注目の世界遺産・オフリドを抱えるヨーロッパの小国「マケドニア」ってどんな国?
|旧ユーゴスラビアの最南端に位置する国・マケドニア。
その名を聞いてもほとんどの日本人が具体的なイメージを思い浮かべられないマイナーな国ではありますが、人気急上昇中の世界遺産・オフリドを擁するマケドニアへの注目は年々高まっています。
・マケドニアってどんな国?
東ヨーロッパのバルカン半島に位置するマケドニア共和国は、面積が九州の約3分の2、人口およそ200万人の小国。かつてはユーゴスラビアの一部でしたが、1991年に独立を宣言しました。
民族構成はスラブ系のマケドニア人が約65パーセント、アルバニア人が約25パーセント、トルコ人やロマなどその他の民族がおよそ10パーセントと、小国ながら民族構成は多彩。公用語はマケドニア語で、宗教はマケドニア正教が約7割、イスラム教が約3割となっています。
2017年11月現在、EU(ヨーロッパ連合)には加盟しておらず、独自通貨のデナルが流通しています。
日本国籍者が観光目的でマケドニアを訪れる場合、3ヵ月以内の滞在ならビザは不要。ギリシャのテッサロニキやブルガリアのソフィアなどから、陸路で首都スコピエを目指すのが一般的です。
・国名「マケドニア」をめぐる論争
実はこの国名「マケドニア」をめぐっては熾烈な論争が繰り広げられてきました。(マケドニア呼称問題)
そもそも「マケドニア」とは、現在のマケドニア共和国に加え、ギリシャの内陸部とブルガリアの西部を含む広い地域で、マケドニア共和国の領土はマケドニア地方全体の4割にも満たないのです。
特にギリシャでは「マケドニア」といえばアレキサンダー大王の古代マケドニア王国を連想するため、ギリシャはマケドニア共和国が「マケドニア」を名乗ることに対し強い不快感を示し、経済制裁や政治的圧力を加えてきました。
憲法上の正式国名は「マケドニア共和国」で、120ヵ国以上がこの呼称を用いている一方、EUや日本等はこれを認めていないため、国際社会ではしばしば国際連合に加盟したときの暫定呼称「マケドニア旧ユーゴスラビア共和国」が使われています。
・「おもてなし」の国
マケドニア呼称問題をはじめ、近隣国からそのアイデンティティを揺さぶられているマケドニアですが、ここに暮らす人々は自国を愛し、自らがマケドニア人であることに誇りをもっています。
そんなマケドニアは、ホスピタリティ溢れるお国柄で有名。特に地方に行けば「来訪者は誰であれもてなす」という文化が残っていて、見知らぬ人の家で食事をごちそうになるという体験ができることもあるとか。
そうでなくても、マケドニアでは町を歩いていたら通りすがりの人に「どこから来たの?」と話しかけられ歓迎されるといった、ヨーロッパの先進国ではほとんどない出来事に遭遇します。
観光大国に比べると、まだまだ外国人観光客の少ないマケドニアでは、素朴な人と人との交流が随所に残っているのです。
・テーマパークのような首都・スコピエ
マケドニアの首都が、北部に位置する都市・スコピエ。
正教系の教会やイスラム教のモスク、共産主義時代の無機質な建物などが混在する独特の町並みが印象的です。なかでも存在感を放っているのが、観光客誘致のための施策の一環として近年次々と建てられた巨大なモニュメントの数々。
アレキサンダー大王の像といったわかりやすいものもあれば、一般の観光客には何を表しているのかよくわからないものもあり、とにかくその数と大きさに圧倒されます。
町の規模が小さいだけに、モニュメントの存在感は異様ともいえるほど。
モニュメント建設に反対する市民は少なくないそうですが、まるでテーマパークのような町並みは一度見ると忘れられないインパクトがあります。
・世界遺産の町・オフリド
マケドニアの至宝が、世界遺産の湖畔の町・オフリド。現在の静かなたたずまいからは想像できないほどですが、中世の時代にはスラブ世界におけるキリスト教文化の中心地として繁栄を極めました。
そんな歴史を今に伝える古い教会などの文化遺産と、ヨーロッパ最古の湖といわれるオフリド湖の美しい自然が評価され、世界的にも珍しい複合遺産に登録されています。
「華やか」よりも「素朴」という表現が似合う、しかしそれでいて歴史の重みを感じさせる厳かな教会群と伝統的な家並み、そして周囲の穏やかな自然が織り成す風景は、心打たれる美しさ。
素晴らしい観光資源をもちながらも、オフリドがのんびりとした空気を維持していられるのは、マケドニアが観光大国でないからこそといえるでしょう。一見華やかな風景ではありませんが、行けばきっとその居心地の良さに魅了される。それがオフリドなのです。
ヨーロッパのなかでも秘境的雰囲気が残るマケドニア。ほとんどの日本人が行かないからこそ、あえてその魅力を発見しに行ってみるのもいいかもしれません。
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