【世界の街角】グリム兄弟の生まれ故郷、ドイツ・メルヘン街道の町ハーナウ

ドイツの空の玄関口、フランクフルト。羽田空港からフランクフルト空港へはルフトハンザドイツ航空の直行便が毎日運航しています。そんなフランクフルトから東へ20キロメートルほどのマイン川沿いにあるハーナウ(Hanau)は、グリム兄弟が生まれた町です。

ドイツ・メルヘン街道は、ハーナウから始まり、グリム兄弟が少年時代を過ごしたシュタイナウ、大学時代を過ごしたマールブルク、カッセル、ハーメルンを通り、ヴェーザ川沿いの町々を通り抜け、ハンザ都市ブレーメンまで、グリム兄弟やグリム童話ゆかりの町を結ぶ観光街道のこと。

グリム童話ゆかりの地をつなぐ約600キロメートルに及ぶルートは今年で開設50周年を迎えます。そんなメルヘン街道の起点、ハーナウの見どころを紹介します。

シンデレラ姫、いばら姫、白雪姫……。ドイツの最も有名な物語作家であり、「Once upon a time(むかしむかし)」から始まるたくさんの童話を編纂したグリム兄弟のヤーコプ・グリムとヴィルヘルム・グリムは、それぞれ1785年と1786年にここハーナウで生まれました。

中心部のマルクト広場にある煉瓦造りの市庁舎前には、二人の像が建てられています。ミュンヘン出身の教授であり彫刻家であったシリウス・エーベルレの設計に基づいて制作されたもので、1896年10月18日に除幕式が行われました。

腰に手を当てて立っているのが長兄のヤーコプで、座って本を広げているのが弟のヴィルヘルム。ハーナウに伝わる伝説によると、ヤーコプとヴィルヘルムは夜中に密かに場所を入れ替えるとか。

像の足元にはグリム兄弟の名を刻み、ここがメルヘン街道の出発点であることを記したプレートが設置されています。

マルクト広場の南側にはもう使われていない古井戸があり、その囲いの外側に立つと、市庁舎を背景にグリム兄弟の像がフレームに入ったような光景が見られます。また、このマルクト広場では、水曜と土曜の7時から14時に野菜や花、軽食などを売る店が並ぶ青空市が開催されるとのこと。

古井戸からパラディースガッセをまっすぐ南に進むと教会があります。すこし距離は離れているものの、市庁舎と教会が向かい合って建っている形です。

ハーナウの中心地にはグリム童話に出てくるキャラクターの像が点在しています。教会のすぐ近くにある赤ずきん(Rotkäppchen)の像もその一つ。

ほかにも、長靴をはいた猫(Der gestiefelte Kater)や、つぐみのひげの王様(König Drosselbart)など、さまざまな像があるので、町歩きをしながらぜひ探してみてください。

バスターミナルになっているフライハイト広場の北には、立派な木組みの館「ゴルトシュミーデハウス(Goldschmiedehaus)」があります。日本語にすると「金細工師の家」という意味です。

ゴルトシュミーデハウスではこの地方で作られた金銀細工の装飾品やテーブルウェアが展示されています。また、国内外のアーティストによる企画展も行われているので、金銀細工やコンテンポラリージュエリーに興味があれば立ち寄ってみては。

名称 Gesellschaft für Goldschmiedekunst e. V.
所在地 Altstädter Markt 6, 63450 Hanau
Webサイト(英語) Goldschmiedehaus

ハーナウの郊外には、フィリップスルーエ宮殿(Schloss Philippsruhe)というバロック様式の建築があります。色とりどりの花が咲く美しい庭園を歩けば、まるで童話の世界に迷い込んだよう。

1701年から1712年にかけて建てられたフィリップスルーエ宮殿は、ドイツで初めてフレンチバロックの影響を受けた城の一つです。1984年に焼失したものの、その後再建され、現在は歴史博物館として公開されています。

広間の装飾や調度品がとても美しく、うっとりしてしまうほど。そのロマンティックな雰囲気から結婚式場としてもよく使われているそうです。挙式だけでなく、ここで入籍までできるのだとか。

別の部屋にはグリム童話やグリム一家についての展示があり、ヤーコプ・グリムが実際に使用した豚革のかばんや外套などを見ることができます。

2019年にできたグリムスメルヒェンライヒ(GrimmsMärchenReich)という施設では、子どもたちが「ささやく廊下」「変身の部屋」などのインタラクティブな体験を通してグリム童話の一部になって遊べます。

同じフロアには、グリム童話に限らず、世界中の童話や民話の絵本を集めたコーナーもあります。日本のお話もあるので探してみてください。

敷地内には「ゲヴェルベケラー(Gewölbekeller)」という優美な雰囲気のレストランもあります。非日常の空間で、おいしいドイツワインやビール、料理を楽しみたい方におすすめです。

名称 Schloss Philippsruhe
所在地 Philippsruher Allee 45, 63454 Hanau
※マルクト広場からSchloss Philippsruhe行きのバスが出ています。
Webサイト(ドイツ語) Historisches Museum Hanau Schloss Philippsruhe

グリム兄弟の生まれ故郷であり、メルヘン街道の起点であるハーナウ。フランクフルトから日帰りでも楽しめますが、日程に余裕があればハーナウに一泊し、シュタイナウ、マールブルク、カッセルと、メルヘン街道の旅を続けてみてください。

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