マルタ共和国に残る世界遺産の巨石神殿「タルシーン神殿」で歴史ロマンを体感
|地中海に浮かぶ美しい島国、マルタ共和国。
国土は淡路島の半分ほどにあたる316平方キロメートル、人口はわずか43万人と非常に小さな国ですが、実は驚くほど長く豊かな歴史を有する国です。
マルタにおける悠久の歴史を裏づけるものが、世界遺産に登録されている先史時代の巨石神殿群。
マルタ本島とゴゾ島では、30あまりの巨石神殿が確認されており、最も古いとされるゴゾ島のジュガンティーヤ神殿は、紀元前3600年頃に建造されたといわれています。なんと、マルタの巨石神殿の歴史は、かのエジプトのピラミッドよりも古いのです。
今回は、数あるマルタの巨石神殿のなかでも保存状態が良く、首都ヴァレッタからも近いタルシーン神殿をご紹介しましょう。
タルシーン神殿は、巨石を組み合わせた半円形の神殿が4つ集まっている遺跡で、紀元前3000~2500年のあいだに建設されたといわれています。
ただし、4つの神殿のうち、もっとも古いものはその痕跡を残すのみで、神殿としての形が確認できるのは第1~第3神殿の3つ。マルタに残る巨石神殿のなかでも、タルシーン神殿は当時の神殿建築の進化をよく表す、建築と彫刻に優れた遺跡といわれています。
先史遺跡というと、なにもない平原にぽつんとたたずんでいるイメージがありますが、タルシーン神殿はパオラという町の真ん中にあり、周囲は住宅街。
なぜそんな奇妙なことになったかというと、この神殿は1914年に農民によって偶然に発見されたからです。それから、1914~1919年にかけて考古学者によって発掘が行われ、一般に公開されるようになりました。
タルシーン神殿へのアクセスは、首都ヴァレッタから81番バスでまたは82番バスで25分程度。あるいは、マルタの主要観光スポットを結ぶ観光バス「Hop on Hop off Bus」も利用できます。
神殿は住宅街にあるため、少々わかりにくいですが、ところどころに掲げられている「TARXIEN TEMPLES」の看板を目印に進みましょう。
タルシーン神殿の入口は、小さな石造りの四角い建物です。
入口を入って右手にあるのが、最も新しい第3神殿。
ここで目を引くのが、スカートをはいた高さ2.5メートルの太った女神の下半身像。これは「豊穣の女神」を表したものとされ、上半身が欠けた状態で発見されました。
マルタに残る巨石神殿からは、ほかにも大小の女神像が発掘されており、母なる女神が人々の信仰を集めていたことがうかがえます。
その近くにある石板には、よく見ると2頭の雄牛が向かい合うレリーフが。
マルタの巨石神殿からは、動物をかたどった像も多数出土しているほか、動物の骨も見つかっています。このことから、動物を生贄として捧げることで、豊穣を願う習慣があったのではないかと考えられています。
第3神殿からさらに奥に進み、中央にあるのが第2神殿。ほかの神殿とは異なり、左右対称の半円が3つに重なり合う構造をしています。
タルシーン神殿の装飾で印象的なのが、石に刻まれたうずまき模様のレリーフ。
これは北大西洋からエーゲ海にいたるまで、ヨーロッパの多くの場所でみられる装飾で、時間と永遠の象徴と考えられています。
さらに奥には第1神殿がありますが、第2神殿と第3神殿に比べると装飾は少なく、時代が新しくなるにつれて装飾が増えていったことがわかるでしょう。
巨石で仕切られた部屋の一部には穴が開けられており、ここから巫女が神託を下したといわれています。
タルシーン神殿に展示されている各種発掘品の多くは、レプリカ。文化財保護のため、オリジナルはヴァレッタの考古学博物館に展示されています。
タルシーン神殿を訪ねたら、ぜひヴァレッタの考古学博物館にも足を運んで、オリジナルの発掘品を鑑賞してはいかがでしょうか。
紀元前数千年前というと、途方もない昔のように感じられますが、その当時の人々にも現代の私たちと根本的には変わらない人間生活があったのだと思うとなんだか不思議です。
当時の人々が何を考え、どんな気持ちでこの神殿を築いたのかを想像しながら見れば、きっと歴史ロマンを掻き立てられるに違いありません。
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