「コーカサスのドバイ」と称された、アゼルバイジャンってどんな国?

文明の交差点とでもいうべきコーカサスに位置するアゼルバイジャン。

日本人には馴染みの薄い国ですが、「ヨーロッパの主要国へはもう行った」「人が行かないところに行ってみたい」という人から密かに注目を浴びている国です。

「コーカサスのドバイ」の異名をとったビル群に、世界遺産の旧市街や遺跡など、知られざるアゼルバイジャンの見どころと豆知識をご紹介します。

・アジアとヨーロッパのはざまにあるコーカサスの国

アゼルバイジャンは、「コーカサス」と呼ばれる場所にあります。日本ではあまり聞かれない呼称ですが、コーカサスとは、黒海とカスピ海に挟まれたコーカサス山脈と、それを取り巻く低地からなる約44万平方キロメートルの地域のこと。

コーカサスは、ロシアの一部からなる北コーカサスと南コーカサスに分かれますが、一般的に「コーカサスの国」というときには、おもにアゼルバイジャンやジョージア、アルメニアなどからなる南コーカサスを指します。

アジアとヨーロッパのはざまに位置するコーカサスは、アジアとヨーロッパの文化が入り混じったエキゾチックな風景や空気感が特徴です。

・コーカサス唯一のイスラム教国

アゼルバイジャンは、コーカサスで唯一のイスラム教国。

イスラムの国というと旅行がしにくいというイメージがあるかもしれませんが、アゼルバイジャンに関していえばまったくそのようなことはありません。

肌や髪を隠すようなファッションをしている女性はむしろ少数派ですし、飲酒に対しても寛容。ラマダーン(断食月)のあいだでも、レストランでの飲食等には支障がなく、そういう意味では比較的旅行がしやすいイスラムの国といえます。

・物価は日本の半分程度

アゼルバイジャンの通貨はマナトで、1マナトは約65円(2018年9月現在)。

以前はコーカサスの国としては物価が高いといわれていましたが、2015年にマナトが暴落したことにより、ジョージアなどの周辺国と大差のない、日本人から見ると物価の安い国になりました。2014年前半は1マナト130円前後で推移していたため、なんと半額近くまで下がったことに。

用途によっても異なりますが、外食費や宿泊費など、おもな旅の費用は日本の半額程度と考えておけばいいでしょう。交通費などはさらに割安に感じられることもあります。

・ビザの取得は超簡単&無料

観光目的の短期滞在であっても、アゼルバイジャンへの入国にはビザが必要。

といっても、日本パスポート保持者はバクーのヘイダル・アリエフ国際空港とギャンジャ空港でアライバルビザを取得することができるので、空路入国の場合事前の準備は必要ありません。

ビザの取得費用は無料で、取得方法は空港に設置してある電子端末に必要事項を入力するだけ。端末から印刷されるレシートのようなものがビザとなります。

空港には端末の操作を手伝ってくれる係員が待機しており、至れり尽くせり。事前にビザを取得しなければならない国籍の人が多いなか、ごく簡単に無料でビザを取得できるのは、日本人の特権といえるでしょう。

・外国人旅行者はまだまだ珍しい

アゼルバイジャンの観光産業は成長過程にあり、ヨーロッパの主要国に比べると外国人旅行者の数は決して多いとはいえません。

英語での情報など、外国人旅行者向けのインフラやサービスは必ずしも十分とはいえませんが、外国人旅行者が少ないからこそ、観光客慣れしていない素朴な人々に出会えるのも事実。

特にアゼルバイジャンの子どもたちは外国人に興味津々で、外国人と見ると嬉しそうに英語で話しかけてくることもあります。そうした体験もまだまだ外国人旅行者が少ない国だからこそ。

中東やヨーロッパを中心に、近年アゼルバイジャンを訪れる外国人旅行者数が伸びており、今後はさらなる増加が見込まれています。

・治安は決して悪くない

日本とはなじみが薄く、国人旅行者が多くないこともあって、治安が心配されがちなアゼルバイジャンですが、治安は決して悪くありません。人口10万人当たり殺人発生件数は2.14(世界125位)と、日本人が訪れるタイ(3.24で世界104位)よりも低い水準です。

特に首都バクーでは、昼夜を問わずあちこちに警官が立っていて、ひったくりや強盗といった力業の犯罪を起こす余地はないのではないかと思うほど。

地方では事情が異なりますし、夜の一人歩きは極力避ける、貴重品の管理に気を付けるといった常識的な注意は必要ですが、世界的に見てアゼルバイジャンが危険な国ということはありません。

ただし、アルメニアとの国境付近やアルメニアの占領地域は情勢が不安定なため、渡航の際には最新の情報を確認するようにしてください。

・新旧が融合する首都バクー

アゼルバイジャンを旅するほどんどの人がまず訪れるのが、カスピ海に面した首都バクー。近年、オイルマネーによって次々と前衛的な建造物が建てらたことから、「コーカサスのドバイ」とも呼ばれてきました。

2012年に完成した3つのビル群「フレイムタワー」や、新国立競技場の建設にまつわる騒動で日本でも有名になったザハ・ハディド氏が手がけたヘイダル・アリエフ・センターは、バクーを代表するモダン建築。

その一方で、バクーには世界遺産に登録された旧市街も残っています。

「イチェリ・シェヘル(内城)」と呼ばれるバクーの旧市街は、近代的な建築物が並ぶバクーのほかのエリアとはまったくの別世界。アジアとヨーロッパの建築様式が混在した砂色の町並みは、歩くだけでタイムトラベルしたような気にさせてくれます。

・世界遺産ゴブスタン

世界遺産にも登録されているゴブスタン国立保護区は、バクー近郊にある古代遺跡。荒涼とした岩山が広がる地区に、5000~20000年前に描かれた人物や動物の岩絵が6000以上も残っており、当時の人々の暮らしぶりを今に伝えています。

ゴロゴロと巨石が転がる異世界のような風景と、歴史ロマンあふれる岩絵のコラボレーションは格別。単純で素朴な岩絵の数々からは、古代人の躍動感と生命力が伝わってきます。

・古都シェキ

「アゼルバイジャンで最も美しい町」といわれるのが、首都バクーから北西300キロに位置する古都シェキ。その歴史は紀元前にさかのぼるといい、一時はシルクロードの中継地として繁栄していました。

そんなシェキの名物が、今も宿泊施設として営業しているキャラバンサライ(隊商宿)。石造りの建物に囲まれた中庭はムードたっぷりで、シルクロード商人たちが投宿していた当時の光景が目に浮かんでくるかのようです。

シェキのもうひとつの見どころが、かつてこの地を治めていたハーン(君主)の宮殿。権力者の宮殿としてはこぢんまりとしていますが、色とりどりのヴェネツィアングラスや木工細工の窓、花鳥を描いたフレスコ画で彩られた内部は目を見張るほどの美しさです。

旅先としては決してメジャーとはいえないものの、だからこそ新鮮な出会いや発見が盛りだくさんのアゼルバイジャン。ちょっとマイナーなこの国の魅力を、その目で見つけてみませんか。

Post: GoTrip! http://gotrip.jp/ 旅に行きたくなるメディア