【京都・純喫茶の旅】四条河原町の「築地」で摩訶不思議な世界に迷い込む

古くから喫茶文化が根付く京都は、日本有数の喫茶天国。もちろん今どきの「カフェ」もたくさんありますが、もはや貴重な存在となりつつある「純喫茶」もそろい踏み。

抹茶スイーツもいいけれど、せっかく京都に行ったなら、重厚感あふれる「純喫茶」にも足を運んでみませんか。

今回筆者がお邪魔したのは、四条河原町の路地裏にある「築地」。昭和9年創業、京都におけるウインナーコーヒー発祥の店といわれる老舗喫茶店です。

京都を代表する繁華街、四条河原町。多くの人々が行き交う大通りから路地裏に入っていくと、雰囲気ががらっと変わります。

狭い通りにひっそりとたたずむ、摩訶不思議な館。和洋折衷の独特の外観を目にしただけで、映画の世界に迷い込んだかのような気分になります。

「築地」の看板があるだけで、「喫茶店」のサインは一切なし。そうと知らなければ、外観からはここが飲食店であることすらわかりません。

意を決して中に入ってみると、店内は外観以上に強烈な世界観。ベロア素材の真紅の椅子に、所狭しと並べられたアンティーク、重厚なクラシック音楽…

まるでヨーロッパ貴族の館。「でも、ただの貴族ではない。ひょっとしてドラキュラの館?」― そんな風に思わせる、得体の知れない空気感があります。

「築地」というと、気になるのはそのネーミング。「京都なのになぜ?」と思う人も多いのではないでしょうか。

その由来はまさしく、東京の築地。初代オーナーが好きだった「築地小劇場」にちなんで名付けられたのだそう。

お店のデザインはすべて初代のオリジナル。赤い布張りの椅子も、外壁のタイルも初代が自らオーダーしたもので、調度品も当時のまま並べられています。

「築地」の名物は、ホイップクリームをのせたウインナー珈琲。「築地」で「ホット」といえば、ウインナー珈琲のことなのです。

植物性の薄いフレッシュしか手に入らなかった当時でも、初代オーナーは「本物」にこだわりました。生クリームをホイップしてコーヒーに浮かべることで、純正の生クリームだと証明したのが「築地」のウインナー珈琲のはじまりです。

濃いめに淹れられたコーヒーは、がつんと脳天に刺さるようでいて、生クリームがまろやかさをプラス。クラシックが厳かに流れる中、別世界のような空間でいただく一杯は、単なる喫茶というより、新たな「体験」です。

一人で本を読んだり、少人数で静かに語らったり。

そんな静かでゆったりとした過ごし方がぴったりの「築地」。一度ハマったら、またふらりと迷い込みたくなるに違いありません。

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【お店の情報】
築地
住所:京都市中京区河原町通四条上ル一筋目東入ル
電話:075-221-1053