【世界の街角】イスタンブールのアジア側・ユスキュダルで、歴史と庶民の暮らしを感じる街歩き

トルコ最大の都市イスタンブールは、西洋と東洋の架け橋。ボスポラス海峡を挟んで、ひとつの都市が、ヨーロッパ大陸とアジア大陸とにまたがっているのです。

市内を行き来するだけで、大陸間を横断していることになるなんて、ロマンティックでダイナミックだと思いませんか?

イスタンブール観光のメインは、ブルーモスク(スルタンアフメット・ジャーミィ)やアヤソフィア、トプカプ宮殿などのあるヨーロッパ側。しかし、せっかくイスタンブールを訪れるなら、アジア側にも足を運んで、この都市のダイナミズムを感じてみたいものです。

観光地としてはややマイナーなアジア側にも、旅行者が訪れやすい街がいくつかあります。そのひとつが、アジア側の中心ユスキュダル。古代ギリシアの植民都市クリソポリスが起源とされる長い歴史をもつ街で、いつもイスタンブール庶民の活気に満ちています。

ヨーロッパ側からのアクセスは、エミノニュ、カラキョイなどから船で。スィルケジやイェニカプからは、2013年に開通したマルマライ(TCDD国鉄近列車)も利用できます。

晴れた日には、散策をしたり、景色を楽しんだりする人々が集まるユスキュダルの港。イスタンブールらしい活気はあるものの、ヨーロッパ側に比べると、どこかリラックスした庶民的な雰囲気があります。

ユスキュダルのランドマークが、港からほど近い「ミフリマー・スルタン・ジャーミィ」。オスマン帝国最盛期に君臨したスレイマン1世の娘、ミフリマーのために建てられたモスクで、オスマン帝国最高の建築家ミマール・スィナンが設計を手がけています。

シャープな印象の外観とは対照的に、レースのような模様や、小ぶりでカラフルなステンドグラスなどが、柔らかく女性的な印象を醸し出す内部。

実は、天才建築家スィナンは皇女ミフリマーに恋心を抱いていたという説があり、優美な内部装飾はその表れともいわれています。

ミフリマー・スルタン・ジャーミィの前の道を通って街の中へと入っていくと、商店街があり、野菜やハム・チーズ、乾物類といった庶民の必需品が並んでいます。

お茶やドライフルーツ、ナッツなどの乾物類は、お土産にもおすすめ。グランドバザールやエジプシャンバザールなどで買うよりもずっと安いので、ローカルに混じって買い物を楽しんでみては。

港町だけに魚市場や魚料理のレストランもあり、おこぼれを狙う猫たちに出会えます。

ユスキュダルを代表するもうひとつのモスクが、「イェニ・ヴァリデ・ジャーミィ」。オスマン帝国の第23代皇帝アフメト3世が、自身の母に捧げたモスクで、名前は「新しい母」を意味します。

内部はシックな色使いで、重厚感と優雅さが共存。どっしりとした愛情で優しく包み込んでくれる母親のイメージが反映されているのでしょうか。ほかのモスクにはなかなかない雰囲気です。

もうひとつ、ユスキュダルで見逃してはいけないスポットが、かつて灯台として使われていた「乙女の塔」。ガイドブックやパンフレットにもしょっちゅう登場するイスタンブール有数の名所で、特に夕景スポットとして有名です。

ユスキュダルの港からは、歩いて15分ほど。細い尖塔をもつ独特のシルエットが、ボスポラス海峡によく映えますね。

気になる「乙女の塔」という名前の由来には、次のような伝説があります。

その昔、「お前の娘は18歳の誕生日に蛇に噛まれて命を落とすだろう」と占い師に告げられた王は、慌てふためき、愛娘をこの塔に閉じ込めて育てることに。ボスポラス海峡に浮かぶ塔なら、蛇に襲われる心配はないと考えたからです。

娘の18歳の誕生日、王は果物をいっぱいに詰めたカゴを塔にいる娘の元に。すると、カゴの中に毒蛇が隠れており、預言通り娘は毒蛇に噛まれて死んでしまったというのです。洋の東西を問わず、ロマンティックな名前の裏には、しばしば悲劇のエピソードがあるのですね。

海岸の遊歩道から眺めるだけでなく、塔に行く小船に乗って、塔の中まで行くことが可能。ボスポラス海峡の真ん中から両大陸を眺めたり、レストランでムード満点のディナーを楽しんだりすることもできますよ。

ヨーロッパ側とはまた違った趣が感じられるイスタンブールのアジア側。ユスキュダルだけなら半日もあれば満喫できるので、船やマルマライで、気軽にアジア側に渡ってみてはいかがでしょうか。

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