【埼玉県深谷市】渋沢栄一翁ゆかりの地をめぐる|渋沢栄一記念館、「中の家」ほか
|2024年7月3日、20年ぶりに3種類の日本銀行券が発行されました。新しい一万円券(一万円札)に描かれているのは、「近代日本経済の父」と称される実業家、渋沢栄一の肖像画です。
渋沢栄一は1840年に武蔵国榛沢郡血洗島村(現在の埼玉県深谷市血洗島)の農家に生まれました。青年期に欧州で近代的な社会制度を知り、民間人として経済による近代的な国づくりを目指して、銀行を拠点に生涯に約500もの企業の設立に関わったといわれています。
その名は、NHK大河ドラマ『青天を衝け』で注目を浴び、新一万円札発行を機により身近になりました。そんな栄一翁とゆかりのある埼玉県深谷市の観光スポットを紹介します。
渋沢栄一記念館
深谷駅から車で15分ほどの場所にある渋沢栄一記念館は、1995年11月11日(栄一翁の祥月命日)に開館された施設です。栄一の遺墨や写真など資料のほか、本人の肉声を聞くことができる展示があります。栄一の人物像を知るには、まずはここを訪れましょう。
2階の講義室では「渋沢栄一アンドロイド」による講義を聴くことができます。(要予約)
アンドロイドの動きは驚くほどリアルで、まるで目の前で栄一がしゃべっているような錯覚を覚えるほど。道徳経済合一説(「道徳と経済は本質的に一致する」という考え)について、わかりやすく話してくれました。渋沢栄一がどんな人か、何を成し遂げたのか、理解を深められる施設です。
なお、渋沢栄一記念館には周辺の観光ガイドのパンフレットやマップなどが置かれています。深谷の観光に役立つ情報がいろいろあるので、気になるものがあればぜひチェックしてみてください。
名称:渋沢栄一記念館
所在地:埼玉県深谷市下手計1204
休館日:年末年始(12月29日から1月3日)、その他メンテナンス休館あり
料金:資料室、講義室の見学は無料
詳細:渋沢栄一記念館|深谷市ホームページ
旧渋沢邸「中の家(なかんち)」
渋沢栄一記念館から西へ約1kmほどの場所にあるのが、渋沢栄一が生まれ、23歳まで過ごした旧渋沢邸「中の家(なかんち)」です。渋沢一族はこの地の開拓者で、分家して数々の家をおこしたとされています。「中の家」もそのひとつで、この呼び名は各渋沢家の位置関係によるものだとか。
主屋を囲むように副屋、土蔵、正門、東門が建っています。栄一が23歳まで過ごしたのは茅葺屋根の主屋でしたが、明治時代に家業の中心が養蚕になると建て替えられました。その主屋は1892年に火災で失われたため、1895年に現在残る主屋が上棟されたそうです。
「中の家」にも、渋沢栄一アンドロイドがあります。アンドロイドと映像を組み合わせたイマーシブ(没入型)シアターで、ふるさと血洗島や仲間との思い出話をぜひ聞いてみてください。
晩年の栄一が帰郷した際に滞在したお部屋も公開されています。縁側から庭を眺めて、在りし日の栄一に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
名称:旧渋沢邸「中の家」
所在地:深谷市血洗島247-1
休館日:年末年始 (12月29日~1月3日)
入館料:無料
詳細:旧渋沢邸「中の家」|深谷市ホームページ
煮ぼうとう専門店 麺屋忠兵衛
中の家に隣接する麺屋忠兵衛(めんやちゅうべえ)は、渋沢栄一も好んで食べた深谷の郷土料理「煮ぼうとう」の専門店です。
築120年の古民家には、栄一直筆の掛け軸が飾られています。書は「若いときに欠点があった人でも、晩年に功を尽くせば、その人の価値は上がるものである」という意味だとか。
メニューは、「煮ぼうとう」と「煮ぼうとう・とろろご飯セット」の2種類のみ。煮ぼうとうは、平麺に深谷ねぎ、人参、大根、白菜など、地元の野菜がたっぷり入ったしょうゆ味のうどんです。山梨県のほうとう(味噌味、かぼちゃ入り)とは、すこし味わいが異なります。
麺の幅は2cm以上もあり、生麺の状態から煮込んでいるため、汁にはややとろみがあります。寒い日に熱々の煮ぼうとうをいただけば、体の中からぽかぽかと温まりますよ。ぜひ深谷観光の際には煮ぼうとうを味わってみてください。
店名:麺屋忠兵衛
所在地:埼玉県深谷市血洗島247-1
営業時間:11:00~14:00
定休日:無休(年末年始を除く)※臨時休業あり
詳細:煮ぼうとう専門店 麺屋忠兵衛
血洗島「諏訪神社」
諏訪神社は、「中の家」の南方約300mに位置する、古来より武将の崇敬が厚い血洗島の鎮守杜です。
1916年に渋沢栄一の喜寿を記念して村民に建てられた渋沢青淵翁喜寿碑が境内に残っており、神社の拝殿は栄一がこれに応えて造営寄進したものです。栄一は帰郷するとまずこの社に参拝し、祭礼時には神社に奉納される獅子舞の鑑賞をしたと伝えられています。
名称:諏訪神社
所在地:埼玉県深谷市血洗島117
尾高惇忠生家
渋沢栄一の従兄であり、学問の師でもあった尾高惇忠(おだかじゅんちゅう)の生家です。栄一は少年時代から彼のもとに通い、論語をはじめさまざまな学問について学んだと言われます。惇忠は世界遺産となった富岡製糸場の設立に大きく関与し、初代場長を務めました。
この生家は江戸時代後期に惇忠の曽祖父が建てたといわれ、惇忠や栄一らが高崎城乗っ取りなどの計画を謀議したと伝わる部屋(非公開)が二階に残っています。“幕末のイケメン”といわれる栄一の養子、渋沢平九郎もこの家で生まれたそうです。
名称:尾高惇忠生家
所在地:埼玉県深谷市下手計236
休館日:年末年始 (12月29日~1月3日)
入館料:無料
詳細:尾高惇忠生家|深谷市ホームページ
誠之堂・清風亭
誠之堂(せいしどう)と清風亭(せいふうてい)は、どちらも1999年に東京都世田谷区から深谷市の大寄公民館敷地内に移築された建物です。
茶色のレンガが特徴的な誠之堂(上写真)は、1916年に渋沢栄一の喜寿(77歳)を記念して世田谷に建築されたもので、国の重要文化財に指定されています。
設計者は当時の建築界の第一人者であった田辺淳吉。外観は英国農家に範をとりながらも、室内外の装飾に、中国、朝鮮、日本など東洋的な意匠を取り入れるなど、さまざまな要素が盛り込まれ、それらがバランスよくまとめられています。化粧所扉の龍と鳳凰のステンドグラスは必見です。
白い壁の清風亭(上写真)は、1926年に当時第一銀行頭取であった佐々木勇之助の古希(70歳)を記念して、誠之堂と並んで建てられました。こちらは埼玉県指定有形文化財に指定されています。
設計者は、銀行建築の第一人者の西村好時。 屋根のスパニッシュ瓦、ベランダの5連アーチ、出窓のステンドグラスや円柱装飾など、西村自身が「南欧田園趣味」と記述している当時流行していたスペイン風の様式が採られています。優美な大広間を照らす大きな2つのシャンデリアや、四隅にあるフロアスタンドもおしゃれです。
誠之堂・清風亭の建物内を見学したい方は、隣接する大寄公民館の受付で申し出ましょう。
名称:誠之堂・清風亭
所在地:埼玉県深谷市起会110番地1(大寄公民館敷地内)
休館日:年末年始(12月29日~1月3日)
入館料:無料
詳細:誠之堂・清風亭|深谷市ホームページ
七ツ梅酒造跡(七ツ梅横丁)
七ツ梅横丁は、旧中山道沿いにある江戸時代から約300年続いた酒蔵の跡地を利用した横丁です。約950坪の敷地に、母屋、店蔵、煉瓦造りの精米蔵、煉瓦煙突などの建築群が遺っています。
銘酒“七ツ梅”は江戸時代に「酒は剣菱、男山、七ツ梅」といわれた三大銘酒のひとつで、幕末大奥の御膳酒として愛飲されていたとか。酒名は、七ツ時(午前4時頃)に最も梅の香りが立ち上がることに由来します。
昭和レトロな雰囲気が漂う空間には、趣向を凝らした個性的な店が軒を連ねます。全国で唯一の、酒蔵を改装した映画館「深谷シネマ」もあります。
台湾料理「臺灣荘(たいわんそう)うるふーど」、ハンドメイド作品の展示販売「深谷宿本舗」、古本屋「須方書店」、もんじゃ・鉄板焼き「深谷もんじゃ」、スペシャルティコーヒー焙煎所「50COFFEE ROASTERY」、鬼瓦工房「鬼義(おによし)」といったお店も。
古くて、どこかあやしげで、おもしろいものが好きな人は、ぜひ足を運んでみてください。
名称:七ツ梅酒造跡(七ツ梅横丁)
所在地:埼玉県深谷市深谷町9-12 七ツ梅酒造跡
詳細:七ツ梅店舗紹介(まち遺し深谷)
※七ツ梅酒造跡は毎週火曜日休み。各店舗の休みは店によって異なります。
道の駅おかべ
道の駅おかべは、国道17号線深谷バイパス沿いにある道の駅です。深谷市の肥沃な大地で育った「深谷ねぎ」を代表に、新鮮な野菜や切花を扱う「農産物直売センター」、地元特産お漬物をはじめとする特産加工品や地酒が揃う「ふるさと物産センター」、郷土料理や地元食材を使用したメニューが楽しめるレストランなどがそろっています。
深谷ねぎを使ったさまざまな加工品やお菓子、地酒、深谷市のイメージキャラクターふっかちゃんのグッズなどが販売されており、深谷らしいおみやげを買うのにぴったりです。
名称:道の駅おかべ
所在地:埼玉県深谷市岡688-1
詳細:道の駅おかべ|埼玉県深谷市
旬な話題も、歴史もある、魅力ある町、深谷。深谷駅までは、東京駅からJR上野東京ラインで約90分、上野駅からJR高崎線で約85分、新宿駅からJR湘南新宿ラインで約80分です。ぜひ深谷を訪ね、渋沢栄一ゆかりの地をめぐってみてください。
Post: GoTrip! https://gotrip.jp/ 旅に行きたくなるメディア