水だけで蕎麦を食べたことがありますか?長野県松本市の「あるぷす」
|秋と言えば新そばの季節。実は蕎麦には、夏に出る北海道が産地の中心である「夏ソバ」と秋に出る本州が産地の中心である「秋ソバ」の二つの季節がある。
そして夏の新そばを略して「夏新(なつしん)」と、秋のそばを「秋新(あきしん)」と呼び、昔から蕎麦好きな江戸の住人が楽しみにしていたのが、これから出る秋の新そば「秋新(あきしん)」のほうだ。
よいそばが育つには、昼と夜の温度差が大きいこと、空気の澄んだ山間部であること、日照時間がほどほどであることが大事といわれている。
夏よりも秋の蕎麦の方がウマミがあるとか、香りも味も良い、といわれるのは、夏よりも昼と夜の寒暖の差が大きくなる季節だからなのである。
その秋の恵み、「あきしん」を心ゆくまで堪能させてくれる蕎麦屋がアルプスに囲まれた城下町、長野県松本市にある。その名も「あるぷす」。松本駅から少し離れた場所に位置するこちらのお店は、明治二十七年創業の老舗だ。
そば粉は店主こだわりの実の入り良い最高級玄そばのみを石臼挽し、通常より荒めに製粉したものを使用。粗挽きされたそば粉は噛みしめるたびに香りと味わいをたのしめるための店主のこだわりだ。
そのこだわりのそば粉を、ソトニ(そば粉10割・つなぎ2割)で打ち上げ、アルプスの清流で茹で上げれば、上品で甘みのある蕎麦の完成だ。
こちらのお店は「あきしん」の香りとウマミ、甘みをしっかりと感じられるよう天然水をつけて食べる事ができる。まずは天然水で秋という季節の恵みを感じてみよう。
このとき、一瞬でもいいので目を閉じて味覚と嗅覚に意識を集中させてほしい。噛みしめるたびに、かつて江戸の人が待ちわびていた「あきしん」の食感と芳醇な甘みとウマミを感じられる。
目を閉じたまましばらく蕎麦の食感を楽しんでいると、鼻腔を抜けていく香りはどこまでも澄んだアルプスの景色のように、かろやかであり、華やかなものに昇華していく。まさに「秋」を感じる味と言っても過言ではない。
アルプスの清流で仕上げられた秋の香りとウマミたっぷりの蕎麦を、アルプスの清流につけて食べるのだ。これこそ「あきしん」の醍醐味といってもいいし、信州長野だからこそできる自然の恵みを楽しむ贅沢な食べ方とも言える。
天然水で蕎麦を楽しんだ後は、塩だけを蕎麦につけて食べてみよう。少しの塩だけによってさらに甘みを増す蕎麦の繊細さに驚かされる。
「あきしん」のもつ本来のウマミや香りをしっかりと感じたら、安曇野穂高の極上わさびやネギなどの薬味やそばつゆを使って、自分好みの味を探してみよう。
食欲の秋、自然本来の味わいを感じながらも、自分好みの秋の味を探す旅に出かけてみてはいかがだろうか?
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<お店情報>
店名: 手打そば あるぷす
住所: 長野県松本市浅間温泉3-1-13
営業: 11:30〜15:00、17:30〜21:30
定休: 水曜