【世界の博物館】世界初の地下鉄に2階建てバス、200年の交通の歴史を紐解く「ロンドン交通博物館」

ロンドン中心部にある人気ショッピングエリア「コヴェント・ガーデン」

オードリー・ヘップバーン主演の映画「マイ・フェア・レディー」のロケ地としても有名で、ショッピングにグルメにカルチャーにと、一日中楽しめる魅力いっぱいのエリアです。

そんなコヴェント・ガーデンの一画にさりげなくたたずんでいるのが、「ロンドン交通博物館」。

ショッピングエリアに交通博物館なんてなんだか意外ですが、ここはもともとオードリー扮するイライザの花屋があった場所なのです。花マーケットだった当時は500もの花屋がひしめいていたといいますが、花マーケットは1974年に閉鎖。1980年、その跡地に交通博物館がオープンしました。

館内に足を踏み入れると、近未来的なパネルの数々に見慣れた地名!

これらは東京、パリ、上海の地下鉄の路線図で、壁に埋め込まれているモニターでそれぞれの地下鉄の様子を見ることができます。

この交通博物館は2007年にリニューアルオープンしたばかり。ガラス張りのモダンな館内で、ロンドンにおける200年の交通の歴史を振り返りましょう。

年代順に見学するなら、まずは19世紀の交通手段が紹介されているレベル2(日本式3階)へ。

19世紀初頭、ロンドンは現在よりもはるかに小さい町で、庶民はどこへ行くにもほとんど徒歩で移動していました。

裕福な人々は人力のカゴに乗って移動することもあったようで、これらは17世紀に導入され、19世紀はじめまで使われていたといいます。

人々の服装やカゴのデザインは違うとはいえ、日本の時代劇に出てくるような風景が昔のロンドンにもあったなんて、なんだか面白いですね。

ロンドンの交通を大きく変えたのは、パリからやってきた馬車。庶民は乗合馬車という新しい交通手段を得て、より簡単に移動ができるようになりました。

そして、1870年には馬が引くトラムが登場し、庶民でも利用できる公共交通手段として人気を博しました。

1900年までには5万頭もの馬がロンドンの交通のために働いていたといい、馬たちのふんは一日1000トンにものぼったとか。ふんの後始末や馬たちの世話だけでも大変な仕事だったといいます。

レベル1(日本式2階)では、1863年にロンドンで誕生した世界初の地下鉄が紹介されています。

19世紀当時、鉄道ができたことで郊外からロンドン中心部への移動が移動になったために、ロンドンは人であふれ大変な混雑を見せるようになりました。そこで1860年、世界で最初の地下鉄建設計画が持ち上がったのです。

このフロアでは初期の地下鉄の建設方法も含め、当時の地下鉄の仕組みや駅、車両の様子などが紹介されています。

「地下鉄」とはいっても現代の地下鉄とは違って、蒸気機関で動いていたため、服や顔が真っ黒になると嫌う人も多かったといいます。

階級社会らしく、当時の地下鉄には1等、2等、3等のクラス分けがあり、3等車は硬い木の座席、1等車はクッション座席のコンパートメントと、クラスによって快適度に大きな違いがありました。車両の中には当時のロンドナーたちの姿も。

服装なども当時のものを再現していて、臨場感たっぷり。この交通博物館では、立ち入り禁止シールが貼られていない限り車両に乗り込むこともできるので、実際に乗ってみて座り心地を確かめてみるのもいいですね。

レベル0(日本式1階)では、1900年から1945年までのタクシーや2階建てバス、トラムなどが勢揃い。

1930年代に登場したトラムとバスのあいだのようなトロリーバスや、ロンドンを象徴するダブルデッカーの姿もあります。実際に乗り込むことができる車両も多く、子どもたちにも大人気です。

実はロンドンはタクシー発祥の地。通称「ブラックキャブ」と呼ばれる正規のタクシーは、そのルーツを17世紀の辻馬車にさかのぼるといいます。

ブラックキャブの運転手になるにはきわめて難しいテストに合格する必要があり、見事難関を突破した運転手たちはロンドンのあらゆる道を知り尽くすカーナビいらずの存在です。

このフロアでは、展示車両のみならずロンドン地下鉄のポスターや看板などにも注目。

ロンドンの地下鉄は1930年代に現代アートをサポートする公共機関となり、デザインにも力を入れるようになりました。5000点にも及ぶ歴代のポスターには、それぞれの時代の雰囲気が表れています。

単なる移動手段の域を超えて、歴史であり文化でもあるロンドンの交通。

せっかくロンドンを訪れたなら、交通博物館でロンドンの交通の今昔にふれてみてはいかがでしょうか。

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