ドイツ・メルヘン街道の町マールブルクでグリムの小径を歩き、おとぎの世界に浸る

ドイツ・メルヘン街道とは、グリム兄弟の生まれ故郷ハーナウから始まり、シュタイナウ、マールブルク、カッセル、ハーメルンを通り、ブレーメンまでの、グリム兄弟やグリム童話ゆかりの町を結んだ、約600キロメートルの観光街道のことです。

そのメルヘン街道の町、マールブルク(Marburg)はドイツ有数の大学都市で、今日も多くの学生が暮らしています。かつてグリム兄弟もこの地にあるマールブルク大学で法学を学びました。

マールブルクは高台に城がそびえる丘の町で、坂と階段がとても多いです。旧市街の路地には古い木組みの家が立ち並び、メルヘンな世界に迷い込んだような感覚になります。

丘の中腹に位置するマルクト広場には、竜殺しのゲオルグの像と旧市庁舎があります。砂岩造りの旧市庁舎は16世紀に建てられたもので、グリム童話に出てきそうな雰囲気です。屋根の上にはニワトリが乗っていて、毎正時になると「コッコー」と鳴いて知らせてくれます。

マルクト広場からバーフュッサー通りへ少し入ったところには、グリム兄弟が下宿をしていた家が今も残っています。

右脇にある階段は丘の上にそびえ立つマールブルク方伯城へと続いており、その途中にグリム兄弟が通いつめたという恩師・サヴィニー教授の家があります。サヴィニー教授の仲介により、ロマン派の詩人と知り合ったことがきっかけでグリム兄弟は童話の編纂を始めたので、もしマールブルクに住んでいなかったら、グリム童話は生まれていなかったかもしれません。

旧市街のバラが咲き乱れる石畳を歩くと、200年以上も前にグリム兄弟もここを歩いて同じ景色を眺めたのではないかと想像が広がり、メルヘンの世界に誘われるような気持ちになりました。

さらに丘を登っていくと、マールブルク方伯城(Landgrafenschloss)に到着します。この城は11世紀に最初に築かれ、その後13世紀にこの地を統治したヘッセン方伯の居城となりました。

この方伯城はルターの宗教問答の舞台ともなった場所で、城の内部は大学文化史博物館として公開されています。ゴシック様式のホールや壁画のある礼拝堂、調度品など、見ごたえたっぷりです。(ただし、英語案内がなくドイツ語のみ)

さて、グリム兄弟ゆかりの町マールブルクの旧市街には、グリム童話にちなんだオブジェが点在する「グリムの小径(Grimm-Dich-Pfad)」という、1.5キロメートルほどの散策ルートがあります。よく知られたグリム童話のモチーフを探しながら、ぜひ散策を楽しんでみてください。

こちらは、方伯城の城壁下にある「シンデレラ」のパンプス。

「白雪姫」の鏡。顔が映る位置に立って、記念撮影する人の姿も見かけました。

「かえるの王様」のかえる。

「狼と7匹の子ヤギ」の狼と子ヤギの顔。子ヤギが6匹しかいないのは、1匹時計の中に隠れているからだそうです。

たくさん歩いてお腹が減ったら、かつてマールブルク方伯城の櫓だったレストラン「ビュキングスガルテン(Bueckingsgarten)」で、メルヘンの城や城下町を眺めながらランチを楽しみましょう。

どのメニューもおいしく、お客さんの入り具合を見ても人気があるのがよくわかります。

屋内席もありますが、過ごしやすい季節なら、ルテニシェ・パリッシェ・ザンクト・マリア(ルター派地区聖マリア教会)が見えるテラス席がおすすめです。

マールブルクは、グリム童話だけでなく、聖エリザベート教会があることでも知られています。

聖エリザベートは、13世紀にハンガリーの王女として生まれ、ドイツ中部のチューリンゲンの方伯へ輿入れした女性。夫を亡くした後マールブルクへやってきた彼女は、修道士のもとに身を寄せ、貧しい人や病人の救済に尽力し、24歳という若さで亡くなったそうです。1235〜1283年にかけて、ドイツ騎士団が彼女の墓の上に建てた教会が、この聖エリザベート教会です。

旧市街から少し離れた町の北側に位置していますが、興味がある方はぜひ訪れてみてください。

木組みの家々が美しく、メルヘンな雰囲気たっぷりのマールブルク。グリム童話のキャラクタ―を探しながら、おとぎの国に迷い込んだような気分を味わってみてはいかがでしょうか。

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