【日本グルメ紀行】明治2年創業!清流長良川の天然鮎を心ゆくまで堪能できる岐阜の名店とは? / 岐阜県岐阜市・川原町の「川原町 泉屋」

夏の風物詩として、古来より日本人に愛され続けてきた川魚の王者と言えば、鮎。

「清流の女王」とも称される鮎は、清らかな川の水と石苔だけを糧に育ち、その身からはスイカやキュウリを思わせる爽やかな香りが立ち上ることから「香魚」とも呼ばれている。塩を振って炭火でじっくりと焼き上げた一尾は、日本の夏の食卓に欠かせない至福のごちそうだ。

そんな鮎の名産地として、全国の食通から熱い視線を浴び続けているのが、岐阜県。

岐阜県内を流れる長良川、和良川、馬瀬川といった清流で育つ天然鮎は、毎年全国の鮎の味を競う「清流めぐり利き鮎会」でグランプリを何度も獲得しており、名実ともに日本一の天然鮎として知られている。

今回ご紹介したいのは、そんな岐阜の鮎を心ゆくまで堪能できる名店中の名店、明治2年(1869年)創業の老舗「川原町 泉屋(かわらまちいずみや)」だ。

・鵜飼の里・川原町の風情ある古い町並みに佇む老舗
「川原町 泉屋」があるのは、岐阜市を流れる長良川のほとり、古い町並みが今も大切に残されている風情豊かなエリア「川原町」。

格子戸の家屋が軒を連ね、夏には軒先に風鈴が吊るされ、黄昏時には涼やかな音色が街並みに響き渡る、そんなノスタルジックな雰囲気が漂う一角に、泉屋は静かに佇んでいる。

すぐ目の前を流れる長良川は、1300年以上もの歴史を誇る伝統漁法「鵜飼」が今も行われていることで世界的に有名。鵜匠が篝火を焚き、鵜を操って鮎を獲る幻想的な光景は、夏の岐阜を象徴する風物詩として国内外から多くの観光客を魅了し続けている。

そんな鮎文化の中心地に店を構える泉屋は、なんと明治2年から続く老舗中の老舗。150年以上にわたって長良川の鮎と向き合い、その美味しさを今に伝え続けてきた、まさに「岐阜の鮎の生き字引」とも言える存在なのだ。

・友釣りで獲った天然鮎へのこだわり
泉屋の最大の魅力は、なんと言っても「友釣り」で釣られた天然鮎へのこだわり。

「友釣り」とは、鮎の縄張り意識を利用した日本独自の伝統漁法。おとり鮎を使って野生の鮎を釣り上げるという、技と経験が要求される高度な技術だ。一尾一尾、丁寧に釣り上げられた天然鮎は、網で大量に獲ったものとは比べ物にならないほど、身が傷つかず、最高の状態で店へと運ばれてくる。

泉屋では、「日本一の味と香り」と高く評価される和良川の鮎、長良川上流域の郡上鮎など、岐阜が誇る清流で育った極上の天然鮎を厳選して仕入れている。良質な石苔を育む清らかな川で育った鮎は、ハラワタにまで濃厚な旨味が凝縮されており、まさに「育った川の味」がそのまま閉じ込められているのだ。

・鮎の魅力を余すところなく堪能できる「天然鮎コース」
予約制で提供される「天然鮎コース」は、泉屋が誇る天然鮎の魅力を、これでもかというほど存分に堪能できる珠玉のコース。

仕入状況や鮎の大きさによって内容は変動するが、前菜から始まり、笹巻寿し、塩焼き、うるか焼き、天ぷら、あゆラーメンへと続く、まさに「鮎尽くし」の宴。一品一品が天然鮎の魅力を異なる角度から引き出した珠玉の逸品となっており、最初から最後まで一切の妥協がない。

まず登場するのは、彩り豊かな前菜の盛り合わせ。
鮎のリエットや白熟クリームと季節野菜のサラダなど、フレンチの技法も取り入れたモダンな一皿が並び、これから始まる鮎尽くしの宴への期待感を一気に高めてくれる。

続いて「焼鮎の笹巻寿し」。香ばしく焼き上げた鮎の身を、酢飯と共に笹の葉でくるりと巻いた、見た目にも美しい一品。一口頬張れば、鮎の香ばしさと笹の爽やかな香り、ほのかな酸味の酢飯が口の中で見事に調和し、思わず頬が緩んでしまう美味しさだ。

そしてコースのハイライトとも言える、紀州備長炭で焼き上げた「天然鮎の塩焼き」。

頭から尻尾まで丸ごと食べられるほど絶妙に火入れされた一尾は、皮はパリッと香ばしく、身はふっくらとジューシー。一口頬張った瞬間、清流で育った鮎特有の爽やかな香りが鼻に抜け、噛みしめるほどに天然鮎ならではの上品な甘みと、ほろ苦いハラワタの濃厚な旨味が口いっぱいに広がっていく。これぞまさに「香魚」の真骨頂、長良川の清流をそのまま味わっているかのような感動の一皿だ。

「うるか焼」もまた、鮎専門店ならではの逸品。「うるか」とは鮎のハラワタを使った発酵食品で、特製のタレに使われたうるかが、焼き上げた鮎の表面で艶やかに光る。一口頬張れば、味醂の優しい甘みとうるかの大人な苦味が絶妙に絡み合い、添えられた飛騨山椒のキリッとした香りが見事なアクセントに。日本酒が思わず欲しくなる、贅沢な味わいだ。

そして若鮎と季節野菜の天ぷらは、特製の「アユ山椒塩」で頂く。サクッと軽やかな衣に包まれた若鮎は、ふっくらほろほろとした身と内臓のほのかな苦味が見事に調和し、揚げ物とは思えないほどの上品な仕上がり。

締めの「鮎ラーメン」は、長時間かけて引いた鮎の出汁が効いた、素晴らしい味わい。これまでの濃厚な鮎料理の余韻をふんわりと包み込みながら、コースを心地よく締めくくってくれる。

明治2年から150年以上にわたって受け継がれてきた、泉屋の天然鮎料理。

長良川の清流が育んだ天然鮎の魅力を、これほどまでに多彩な調理法で堪能できる場所は、世界中を探してもそう多くはない。一品一品に注がれた職人の技と、清流の女王・鮎への深い愛情が、訪れる者の心と舌を確実に魅了するはずだ。

岐阜を訪れる予定がある方は、ぜひ一度、こちらのお店へ足を運んでみてほしい。鵜飼と一緒に堪能すれば、長良川の鮎文化を存分に味わえる、最高の体験となるに違いない。

<店舗情報>
店名:川原町 泉屋(かわらまちいずみや)
住所:岐阜県岐阜市元浜町20
営業時間:5/11〜10/15(鵜飼開催期間中)11:30〜14:30(LO 13:30)/17:00〜20:30(LO 19:00)
定休日:水曜日 ※冬期休業あり