巨岩に押しつぶされそう!?異次元の世界みたいなスペインの白い村・セテニル

スペイン南部のアンダルシア地方は、エキゾチックな魅力たっぷりの美しい町の宝庫。

アルハンブラ宮殿を擁するグラナダや、古い町並み全体が世界遺産に登録されているコルドバ、「カルメン」の舞台となったセビーリャに、白い村々など、個性あふれる見どころが満載です。

日本で「アンダルシアの白い村」として有名なのはミハスですが、アンダルシア地方にはほかにも独特の風景をもつ白い村が点在しています。

そのなかで、洞窟を利用した住居が並ぶ特異な景観で知られる村が、セテニル(正式名称:セテニル・デ・ラス・ボデガス)。断崖絶壁の町・ロンダから路線バスで30分、カディス県に位置する人口およそ3000人の小さな村です。

村の名前は、次のような歴史に由来します。かつてイスラム教徒により征服されていたこの地を、キリスト教徒が奪回しようと試みましたが、まったく歯が立ちませんでした。そこから「Septem-Nihil(7回無)」という表現がなまって「セテニル」になったのだとか。1484年になってようやくキリスト教徒のフェルナンド王がこの地を征服し、イスラム支配が終わりを迎えました。

セテニルの風景を特別なものにしているのが、グアダルポルシン川に浸食されてできた洞窟を利用した住居の数々。外から見たら一見普通の家でも、岩をそのまま天井や壁として使っているのです。

1~2時間あれば見て回れる小さな村でありながら、ただ歩くだけで我が目を疑うほどの驚くべき風景の数々に出会います。

岩に押しつぶされてしまうのではないかと思うような家や、落ちてこないか心配せずにはいられない岩、家々を飲み込むかのような岩、岩に上部をふさがれた道路・・・

こうした特異な光景を前にすれば、別世界にワープしたのではないかと思ってしまうほど。

しかも、これらの洞窟住居は歴史の遺産ではなく、今も村の人々が生活している現役の住宅であったり、人々の生活を支える商店やバルであったりするのです。

セテニルを象徴する風景が、巨岩でできた自然のテラスの下にバルやレストランが並ぶクエバス・デル・ソル通り。観光客の姿も増えつつあるものの、もともとここは地元の人々の憩いの場として愛されてきた村の中心です。

屋根のように建物の上に覆いかぶさる巨岩は圧巻の迫力で、こんな場所が日常の井戸端会議の舞台になってきたなんて驚かずにはいられません。巨大な岩の下で、あるいは巨大な岩を眺めながら、お酒やタパスを楽しむのがセテニル流。

筆者のおすすめバルは、クエバス・デル・ソル通りと並んで走る、クエバス・デ・ラ・ソンブラ通りにある「Cafeteria Bar Sol y Sombra」。

クエバス・デル・ソル通りよりも落ち着いた雰囲気のなか、リーズナブルな価格でおいしいワインやビール、食事が楽しめます。川沿いのテラス席からは、クエバス・デル・ソル通りの巨岩のテラスが見渡せますよ。

セテニルにやって来たら、高台からの眺望も見逃せません。セテニルにはいくつかの展望スポットがありますが、特に必見なのが広場全体が小高い丘の上に位置するカルメン広場からの眺め。

「MIRADOR DEL CARMEN」の看板のそばにある階段をのぼって行けば、小さな礼拝堂「Ermita de Ntra. Sra. del Carmen」が立つ広場に到着します。

この広場からの眺めが最高なのは、セテニルの白い町並みが一望できるというだけでなく、12~13世紀に築かれたとみられるアラブ時代の塔などが建つ巨大な岩の要塞の風景が楽しめるから。

川沿いに白い家々が積み重なるようにして建ち、そばには巨岩がそびえるセテニルらしいダイナミックな絶景は言葉を失うほどの迫力です。

村を歩くと気づくのは、セテニルは一度見たら忘れられない風景の宝庫でありながら、ミハスなどの有名な白い村に比べると観光客の姿はまばらであること。

インターネット上の世界の奇景を紹介する記事などでちらっと見かけるものの、まだまだ知名度は高くなく本格的には観光地化されていないため、ちょっとした秘境感が味わえます。

しかしこれだけ絶大なインパクトのある風景に出会える村ともなれば、たちまち人気に火がついて観光客が押し寄せるのも時間の問題かもしれません。

静かでのんびりとしたたたずまいのセテニルに出かけるなら今のうち、なのでしょうか。

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