まるで宮殿!世界遺産の壮麗な市庁舎とローラント像は自由都市・ブレーメンの宝物

「ブレーメンの音楽隊」であまりにも有名な北ドイツの都市、ブレーメン。しかし、この街に世界遺産があることは意外と知られていないのではないでしょうか。

世界遺産に登録されている建造物が、旧市街の中心・マルクト広場に面して建つ市庁舎とその向かいにたたずむローラント像。ブレーメンが自由ハンザ都市として栄華を極めた時代の空気を今に伝える、「ブレーメンの顔」ともいえる存在です。

1405年から1410年にかけて建設された市庁舎は、北ドイツで最も重要な建築物のひとつ。全体としてはゴシック様式ですが、マルクト広場に面した正面部分は200年後に北ドイツ独特のヴェーザー・ルネッサンス様式で増築されました。

マルクト広場から市庁舎のファサードを見上げると、無数の精巧な彫刻で彩られたその豪華絢爛ぶりに圧倒されます。当時のブレーメンがいかに力をもつ都市であったのかが一目瞭然ですね。

市庁舎の前に立つローラント像は、ブレーメンの自由と平和のシンボル。台座や天蓋を合わせると、その高さは10.21メートルに達し、中世に造られたものとしてはドイツで最大の自立式彫像です。

この像が街に立つ限り、ブレーメンは自由都市でいられるといわれていて、第2次世界大戦下では、市民が市庁舎とローラント像の周りに囲いを設置して戦火から守ったという逸話もあります。

市庁舎とローラント像が世界遺産に登録されたのは2004年のことですが、それよりもずっと前から街の誇りとして大切にされていたのですね。なんといっても、現在もブレーメン州の正式名称は「自由ハンザ都市ブレーメン」なのです。

外観だけでもじゅうぶん見ごたえのある市庁舎ですが、内装もそれに負けない豪華さ。市庁舎内部はガイドツアーで見学できます。ブレーメン滞在中、ぜひ一度は時間を合わせてツアーに参加してみてください。

ガイドツアーのスケジュールは通常、月~土:11時、12時、15時、16時、日:11時、12時ですが、イベント等の開催に伴って一部のツアーが休止になることもあります。

また、各回ごとに定員が設けられており、特に夏の観光シーズンには満員になることも多いので、ガイドツアーのチケットはツアー開始直前ではなく、早めに入手しておきたいところ。チケットは観光案内所で購入できます。

市庁舎内部で最も絢爛豪華な部屋が、上階にある大議会場。

ドイツの王たちを描いた天井画や、絵画、ステンドグラス、華やかなレリーフで装飾された空間は、市庁舎というよりも、美術館か、はたまた宮殿かと思ってしまうほどです。

天井からは、精巧に作られた16~18世紀の船舶模型が吊り下げられていて、当時のブレーメンにとって船や航海がいかに大切であったのかがわかります。

この部屋で最も目を引くのが、マルクト広場側に設けられた巨大な箱のような空間。華やかな大議会場のなかでも、飛びぬけて多くの彫刻で彩られていて、その美しさには息を呑むほどです。

実は、この中にユーゲントシュティールの装飾が施されたもうひとつの部屋があるのです。

「ユーゲントシュティール」とは、19世紀末から20世紀の初めにかけて台頭した、ドイツ語圏での世紀末芸術の様式のこと。黄金色の立体的模様の壁紙が印象的なこの部屋は、「黄金の小部屋」と呼ばれ、その美しさは「宝石」にもたとえられています。

黄金の小部屋のそばには、見事な彫刻に目を奪われるらせん階段があり、これもまた、ため息が出るほどの華麗さ。

この階段を制作するだけでも10年の歳月が費やされたのだとか。気が遠くなるほどの緻密さを見れば、それもうなずけるというものですね。

かつてはこの階段からミュージシャンが黄金の小部屋の上にあるスペースに入り、音楽を奏でていたのだそうです。

まるで宮殿かのような壮麗な市庁舎は、それだけブレーメンが特別な地位と富をもっていたことの証。

今も色あせない世界遺産の市庁舎とローラント像は、誇り高き自由都市・ブレーメンの宝物なのです。

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