アルプスに潜む神秘のベールに包まれた南ドイツの湖「ケーニヒス湖」

アルプスが連なる南ドイツの国境周辺。隣国オーストリアもすぐという山あいの地域に、今回ご紹介するケーニヒス湖はひっそりと隠れるようにして佇んでいます。

「ドイツで最も澄んだ湖」としても有名なケーニヒス湖は全長約7キロ、幅約1.2キロ。氷河期の氷河が流れ込んで形成されました。湖に沿ってそびえる山々は傾斜が急なため、ここでの移動手段は船のみ。その船もこの美しい湖を守るため、猟師やホテル関係者といった一部例外を除き、電力船または手漕ぎの船のみが運行を許可されています。

ケーニヒス湖で楽しみたいのが、湖をぐるりと周遊する遊覧船での旅。美しい景観を楽しみながら、湖や両側にそびえる山々を様々な角度から観察できます。

ガイドさんが湖の歴史や見どころについて説明してくれるのを聞きながら景色を楽しんでいると、ある地点で船が止まり、運転手さんがフリューゲルホルンを取り出します。このホルンで何をするのかというと、向かいの山に向かって曲を演奏し、その「こだま」を聞かせてくれるのです。

跳ね返ってくる「こだま」は透き通った音色で、その音の美しさに思わずうっとりしてしまうほど。この「こだま」を耳にできるのは遊覧船に乗った者の特権といえるでしょう。

遊覧船のコースは夏と冬で異なり、冬はこの聖バルトロメ教会までいって戻るというコースになります。夏になるとさらに進み、一番奥まった場所にあるザレートまで行くことが出来ます。ここからハイキングがてらさらに先にあるオーバー湖までいくのも楽しみ方の1つです。

玉ねぎの形をした屋根が印象的な聖バルトロメ教会は12世紀に建てられたもの。隣接する館はかつてバイエルン王の夏の離宮として使われていました。

教会前から見渡すケーニヒス湖。その荘厳な姿は、この地域の荒々しい自然によって作り出されたものなのです。

ドイツで最も澄んだ湖というだけあり、水の透明さは目を見張るほど。冬の水温は4度ほどで、触れてみるとかなり冷たいです。

ケーニヒス湖は近くの町ベルヒテスガーデンと共にヒトラーに愛された場所。ヒトラーの別荘と言えばケールシュタインハウスが有名ですが、ここにもかつて彼の別荘であるベルクホーフが建てられていました。静かな湖畔を散策すれば、なぜヒトラーがこの地に別荘を建てたのかが分かるような気がしてきます。

荒々しい自然がつくりだしたケーニヒス湖。その姿は荘厳でありながら、どこか神秘的な一面ものぞかせています。

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