エストニアで最もエストニアらしい町、知性漂う大学都市・タルトゥを訪ねて
|「バルト三国」と総称されるエストニア、ラトビア、リトアニアのうち、最も北に位置するのがエストニア。なんといっても古い町並みが世界遺産に登録されている首都・タリンが有名ですが、エストニアの見どころはそれだけではありません。
「エストニアの精神的首都」「エストニアで最もエストニアらしい町」とも称されるのが、エストニア南部の文化都市・タルトゥ。首都のタリンは経済の中心地にすぎす、エストニアの知性と文化を支えているのはここタルトゥだというわけです。
ラトビアの首都・リガに次いでバルト三国で2番目に古い町であるタルトゥでは、11世紀にはすでに交易の拠点が築かれていました。13世紀に十字軍騎士団の支配下に置かれた後は独立司教領となり、ドイツ名「ドルパット」の名でハンザ同盟に加盟。商業都市として発展しました。
タルトゥ大学の創設以降、タルトゥはエストニアきっての学問都市としての地位を獲得し、それは現在も続いています。
・タルトゥ大学
現在のタルトゥを特徴づけているのが、エストニアの最高学府・タルトゥ大学の存在。スウェーデンの王グスタフ2世により1632年に創設されたタルトゥ大学は、エストニアで最も優秀な学生たちが集まる名門大学です。
町の中心部にたたずむタルトゥ大学の本館は、1806年に建てられたギリシア式の円柱が並ぶ堂々たる建物。本館内にあるタルトゥ大学美術館や式典会場、懲罰室は一般の見学も可能です。
・ラエコヤ広場
タルトゥの中心が、何世紀にもわたって町の中心であり続けてきたラエコヤ広場。クリスマスマーケットやハンザ・デーなど年間を通してさまざまなイベントが開催されます。
現在見られる建物は、1775年の火災後に石造りで建てられたもの。なかでも目を引くのが、1789年に建てられたゴシック様式の塔をもつ市庁舎。ピンクと赤の可愛らしい配色がメルヘンチックなムードを醸し出します。
1998年には、大学町タルトゥを象徴するかのような、キスをする学生のドラマティックな像と噴水が設けられ、新たなタルトゥのアイコンとなっています。
細長い広場には、カフェやレストランも並び開放的な雰囲気が漂います。天気の良い日には、テラスで食事やお茶を楽しんではいかがでしょうか。
・タルトゥ美術館(傾いた家)
ラエコヤ広場に面して建つもうひとつの有名な建物が、「バークレイの家」と呼ばれる傾いた家。見た瞬間「本当に傾いてる!」と声を上げたくなるほど、はっきりと傾いています。なんとあのピサの斜塔よりも傾き加減は上を行っているとか。
このあたりは地盤が軟弱なうえに、建物の基礎に木の杭が使われているので、古い建物は多かれ少なかれ沈んでいるのだそう。
かつては薬局として使われていましたが、現在はタルトゥ美術館として公開されており、おもに20世紀のエストニア画家の作品を展示しています。建物の傾きにばかり注目が集まりがちですが、絵画の所蔵数は4000点を超え、美術館としても見ごたえ十分。
・聖ヨハネ(ヤーニ)教会
タルトゥ大学の本館にほど近いところに建つレンガ造りの大きな教会が、聖ヨハネ(ヤーニ)教会。1323年にリューベックの職人たちの手で建てられた教会で、バルト三国で最古のものとされています。
見どころは、当時北ヨーロッパでは類を見ないものだった教会の外壁と内部を飾る素焼きの塑像の数々。
残念なことに、1000以上あった塑像は度重なる戦争によって多大な被害を受けてしまいましたが、一応の修復作業が完了した現在では、再現された塑像が再び飾られています。
塔の上にものぼることができ、タルトゥ市街のパノラマが楽しめますよ。
・大聖堂(トームキリク)
「トーメの丘」と呼ばれる高台に位置する見どころのひとつが、13世紀後半に着工、15世紀に完成した大聖堂。建設中は朝になると前日の作業が水の泡になるという事態が続き、これが魔物のしわざと信じられたため、処女をいけにえにして魔物をなだめたという伝説が残っています。
16世紀の宗教改革で廃墟と化しましたが、現在は建物の位置がタルトゥ大学歴史博物館として使われています。
現役の立派な大聖堂も見ごたえがありますが、なかば朽ちかけたレンガ造りの建物にもなんともいえない味わいを感じませんか。
ほかにもさまざまな博物館が点在するタルトゥの町を歩けば、学問都市らしい落ち着いたたたずまいに心安らぐことでしょう。タリンに比べると観光客の数もずっと少ないので、より普段着のエストニアの姿が垣間見えるのも魅力です。
タリンからタルトゥへは、バスでおよそ2時間半。バスは頻発しているのでタリンからの日帰り旅行も可能ですが、タリンからラトビアの首都・リガに向かう途中に寄り道してみるのもおすすめです。
エストニアを旅するなら、タリンだけでなく、エストニア人の魂を支える精神的首都・タルトゥの空気にも触れてみてはいかがでしょうか。
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