ドイツが香るフランスの世界遺産の街、ストラスブールを歩こう
|ドイツとの国境に近いフランス、アルザス地方の中心都市・ストラスブール。
イル川とその支流の水路に囲まれた交通の要衝として古くから発展してきました。
中世時代の街並みを今に残す旧市街「グランディル」は世界遺産にも登録されています。
ストラスブールは時に、「フランスの中のドイツ」と呼ばれます。
木組みの家々をはじめとするドイツ風の建物や、ドイツ語に近いアルザス語の看板など、ドイツ文化の影響があちこちに感じられるからです。
石炭や鉄鉱石をめぐってフランスとドイツの間で激しい領有争いが繰り広げられてきたアルザス地方。
ストラスブールは17世紀にフランスの王政下に置かれ、普仏戦争でドイツ領となり、第一次大戦後再びフランス領に、さらに第二次世界大戦ではナチス・ドイツに占領され、戦後フランス領に復帰するという激動の歴史をたどってきました。
三度の戦争を経てフランスとドイツの和解の場となり、現在では欧州議会や欧州人権委員会の本部が置かれるなど、EUの象徴としての新たな役割も担っています。
ドイツ領時代の街並みが残っているほか、言葉や食といった文化にもドイツの影響が見られるストラスブールは、フランスとドイツの文化が融合した独自のアルザス文化が息づく街です。
さぁ、美しく興味深い世界遺産の街を歩いてみましょう。
ストラスブール観光の中心となるのはノートルダム大聖堂周辺と「プティット・フランス」と呼ばれる地区。
旧市街のランドマーク、ストラスブール大聖堂周辺から街歩きを始めましょう。
大聖堂前は広場になっており、観光案内所やカフェ、土産物店などが並んでいます。
1015年に着工されたノートルダム大聖堂は高さ142メートルの尖塔をもつ壮大な教会。
赤色砂岩で造られた大聖堂の華やかな色彩には、独特の優美なあたたかみが感じられます。
文豪ゲーテも「荘厳な神の木」と称賛したその姿は、今もこの街を訪れる人々を魅了してやみません。
外壁にびっしりと施されたレースを思わせる緻密な装飾は圧巻で、いつまでも眺めていたくなるほど。
この威容を目の当たりにすると、この街における大聖堂の存在の大きさを肌で感じずにはいられません。
大聖堂広場では、観光案内所のすぐ隣にある、ストラスブールでもっとも美しいといわれる家「カンメルゼンの家」も必見です。
15世紀に建築された歴史ある建物で、暗い色合いから一見地味なようにも見えますが、近くで見ると精巧な装飾に目を見張ります。
カンメルゼンの家の脇を奥に進んでいくと目に入るのが細い路地への入り口。
食品を中心に小さなショップが連なるこの路地は、中世のまま時をとどめているかのようで歩いているだけで楽しい通り。
鉄細工の可愛らしい看板にはドイツ文化の影響が見られます。
こちらはフォアグラを売るお店の看板です。
アルザス地方には手の込んだ個性的な看板がたくさんありますので見比べながら街歩きを楽しみましょう。
大聖堂の隣、観光案内所とは反対側にあるのがロアン宮。
18世紀にストラスブールの司教ロアンの宮殿として利用されていた優美な建物です。
現在内部は装飾博物館、ストラスブール美術館、考古学博物館の3つの博物館で構成されています。
美術館に入場しなくても門の中に入ることができますので、間近で壮麗な建築物を楽しんでみましょう。
続いて向かうのは、プティット・フランス地区。
運河に沿って美しい木組みの家々が並ぶ、ストラスブール観光のもう一つのハイライトです。
イル川の本流が4本に分かれる豊富な水量を目当てに、かつては漁師や製粉業者、皮なめし職人らで活気にあふれた地区でした。
雰囲気のいいレストランやカフェも多いこの界隈は、ランチやティータイムにもぴったり。
ここに残る家々の木組みの素地の大部分は16世紀末から17世紀にかけてつくられたものです。
木組みの家々が醸し出す素朴さとあたたかさに、フランスならではの洗練された感性が加わった街並みはまるで宝石箱のような美しさ。
ひとつひとつが個性的で可愛らしい木組みの建物の数々は見ていてまったく飽きることがありません。
歩くだけで心踊る、ポジティブなエネルギーに満ちた場所です。
プティット・フランス周辺の川沿いは地元の人々の憩いのスポットになっています。
大人気の観光地でありながら、人々の日常が垣間見えるあたたかさもまた、ストラスブールの魅力です。
プティット・フランス地区の奥にあるのがクヴェール橋。
1200年から1250年にかけて造られた中世の城壁の一部で、13世紀には同様の塔が80以上も立っていました。
石造りの重厚な塔はこの街が歩んできた歴史の重みを物語っているかのようです。
歴史に翻弄され、しばしば悲劇の舞台となってきたストラスブール。
だからこそ、今も残る歴史的建造物の数々が奇跡のように感じられ、美しい街並みにいっそう心打たれます。
この街には訪れる人々の心を豊かにしてくれる魔法があるのです。
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