ローマと中世が混在、ヒッチコックが愛した「夕陽の町」クロアチアのザダルを歩く

映画監督のヒッチコックが「ザダルの夕陽は世界で一番美しい」と絶賛したことで知られる、クロアチアのアドリア海沿岸の町、ザダル。それだけに、「夕陽の町」として語られることが多いものの、ザダルの魅力は夕陽だけにとどまりません。

ザダルはその起源を紀元前9世紀にさかのぼり、ローマ帝国による支配を経て、中世の時代にはヴェネツィア共和国と肩を並べるほどの勢力を誇った歴史の町。旧市街にはローマ時代や中世の建築物が残り、異なる時代の建造物が不思議な調和を見せています。

城壁に囲まれたザダルの旧市街。コンパクトながらも、この中には10世紀以上にわたるさまざまな歴史的建造物がぎっしりと詰まっています。

ザダルの旧市街の中心的存在が、紀元前1世紀から紀元3世紀にかけて造られた、ローマ時代の広場「フォーラム」。

かつては、行政、商業、宗教など、市民生活のすべてにかかわる機能が集結した町の中心地でした。現在ではほとんど原型をとどめていませんが、北西に立つ柱は「恥の柱」と呼ばれ、中世の時代には軽犯罪を犯した者がここに縛られ、笑いものにされたのだとか。

いまやフォーラムは子どもたちの遊び場であり、人々の憩いの場。「ちょっと腰を下ろそう」と思って座った岩がローマ時代の遺構だったりするのです。ローマ時代の遺産がこれほど日常風景に溶け込んでいる町も、珍しいというものです。

フォーラムに建つザダルのシンボルが、聖ドナト教会。

9世紀にプレ・ロマネスク様式で建てられた円形の教会で、石材の一部はローマ時代の神殿などから転用されているのだそう。高い天井をもつ教会内部は音響効果が高く、現在はコンサート会場としても使われています。筆者が訪れた際も、客席などの設営が行われていました。

その向かいにある聖マリア教会・修道院は宝物館を併設。内部には、金・銀細工の十字架や、イコン、絵画など、1000年に及ぶきらびやかな宗教美術品の数々が詰まっています。

ザダルは、宗教美術品の量と質が優れていることで知られており、キリスト教美術に興味があるなら、旧市街の北にあるフランシスコ会修道院も必見。

宝物館には、12世紀に作られたロマネスク様式の十字架をはじめ、貴重な宗教美術品の数々が展示されているほか、1358年のザダル条約締結の舞台となった部屋も見ることができます。

ザダルの旧市街の面白いところは、歩く場所によってまったく違う表情を見せてくれること。こぢんまりとした町を歩いているだけで、まるでいくつもの町を訪ね歩いているような気分になります。

ローマ時代の名残を感じるフォーラムに対し、壮麗な建造物が並ぶナロドゥ二広場には、中世の雰囲気が色濃く残っています。

さらに、白っぽい建物が多いフォーラム周辺に比べ、ナロドゥ二広場周辺には、赤や黄色、ピンクといったイタリア風のカラフルな建物が並んでいます。

かと思えば、色鮮やかな建物の前に突如としてローマ時代の柱が現れたり・・・ローマ時代と中世の建造物がさりげなく混在する町並みは、発見の連続です。

ドゥブロヴニクに代表される中世の町とは、ひと味違う町並みが新鮮な驚きを呼ぶザダルの町。夕陽だけではない魅力があなたを待っていますよ。

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