「ドラキュラ」の故郷、ルーマニアのシギショアラは可愛らしい世界遺産の城塞都市

「吸血鬼ドラキュラ」のモデルとして知られる、ヴラド・ツェペシュ(ヴラド3世)。彼の故郷がルーマニア・トランシルヴァニア地方に位置する小さな街、シギショアラです。

小高い丘の上に築かれたシギショアラの旧市街は、中世の面影をそのままに残す城塞都市。その美しい街並みは、まるごと世界遺産に登録されています。

シギショアラの歴史は、12世紀にハンガリー王がザクセン人(ドイツ人)をこの地に送り込んだことからはじまります。ドイツ名を「シェースブルク」といい、15~16世紀の最盛期には15のギルド(職人組合)をもつ城塞都市として発展しました。

旧市街への入口となるのが、街のシンボル・時計塔。14世紀に、シギショアラが商工ギルドによる自治都市となったことを記念して建てられました。

現在見られる姿は、1670年の火事の後に再建されたもの。現在も機械仕掛けで時を刻んでおり、毎正時にからくり人形が動く仕掛けを見ることができます。

時計塔の内部は歴史博物館となっていて、古代ローマ時代の生活用品や家具、手術道具など、時代ごとのさまざまな展示品が見られるほか、見逃せないのがテラスからの風景。

トランシルヴァニアの山々と調和した中世の街並みは、思わず心がほどける優しい景色です。

時計塔のある広場に面して建つ、シギショアラの名物スポットが「ヴラド・ドラクルの家」。1431年にヴラド・ツェペシュが生まれた家で、現在はレストランとして営業しています。

ドラキュラにちなんだメニューもあるので、ドラキュラの世界観に触れながら食事を楽しんでみてはいかがでしょうか。

シギショアラでもっとも重要な建造物のひとつが、木造の屋根のある階段をのぼった先に立つ、山上教会。

13世紀に建てられたロマネスク様式の礼拝堂を起源とし、現在見られる後期ゴシック様式の建物は、15世紀に建てられたものです。内部には、ザクセン人が住んでいた周囲の村々から集められた壁画などが展示されています。

こぢんまりとしていながら、シギショアラはぶらぶらと散策するのが楽しいところ。石畳の路地にパステルカラーのカラフルな家々が建ち並ぶ街は、絵になる風景でいっぱいです。

メインストリートを少しでも離れると、とたんに「村」と呼んでもいいような田舎の風情が漂うのもシギショアラの魅力。近代的に整えられていないからこそ、醸し出される本物の中世の雰囲気がここにはあります。

「21世紀のヨーロッパにこんな風景があったとは!」と思うほどで、先進ヨーロッパ諸国にはない懐かしい空気にタイムスリップしたような気分にさせられます。

可愛らしい街並みと、素朴な優しい風景で訪れる人々を魅了するシギショアラの街。「ドラキュラ伯爵」のふるさとは、世界遺産の名にふさわしい素敵な街だったのです。

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