【新東方見聞録】大ハーンの夢は草原の彼方に(モンゴル・カラコルム)


チンギス・ハーンという男を本気で語ったら、1冊2冊の本では到底足りません。

ですが敢えてこの人物を一言で表すと、「世界地図を大きくした男」と言うべきでしょう。

もともとは地方の一民族に過ぎなかったモンゴル人が、内紛をきっかけに馬の有用性に気づきました。オートバイ並みのスピードで走る馬は、まさに最強の兵器。

歴戦の騎兵隊を止められる国は、ユーラシア世界のどこにも存在しませんでした。

13世紀当時の地球は、モンゴルを中心に回っていたのです。

・カラコルムは世界の中心だった

モンゴル中央部の都市カラコルム。小さな市街地の一歩外を出れば、緑の大地がどこまでも広がっています。

モンゴルに来ると、空の本来の大きさがよく分かります。建物はおろか木々もなく、あるのは空と草原のみ。ですがこの環境こそが、世界最強の軍隊を生み出したのでした。

カラコルムはチンギス・ハーンにより兵站施設が整備され、その後オゴデイ・ハーンの命令でモンゴル帝国の首都になりました。今でもこの町には家畜の馬がたくさん放牧されています。

カラコルムの子供たちは、物心ついた頃からすでに馬に乗っています。鞍や鐙などの馬具を一切つけていない、文字通り裸馬ですらも上手に乗りこなしてしまいます。

・世界最強の騎兵隊

13世紀のモンゴル軍は、将軍から一兵卒に至るまで全員が馬を持っていました。

モンゴル以外の国では、そうはいきません。ヨーロッパでも日本でも、昔から馬に乗れるのは上級指揮官だけです。数千数万の馬を用意するためには、広大な敷地が必要になります。

そして馬は人だけを乗せるものではありません。様々な物資を遠方へ運ぶのにも馬が使われます。いつの時代も、戦争は補給線の確保が要になります。カラコルムを中心に発達した駅伝制は、モンゴル帝国の最大の武器でした。また、各国の文化や調度品を伝える役割も果たしています。

人類の目から見た地球は、チンギス・ハーンの台頭をきっかけに一層大きく広くなりました。

・海を越えられず

モンゴル民族が夢見た地平線の果ては、海によって阻まれます。

騎兵隊の弱点、それは海です。チンギス・ハーンの子孫たちはユーラシア世界の最東端、黄金の島ジパングの征服を目指します。ところが馬は海上輸送が難しい動物。自慢の騎兵隊を直接ジパングの島々へ送ることができず、遠征隊は当地の戦士であるサムライに逆襲されてしまいます。

ジパングへの侵攻が無理だと悟ったモンゴル民族ですが、その頃には支配地域の山々はすっかり禿げ上がり、船を作るための木材が枯渇しました。世界各地に進出する力を失ったモンゴル人たちは、地平線の果ての光景を諦めカラコルムの草原へ戻っていきます。

その後、ユーラシア世界は航海士が活躍する「海の時代」に突入するのですが、それはまた別の話。

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