世界遺産の町リューベックで船乗りと漁師に捧げられたヤコビ教会を訪ねる
|中世にはハンザ同盟の中心として栄えたリューベック。かつては「バルト海の女王」と呼ばれた威厳を感じさせる美しい街並みは世界遺産に登録されているほか、ノーベル文学賞を受賞したトマス・マンやギュンター・グラスとも深い縁のある町です。
最盛期であった14世紀にかけてはバルト海で水揚げされた海産物や南へ80kmほど離れたリューネブルクで採れた塩の取引が盛んに行われるなど、多くの商人が行き交っていたリューベック。町の北側には船乗りや漁師たちのほとんどが住み、運河沿いには商人たちの船がいくつも停泊していたといいます。
そんな「海の男」たちに捧げられた教会が、尖った屋根が印象的なヤコビ教会。北ドイツにおける重要な巡礼地であるほか、15世紀に作られた古いオルガンがあることでも知られています。
ヤコビ教会があるのは、漁師や船乗りが住んでいたのと同じ町の北側エリア。市庁舎があるマルクト広場に面した目抜き通りのブライテ通りを北に進んでいくと、やがて建物のあいだから教会が姿を現します。
現在の教会は1300年頃に建設されたもの。それまであった教会が1276年の火災で焼失したため、同じ場所にゴシック様式の教会が再建されました。
中に入ってみると高い天井が続きます。白を基調とした空間の中で、黒を使用した祭壇や椅子が重厚な雰囲気を醸し出していますね。華やかという程ではありませんが、教会全体をとりまく神々しさに背筋が伸びる思いです。
教会の一角にあるのは、1957年に沈没した大型帆船「パミール」号の救助ボート。戦後に練習船および貨物船として使用されていた船ですが、南大西洋上で嵐の直撃を受け沈没。86人いた乗組員のうち助かったのは6人だけで、亡くなった人の中には若い実習生も多く含まれていたのだそうです。
6人の命を救った救助ボートが置かれているこの場所は、パミール号のみならず航海で命を落とした人々に対する追悼の場所にもなっています。
このほか正面の祭壇前から教会内を見渡すと、壁に立派なパイプオルガンが掛かっているのが見えます。教会内には合計3つのパイプオルガンがあり、その中で最大となるこちらのオルガンは1466年に作られたものです。
第二次大戦中には防空壕として使われていたチャペルに保管され、戦後に再び設置されたパイプオルガン。日曜のミサや定期的に開催されるオルガンコンサートでは、15世紀から鳴りつづける音色を聞くことができます。
海の男たちに捧げられたヤコビ教会中心地から近くアクセスも良いので、リューベックを散策の際はぜひ訪れてみてください。
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