ドイツの世界遺産の町トリーアにあるローマ時代の面影を色濃く残す円形劇場

ドイツ西部の町トリーア。2世紀頃に建設されたローマ帝国の植民都市「アウグスタ・トレヴェロールム」が起源になっているこの町では、今でも数々のローマ遺跡が町の中に点在しています。

今回ご紹介する円形劇場は、世界遺産にも登録されているトリーアの遺跡群のなかでもローマ時代の名残りを色濃く残す貴重な建造物。円形劇場と言えばローマのコロッセオを想像する方が多いと思いますが、ローマ時代には帝国の各地に似たような劇場が建設されたのです。

ローマのほかにも今回紹介するトリーアや、イタリアのベローナ、フランスのアルルなどに立派な円形劇場が建てられました。これら劇場は今日において、ローマ時代の栄華を私達に伝える重要な手がかりになっています。

2世紀に建設されたトリーアの円形劇場は、長さ75メートル、幅50メートルの楕円形をしています。このような格式高い劇場を建てることができたのは裕福な町のみであった事からも、トリーアの当時の繁栄ぶりが手に取るように分かります。

ローマ時代のトリーアは約6.4キロもの壁に囲まれていましたが、この劇所はその壁の一部でもありました。観客約2万人を収容できた劇場では剣闘士の命をかけた戦いが繰り広げられ、熱狂の渦に包まれたのです。

劇場の中心に立ってみれば、この場所にかつて立っていた剣闘士の気持ちが少しは感じられるかもしれません。

壁に並ぶ扉小さな部屋のような場所は、剣闘士や猛獣の待機所として使用されていました。

劇場の中心あたりには地下へ続く階段が。地下には一体何が隠されているのでしょうか。

劇場の下にある巨大な地下室には、剣闘士や猛獣を地下から登場させるための「せり上げ装置」が置かれていました。ローマのコロッセオにも同様の装置があったことからも、ローマ人の演出に対する相当なこだわりが伺えます。

栄華を極めた古代ローマ帝国もやがて衰退の途へ。トリーアの円形劇場は5世紀まで使用されましたが、中世には採石場として使用されたために劣化が進みました。

この場所にもかつては立派な客席があったはず。石を持って行かれてしまったせいか、現在ではほとんど客席の原型を留めていません。

ローマ時代とは形が変わってしまったかもしれませんが、ローマ帝国の息吹を肌で感じることができる円形劇場。その中心に立って、かつてこの地を支配した帝国の偉大さをかみしめてください。

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協力:ドイツ観光局