モネの「睡蓮」の世界に浸れる、パリのオランジュリー美術館に行こう

アート好きにはたまらない芸術の都、パリ。世界で最も有名な美術館であるルーブル美術館をはじめ、たくさんの美術館やギャラリーがひしめいています。

印象派絵画が好きなら見逃せない美術館のひとつがオランジュリー美術館。広大な敷地をもつ、緑豊かなチュイルリー公園の一角にたたずんでいます。

なんといってもモネが晩年に残した傑作「睡蓮」の世界に浸れるのが最大の魅力で、老若男女に高い人気を博しています。

1914年から1918年まで続いた戦争の翌日、モネはフランスに「睡蓮」を寄贈し、パリの人々に安らぎの場を提供することを望みました。「この部屋は、ここで過ごすものにとって、花咲く水槽の真ん中で、安らかな瞑想を行うための隠れ家となるであろう。」モネはこう書き記したといいます。

「睡蓮」は、モネが住んでいたパリ近郊の村・ジヴェルニーの自宅にあった「水の庭」からインスピレーションを得て描かれたもの。モネは光の変化とリズムによってこの庭を表現することに没頭し、1886年からその生涯を終える1926年までのあいだに200点以上の「睡蓮」を制作しています。オランジュリー美術館が所蔵する「睡蓮」は8点の大作からなる連作です。

美術館のハイライトであるモネの「睡蓮」は、まさに美術館の「顔」として1階の専用展示室に展示されています。

展示室に入った瞬間、柔らかい光と色彩にすっと包み込まれるよう。何気ない自然の中に神々しいまでの美しさを見出したモネの感性が表れているかのように感じられます。

それぞれ異なる色調で表現された睡蓮の池は、東に朝日が昇り、西に夕陽が沈むまでの時の流れを連想させます。

天窓から柔らかな自然光が降り注ぐ空間で壁一面に掲げられた「睡蓮」を眺めていると、あたかも睡蓮が浮かぶ池のほとりにいるかのような幻想的な気分にさせられます。

「睡蓮」の面白いところは、はっきりと対象物が描かれていないところ。離れてみると確かに花びらや葉、木といった形あるものに見えますが、近くで見るとそれらは点の集合体でしかないことがわかります。

このように、はっきりと対象物を描いていないからこそ、モネの「睡蓮」は私たちの心にすっと入り込み、「鑑賞者が見たいもの」を見せてくれるのかもしれません。その点において、「睡蓮」は鑑賞者の心の状態を映し出す鏡であるかのようにも感じられます。

なぜかわからないけれど、観るものの心をとらえて離さない、観るものの心に入り込んで強い印象を残す。そんな不思議な力がこの「睡蓮」にはあるのです。これこそ、モネが「光の画家」と呼ばれるゆえんではないでしょうか。

このほか、地下には画商ポール・ギョームとその夫人、そして彼女の2番目の夫であるジャン・ワルターによって収集されたコレクション144点が展示されています。

セザンヌやマチス、ピカソ、モディリアーニ、ルノワール、ユトリロといった、特別なアート好きでなくても一度は耳にしたことがあるであろう巨匠画家の秀作が揃いぶみ。

19世紀末から20世紀はじめにかけて、印象派からエコール・ド・パリにいたるフランス近代絵画の流れが示されています。

「美術のことはよくわからない」という人でもきっと心に刺さる、「睡蓮」をはじめとする名作の数々を観に出かけませんか。

オランジュリー美術館
開館時間:9:00-18:00
入場料:9ユーロ(パリ・ミュージアム・パス利用可)
休館日:火曜
公式サイト:http://www.musee-orangerie.fr/en

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