【世界遺産】世界屈指のユーゲントシュティールの都、ラトビア・リガで奇想天外な建築に出会う
|「バルト海の真珠」とたたえられるラトビアの首都・リガ。人口70万人を擁するバルト三国最大の都市でありながら、その歴史的な街並みはまるごと世界遺産に登録されています。
リガの景観を特徴づけているのが、ヨーロッパ最大級のユーゲントシュティール建築群。それらは、世界遺産「リガ歴史地区」の一部でもあります。
ユーゲントシュティールとは、19世紀後半から20世紀の初めにかけてヨーロッパを席巻した新芸術様式。「ユーゲントシュティール」はドイツ語ですが、フランス語で「アールヌーヴォー」といったほうが馴染みがあるでしょうか。
ユーゲントシュティール(アールヌーヴォー)は、曲線や植物文様を多用した従来の様式にとらわれない装飾性や唯一無二のデザインが特徴で、建築のみならず絵画や彫刻、室内装飾や調度品にも盛んに取り入れられました。
ユーゲントシュティールの台頭とリガの建築ブームがちょうど重なったため、リガ市内では、1900年ごろからわずか十数年のあいだに、膨大な数のユーゲントシュティール建築が建てられました。
リガの中心部にある建物のおよそ4割がユーゲントシュティール建築で、リガは「アールヌーヴォーのメトロポール(主要都市)」とも呼ばれています。
建築の話となると、「なんだか難しそう・・・」と感じる人もいるかもしれません。でも、リガのユーゲントシュティール建築は、誰でも理屈抜きで、視覚的・感覚的に楽しめます。
旧市街でも数々のユーゲントシュティール建築を見ることができますが、リガのユーゲントシュティール建築の真骨頂はむしろ新市街。
奇抜かつ優雅なユーゲントシュティール建築が、「これでもか」というほどに並んでいて、それらの多くは、レストランやカフェ、商店、事務所などに利用され、リガに暮らす人々の日常生活を支えています。
なかでもアルベルタ通り周辺には、装飾性の高い初期ユーゲントシュティールを代表する建築家、ミハイル・エイゼンシュテインが手掛けた建築が集中しています。
ミハイル・エイゼンシュテインはユダヤ系ロシア人で、ロシア・サンクトペテルブルクの土木工科大学を卒業後、リガで建築家として活躍しました。
彼が生み出したユーゲントシュティール建築は、どこまでも独創的。細部を見れば見るほど、その摩訶不思議な世界に引き込まれてしまいそうです。
エイゼンシュテインが手掛けた、アルベルタ通り4番地にある建物。最も完成度が高いユーゲントシュティール建築との呼び声高い傑作で、流れるようなシンメトリーのファサードが印象的です。
最上部にある3つの頭は、よく見ると髪の毛がヘビ。これらはメデューサなのです。見た者を石に変える恐ろしい怪物として知られるメデューサですが、その表情はどこか間が抜けていて、ユーモアさえ感じさせます。
同じくエイゼンシュテインによる、アルベルタ通り13番地の建物。
動物や植物、女性像や人面といった無数の彫刻が施された装飾過多なその姿は圧巻。なかでも、特にインパクト絶大なのが、叫んでいるような人面。悲壮なその表情に、釘付けになってしまいます。
エイゼンシュテインによる、エリザベス通り10b番地の建物。
なんといっても最上部を飾る大きな人面が目立っていて、これらは「リガの顔」とも呼ばれています。横顔のみを表現しているのは、ユーゲントシュティール建築の中でも珍しい例です。
ほかにも、アルベルタ通り周辺にはさまざまなモチーフで彩られたユーゲントシュティール建築建築が満載。単なる曲線に見えたものがよく見るとヘビだったり、古代エジプト王を思わせる人面があったりと、発見が尽きることはありません。
ラトビア人建築家、コンスタンティーンス・ペークシェーンスが手がけたアルベルタ通り12番地の建物は、2010年に「ユーゲントシュティール博物館」としてオープンしました。ここでは、内装や調度品を含め、すべてがユーゲントシュティールの世界観で彩られた空間を楽しむことができます。
さらにユーゲントシュティール博物館の向かいには、ユーゲントシュティール雑貨の専門店「アールヌーヴォー・リガ」も。新市街散策でユーゲントシュティールの魔力に取りつかれたら、日本でもユーゲントシュティールの世界を味わえるグッズを手に入れてはいかがでしょうか。
奇想天外なリガのユーゲントシュティール建築群は、一度見ると忘れられない鮮烈な印象を残すと同時に、建築の面白さと奥深さを教えてくれるのです。
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