紹介しましょう。
・逆さまの男
エントランスに入ると天井で逆さまに出迎えてくれるのが、イギリスの彫刻家アントニー・ゴームリーによる彫刻「フィール(Feel)」。早速『普通のミュージアムじゃない感』を感じさせてくれます。
・ガラスの容器
5000以上もあるという薬品用、介護用などに使用されていた様々な色形のガラス容器のコレクションの一部。現代のガラスにない風合いが魅力です。
・コスプレするウェルカム氏
1885年に撮影された写真「Henry Wellcome in fancy dress」。戦士の頭飾りをつけ、スカーフを巻いて得意げに写真に写真に納まるウェルカム氏。やはり少し変わった人だったのかもしれません。
・絵画コレクション
妊婦の解剖図、自身を見世物にして金を稼いだ250キロの巨漢男、卵から赤ちゃんが生まれる出産シーン、立って診察する歯医者、キリストに祈りながら鼻血を出す女など、他に類を見ないユニークな絵画が並んでいます。
・シャーマンや魔術師のお面
世界中で古くから魔術や祈祷で病気を治せると信じられてきたシャーマンなどのお面コレクション。
・ナポレオンの歯ブラシ
ウェルカム・コレクションを代表する珍コレクションのひとつがこちら、革命期のフランスの軍人・政治家、ナポレオン・ボナパルトが使用していたとされる歯ブラシ。ハンドル部分には精巧な彫刻が施され、『N』の文字が刻印されています。
・中国の歯医者の看板
中国の歯医者の看板。貝飾りのようにも見えるのは本物の歯!
・ダーウィンの杖
「地球上のすべての種は同じ起源を持つ」という共通起源説と進化論をとなえ、「種の起源」を著したイギリスの自然科学者、チャールズ・ダーウィンが愛用していた杖。ダーウィンが歩いてくると、この杖の音がコツコツと聞こえ、すぐに『ダーウィンが来た!』とわかったそうです。
・アンティークの義手や義足
現代のものと違い重量感があります。
・脂肪の塊
イギリスのアーティスト、ジョン・アイザックスによるワックス彫刻「I can’t help the way I feel」。
肥満に警鐘を鳴らしている作品かと思いきや、実は『コントロールできない感情が表面化し、体を包み込んでいく』というイメージで作られたのだそうです。
・メディシン・ドレス
3階(日本式)にあるレストランに飾られたドレスをよく見ると、幾粒もの錠剤で彩られています。
・ドローン羊、ドリーの毛と糞
世界初の哺乳類の体細胞クローンである羊、ドリーの毛と糞。
・医学に関係あるのか疑問なものたち
日本のものと思われる小物や片方だけのわらじ、古銭など。
日本式の3階には図書館(別途入場申込みする必要あり)、イギリスの人気家具メーカー「アーコール(ercol)」のソファが置かれたインテリアが素敵なリーディング・ルーム、2階には大人も子供もお絵かきができるドローイング・コーナーも。また、館内の展示品をわかりやすく説明した冊子と、ステッカーや工作用紙付きの子供向けの無料キットも配布されており、子供も退屈することなく見学してくれることでしょう。
コレクションを見学したあとは、他のミュージアム・ショップでは買えないようなユニークな商品が並ぶショップもお見逃しなく。
ここで紹介したコレクションのほかにも、写真でお見せするのをためらってしまうような珍品も展示されています。
また、木曜は夜22時まで開館しており、夜は比較的空いているのでお勧めです。
ロンドンを訪れた際はウェルカム・コレクションの摩訶不思議なコレクションに好奇心を刺激されてみては?
Post: GoTrip! https://gotrip.jp/ 旅に行きたくなるメディア
住所:183 Euston Road, London NW1 2BE
開館時間:火・水、10時~18時
木、10時~22時
金・土、10時~18時
日、11時~18時
※ギャラリーは月休(カフェ&ショップ、図書館は18時まで営業)
入場無料
公式HP https://wellcomecollection.org/