【世界のお城】ヴァイキングの砦が発祥、1000年以上の歴史を誇るアイルランドのダブリン城

都会の風景に重厚な歴史的建造物が点在する、アイルランドの首都ダブリン。その歴史は古く、8世紀末にヴァイキングがこの地を占領し、城塞都市を築きます。

12世紀後半には、イングランド王ヘンリー2世がダブリンをアイルランド支配の拠点とし、街を拡大。18世紀後半には大英帝国第2の都市にまで成長しました。

その後19世紀後半から独立運動が盛んになり、1922年にアイルランド自由国が独立すると、タブリンはアイルランドの首都として発展してきました。

ダブリンにおけるイギリス支配の象徴が、ダブリンのランドマークでもあるダブリン城。

1922年まで、およそ700年にわたってイギリスの総督府が置かれ、イギリスによるアイルランド統治の拠点としての役割を果たしていました。

アイルランドの人々にとっては、少々複雑な感情を呼び起こさせる存在かもしれませんが、それでもダブリン城がダブリンの、そしてアイルランドの歴史において重要な意味をもつことに変わりはありません。

「ダブリン」の街の名前は、現在のダブリン城の庭にあった黒い水たまり(Dubh linn)に由来するといわれています。

リフィ川とその支流が交差する、戦略上重要な場所であるため、かつてここにはヴァイキングが築いた砦がありました。1204年には、イングランドのジョン王によってこの地に城が建てられます。

しかし、当初から現在見られるような姿であったわけではなく、砲火や火災によって破壊されたのちに再建されたため、現在残る建物の大部分は、18~19世紀に建てられたもの。一部ノルマンタワーが、建設当初の外観をとどめています。

城と聞いて、ヨーロッパの王侯貴族のきらびやかな城を想像すると、少々雰囲気が異なります。防衛目的の砦に端を発するだけに、その姿は堅固な城砦といった趣。

クライストチャーチや聖パトリック大聖堂など、ダブリンを代表するほかの建造物もこれに通じる雰囲気をもっているために、街並みに調和が生まれています。

城は内部も見学可能ですが、ヴァイキング時代の砦の一部が見られる地下遺構はガイドツアーでのみ可能。時間に余裕があれば、ぜひガイドツアーに参加しましょう。

地下遺構では、ダブリン城建設当初の城壁やパウダータワー、さらにそれよりも古いヴァイキングが築いた壁を見ることができます。「秘密の部屋」といった雰囲気たっぷりの空間だけに、ダブリンの歴史の深部に迫っているような特別感が味わえるはず。

ダブリン城見学の中心となるのが、国の応接室兼歴代総督の居城として建てられた「ステート・アパートメンツ」。

ダブリン城の質実剛健な外観とは裏腹に、ウォーターフォード・クリスタルのシャンデリアやイタリアの大理石、豪華なカーペットなどの調度品に彩られた豪華な空間で、第一次世界大戦中は一部が赤十字病院として使われた歴史もあります。

ひときわ大きな部屋である、セント・パトリックス・ホールは、アイルランドで最も重要な式典の間のひとつ。

18世紀なかばに城の宴会場として造られたもので、天井にはイタリア人芸術家ヴィンツェンツォ・ヴァルドレによる、アイルランドとイギリスの関係を表す壮大な絵画が描かれています。

アイルランドの独立後は、アイルランド大統領の就任式会場として使われており、新たな歴史を刻んでいます。

ステート・アパートメンツに加え、併設の教会「チャペル・ロイヤル」も必見。19世紀にゴシック様式で建てられた教会で、現在見られる建物は1989年の復元によるものです。

なかでも目を引くのが、レースのように精緻に刻まれた天井と柱の装飾。白壁にダークブラウンのオークの建具がよく映え、華やかな気品を感じさせる空間は、ダブリンで最も美しい教会のひとつです。

「ダブリン発祥の地」ともいえる長い歴史をもち、今では大統領の就任式や国際会議の場としてアイルランドの歴史を見守っているダブリン城。

確かに、かつてはイギリス支配の象徴だったかもしれませんが、今ではアイルランドの歴史と独立の象徴ともいえるのではないでしょうか。

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