【世界の街角】オスマン朝の遺産が残るブルガリアの古都・プロヴディフでトルコ文化に触れる

ブルガリア第2の都市・プロヴディフは、ブルガリア屈指の人気観光地のひとつ。その歴史はきわめて古く、新石器時代の紀元前4000年ごろにさかのぼるといいます。

それだけに、トラキア人が残した要塞跡からローマ時代の遺産、ビザンティン帝国の遺跡、オスマン朝時代の遺産など、各時代を彩った見どころが共存していて、ローマ競技場跡のそばにオスマン朝時代のモスクが建つというユニークな風景を楽しむことができます。

新市街の中心、中央広場からからアレクサンダル・バテンベルグ通りを歩いていくと、リムスキ・スタディオン広場に出ます。

ここには2世紀前半のハドリアヌス帝の時代に建てられたローマ競技場跡が残っており、そのかたわらには、14世紀のムラト2世の治世下で建てられたモスク、ジュマヤ・ジャーミヤが並んでいます。

町のど真ん中で、ローマ遺跡とオスマン朝のモスクが隣り合っている光景なんて、世界広しといえどそうそう見られるものではありません。

第1次、第2次ブルガリア帝国の時代を経て、14世紀になるとプロヴディフの町はオスマン朝の支配下に入り、1878年のプロヴディフの戦いによって解放されるまでの長きにわたり、オスマン朝の直接支配を受けました。

ブルガリア正教を信仰するブルガリア人が圧倒的多数のプロヴディフの中心で、イスラム教のモスクが存在感を放っているのはこうした歴史があるからなのです。

ダイヤモンド模様が美しいミナレット(尖塔)をもつジュマヤ・ジャーミヤは、オスマン朝初期の代表的な建築物のひとつ。コンスタンチノープル(現イスタンブール)攻略以前のオスマン朝建築のみに見られる、珍しいスタイルで建てられています。

確かに、トルコで最も有名なモスクであるイスタンブールのスルタンアフメット・ジャーミィ(通称ブルーモスク)などに比べると、まだまだ美的に洗練されているとは言い難く、むしろ素朴な印象を受けます。

このモスクは現役の祈りの場として機能していて、イスラム教の礼拝の時間になるとアザーン(礼拝への呼びかけ)が鳴り響き、イスラム教徒の男性が祈りを捧げにやってきます。礼拝中以外は、非イスラム教徒の見学も可能。女性は入口でローブまたはスカーフを借りてから入場します。

アラビア文字や精緻な幾何学模様で覆われたモスク内部は、神聖な静けさが漂う空間。原色を多用せず、色彩が抑えられているぶん、穏やかで優しい印象です。

ジュマヤ・ジャーミヤを見学したら、ぜひ併設のカフェにも足を運んでみましょう。

チャイ(トルコ紅茶)やトルコ・コーヒー、トルコのスイーツなどが楽しめる人気のカフェで、モザイクランプやトルコ陶器で飾られた店内は、すっかりトルコの雰囲気。ここがブルガリアだということを忘れそうになります。

トルコでおなじみの小さなチャイグラスに入ったチャイと、お米が入ったライスプディング。甘党さんは、甘ーいシロップをかけたパイ風のお菓子、バクラバにトライしてみるのもいいでしょう。

ブルガリアでオスマン朝の遺産に触れるというユニークな体験は、さまざまな文明が花開いたプロヴディフの重層的な歴史を肌で感じるのにぴったりです。

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