ロンドン中心部の教会廃墟を再生させた庭園「セント・ダンスタン・イン・ザ・イースト」

ロンドン中心部、テムズ河北岸に広がる行政区「シティ・オブ・ロンドン(City of London)」には、イギリスの中央銀行であるイングランド銀行(Bank of England)やロンドン証券取引所(London Stock Exchange)をはじめとする金融機関や、各国の商社などが多数オフィスを構えています。

通常単に「シティ」と呼ばれているこの一帯は、ロンドンの起源となる地域である古いエリアでもあり、歴史ある建物と高層ビルが混在し、街のいたる所にさまざまなモニュメントを発見することができる、街歩きが楽しい場所でもあります。

そんなシティの近代的なビルとレンガ造りの建物に囲まれた空間にひっそりと佇んでいるのが、今回ご紹介する「セント・ダンスタン・イン・ザ・イースト(St Dunstan in the East)」。

ここはシティ・オブ・ロンドンが管理する、教会の廃墟を再生させた庭園で、シティで働く人々やロンドン市民の憩いの場となっています。

かつてはステンドグラスが輝きを放っていただあろうアーチ型の窓枠が連なる石造りの壁にツタが絡まる様は、侘しさを併せ持つ美しさ。

この独特な風景を求め、廃墟ファンやインスタグラマーが日々訪れ、人気バンドのミュージック・ビデオの撮影地としても使用されています。

オリジナルの建物は1100年頃には建てられていたという非常に古いこの教会は、1666年に発生した未曾有の大火災「ロンドン大火(The Great Fire of London)」により、深刻な被害を受けました。

その後、同じくシティにあり、ロンドン大火で焼失した「セント・ポール大聖堂(St Paul’s Cathedral)」を現在の姿に再建した天才建築家「クリストファー・レン( Christopher Wren)」により、1695年から数年かけて再建され、タワーと尖塔が追加されました。

レンの手により立派に生まれ変わったこの教会は240年後、今度は戦火に見舞われます。第二次世界大戦中の1941年、ドイツ軍によるロンドン大空襲で、タワーと尖塔を残し大部分が破壊されてしまいました。そして戦後の教会再編成の中、英国教会はセント・ダンスタン・イン・ザ・イーストの再建を行わないことを決定。修復と増築を繰り返してきたこの教会はついに見捨てられることとなったのです。

この決定が後に他に類を見ない現在の廃墟庭園の姿へとつながります。

1967年、シティ・オブ・ロンドンはこの廃墟を公共の庭園にすることを決定。1971年に庭園として生まれ変わりオープンしました。

2015年春にはメンテナンスと改修が行われ、全体に新たな植物が植えられ、さらに美しい庭園へと進化しました。

さすがはガーデニングの国、人工的に植えられていながら、作り物感のないどこまでも自然な庭園デザインに仕上がっています。

都会の真ん中にありながら、廃墟独特の静寂を感じ、風に揺れ絡まるツタや苔むす壁を見ていると、とてもリラックスでき、時が経つのを忘れてしまいそうです。

こぢんまりとした庭園ですが、見る価値は大。秋にはツタが紅く色づき、灰色の壁に映える紅葉を楽しめます。

ロンドン旅行の際はシティ・エリアの魅力的な路地を散策しながら立ち寄ってみては?

名前 St Dunstan in the East
住所 St Dunstan’s Hill, London, EC3R 5DD
開園時間 午前8時~午後7時または日暮れまで(どちらか早いほう)

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