2026年の旅行トレンド「読書リトリート」とは? 大分・湯布院で文学に触れる旅

世界中の航空会社・旅行会社・ホテルなど約1,200のウェブサイトから最適な旅行プランを提供するグローバル旅行アプリ、スカイスキャナー。毎日1,000億件以上の検索が行われるスカイスキャナーでは、検索結果や市場の動向を通じて、毎年10月に、次の年に盛り上がりが予想される7つのトレンドを「トラベルトレンド」として発表しています。

2025年10月9日に公開された「スカイスキャナー トラベルトレンドレポート2026」によると、2026年はこれまで以上に“自分らしい旅”や“パーソナルな体験”を求める傾向が浮き彫りになりました。新たな旅行スタイルとして、自然の中で心身をリフレッシュさせる「山間リトリート」、読書を旅の目的にする「読書リトリート」、日常に根差した「ローカルツアー」などが注目されています。

「読書リトリート」が2026年の旅行トレンドに

リトリートとは、忙しい日常生活から離れて、心身をリフレッシュし、自分自身と向き合うための旅や活動全般のことで、代表的なものとして森林浴やヨガ、瞑想などが挙げられます。

2026年のトラベルトレンドの1つになっている「読書リトリート」とは、本の聖地巡りや読書体験を目的とした旅行のこと。文学的コンテンツに触発されて旅行するだけでなく、本を読むこと自体も旅行の目的として重視されます。このトレンドの背景には、世界的に文学への注目が高まりつつあることも挙げられるでしょう。

読書リトリートに適した旅行先は国内外に数多くありますが、温泉地として知られる大分・湯布院もその一つ。静けさの中での落ち着いた文学体験、由緒ある温泉旅館での食事と宿泊、街の情緒を味わえる旅行プランを紹介します。

旅の図書館 ~YUFUiNFO~

湯布院の移動の拠点となるのは、JR由布院駅とその近くにある由布院駅前バスセンターです。空路でアクセスする場合は、東京(羽田・成田)、大阪(伊丹)、名古屋(中部)の各空港から大分空港行きの直行便に乗り、大分空港からレンタカー、もしくはバスで由布院駅前に向かいます。

(鉄道を利用する場合は、大分空港からバスで杵築駅まで行き、さらに大分駅で乗り換えるので、時間がかかります。空港から由布院駅前バスセンターまでバスで行くほうが便利です)

湯布院ではじめに立ち寄りたいのが、JR由布院駅隣にある「由布市ツーリストインフォメーションセンター ~YUFUiNFO(ゆふいんふぉ)~」です。県立美術館を設計した建築家 坂茂氏が手掛けた全面ガラス張りの建物はとても開放的で、遠くからでも目立ちます。

ホームに面しているため、大きなガラス越しに由布院駅を行き交う電車を見られます。タイミングがよければ、特急ゆふいんの森号やななつ星クルーズトレインを見られることも。

ここでは、観光辻馬車の予約、温泉や観光スポットの情報収集、荷物の一時預かりやチッキと呼ばれる手荷物別送サービス、レンタサイクルなどを利用できます。大きな荷物を預かってもらって、レンタサイクルで湯布院を巡るのもいいですね。(次に紹介する「ゆふいん文学の森 碧雲荘」へも自転車で行けます)

緩やかなスロープで空間を体験しながら2階へ上がると、旅に関する本を集めた「旅の図書館」と、由布岳が望める展望デッキへと導かれます。

湯布院や大分に関する旅の本だけでなく、日本全国、そして海外旅行の本もあり、蔵書は1,500冊を数えます。貸し出しカードは無料で作ることができ、旅行者でも本を借ることが可能です。

名称 由布市ツーリストインフォメーションセンター YUFUiNFO
所在地 大分県由布市湯布院町川北8番地5
開館時間 9:00~19:00(年中無休)
公式サイト http://yufuinfo.jp/

ゆふいん文学の森 文豪 太宰治ゆかりの「碧雲荘」

由布院駅から車で10分ほどの場所に、文豪・太宰治が過ごした碧雲荘がカフェとして生まれ変わった「ゆふいん文学の森 碧雲荘」があります。かつて太宰治は東京都杉並区天沼にある元日本料亭の建物・碧雲荘に下宿し、作品を執筆しました。その文化的価値とノスタルジアな面影をそのままに、宮大工により湯布院に甦ったのがこの碧雲荘です。

太宰治が暮らした場所は、青森県の「旧藤田家住宅」、生家「斜陽館」、山梨県の「天下茶屋」など数か所しか残っていません。碧雲荘は、太宰が下宿していた当時の面影を偲ぶことができる文化的価値が高い建物です。

現在は、1階が本の読める喫茶室、2階が読書スペースとなっています。昭和初期へタイムスリップした気分が味わえる和洋折衷様式の空間は、落ち着いて本を読むのにぴったりです。

和室、応接室など、部屋数が多く、空いていればどの席に座っても構いません。

飲食しながら本を読めるのは1階だけですが、食後に2階へ移動して本を読むのは自由です。

食事メニューは、大分キノコとチーズピザ、季節野菜の旬菜ピザ、牛肉々うどん。おすすめの旬菜ピザは、サラダと見まごうほどフレッシュな野菜がたっぷりのった薄焼き10インチサイズです。

ドリンクメニューは、コーヒー、紅茶、黒糖きなこミルク、冷やし甘酒、大分県産ゆず蜜ソーダ、かぼすはちみつなど。

館内のあちこちに太宰治の作品や太宰治にまつわる本、さまざまな文学作品があり、ほとんどの本は自由に読めます。太宰治をはじめとする文豪の作品(文庫)も一部販売されています。

利用には喫茶か食事の注文が必要(見学のみは不可)ですが、時間制限はなく、料金は飲食した分しかかからないので、コーヒーや紅茶を飲みながら好きなだけ読書に没頭できます。午前中から夕方までずっと本を読んでいる人もいるとか。

2階の一番奥、廊下の左側にある部屋(上写真)は、太宰がパビナール中毒のために入院した自身の実体験をもとにした小説『HUMAN LOST』(『人間失格』の原型)を書いた部屋です。入院とその間に愛する人の裏切りを知り、生涯最も辛く過酷な実生活を送ったとされています。

ほかにも2階には太宰治の作品名にちなんだ名前がつけられた部屋がいくつもあるので、ぜひ足を運んでみてください。階段を上がった正面にあるのは、『富嶽百景』に登場する“便所”で、太宰はそこで衝撃の事実(妻の過ち)を知らされ途方にくれたとか……。

文豪に思いを馳せぼんやり思考にふけるもよし。居心地の良い読書空間でゆっくり過ごすもよし。日常から離れられる碧雲荘は、読書リトリートにぴったりの場所です。

名称 ゆふいん文学の森 碧雲荘
所在地 大分県由布市湯布院町川北1354-26
営業時間 10:00〜17:00
公式サイト https://bungaku-mori.jp/bungakunomori/

湯布院温泉「ゆふいん 月燈庵」

由布岳の山麓に広がる由布院温泉にはたくさんの温泉宿がありますが、読書リトリートにぴったりなのが、喧噪から離れた山中にある「ゆふいん 月燈庵(げっとうあん)」です。もともとは杉林だったという約1万坪の自然豊かな敷地に、客室はわずか18室しかありません。

母屋は390年ほど前の建物といわれる古民家(庄屋屋敷)を山梨県から移築したもの。大黒柱には直径50センチもある栂の木が使われており、日本家屋の落ち着きを感じます。

母屋でチェックインを済ませたら、観樹橋と名付けられたつり橋を渡って、宿泊棟へ向かいます。小川に架けられたつり橋は、風を感じ、由布岳を仰ぎ見ることができる最高のロケーションです。夏には蛍、秋には紅葉が訪れる人の目を楽しませてくれます。

ゆふいん 月燈庵の客室は、全室離れ、露天風呂付きです。別館 特別客室が6棟、本館 スタンダード客室が12棟あります。今回はスタンダード客室の「文月」に泊まりました。

10畳と8畳からなるお部屋は、日本独特の四季を感じる造り。縁側からは由布岳が見えます。夜が長くなる秋には、障子に映る月の影が伸びて和のしつらえのお部屋に映えるとのこと。全室離れなので、旅館のように隣室の話し声や気配を感じることはありません。

庭に専用の露天風呂があり、好きなときに好きなだけ溢れるお湯に身を委ねることができます。そのほか、宿泊者が自由に利用できる男女別の大浴場(内湯・露天風呂)もあります。

夕食は、お食事処「月燈庵」で、四季折々の味を愉しむ会席料理を。大分や九州の食材をふんだんに使った独創的な田舎料理は、目でも舌でも楽しめるものばかり。別府港から直送される魚は季節によって変わりますが、この日は関サバと関アジが提供されました。

松茸、赤足えび、鶏肉が入った土瓶蒸しが置かれたプレートは、月燈庵を建てる際に伐採した杉林の杉を使ったものだそう。同じ土地で、形を変えて大切に使われているのがとても素敵です。

大分県で生産される黒毛和牛・豊後牛(ぶんごぎゅう)のすき焼き風は、柔らかく旨みたっぷり。おいしいお酒と料理、そしてスタッフのおもてなしに、お腹も心も満たされました。

“月の燈りを楽しむ庵”という名前の通り、月燈庵では天気がよければ月や星がよく見えます。人目を気にせず夜空を見上げながら好きなだけ温泉に浸かれるのは、客室露天風呂付きならでは。

夜は静寂に包まれて眠くなるまで本を読み、朝に目が覚めたら川のせせらぎや鳥の声を聴きながら続きを読む……。そんなふうに、時間を忘れて読書に没頭するのにぴったりなお宿です。

名称 ゆふいん 月燈庵
所在地 大分県由布市湯布院町川上295-2
公式サイト https://www.gettouan.com/

湯の坪街道散策と「CAFE LA RUCHE」

お宿をチェックアウトした後は、湯布院散策のメインストリートといえる湯の坪街道へ。大分県の特産品を扱う土産物店をはじめ、スイーツやグルメ、雑貨店など数多くの店が軒を連ねています。

お団子やコロッケなど、食べ歩きできる軽食も多いです。「ゆふいん ソフトクリーム」の湯布院産のしぼりたて生乳を使ったミルクソフトクリームは、濃厚なミルクの味わいなのにすっきりとしおいしさ。

湯の坪街道から少し歩くと、由布院を代表する観光スポットの一つ、「金鱗湖(きんりんこ)」に到着します。由布岳のふもとにあるこの湖は、明治初期の儒学者の毛利空桑(もうりくうそう)が、湖の魚の鱗が夕日を受けて金色に輝くのを見て「金鱗湖」と名付けられたとか。

湖の周囲には遊歩道があり、景観を楽しみながら散策ができます。紅葉の名所としても知られており、水温が高いため冬の早朝には湖面から湯気が立ち上る幻想的な光景が見られるそうです。

CAFE LA RUCHE(カフェラリューシュ)」は、そんな金鱗湖のほとりに佇むベーカリーカフェ。湖面を眺めながら、香り高いコーヒーを飲んだり、食事をしたりできます。

金鱗湖に面した側がガラス張りなので、店内の席からも景色を楽しめますし、気候のよい時期には自然の風を感じられるテラス席も気持ちよいです。

ランチメニューは、自家製ベーコンと木の子のタルティーヌ、たまごサンド、大分県産大葉ソーセージのホットドッグ。そのほか、焼き立てパンも店内でいただけます(木曜以外)。

タルティーヌとは、トーストしたバゲットにお好みのものを塗ったりのせたりして食べるフランス風のオープンサンドイッチのこと。このタルティーヌには、自家製ベーコンのほかに、大分県産のしいたけ、しめじ、えりんぎがたっぷりのっており、食べ応え抜群です。

カフェの2階には季節ごとに内容の変わるアートギャラリーと、文房具や雑貨を販売するショップがあります。素敵なポストカードや一筆箋がそろっているので、読書リトリートで「読む」だけでなく「書く」気分も高まったら、旅先から手紙を書いてみるのもよいかもしれませんね。

名称 CAFE LA RUCHE (カフェラリューシュ)
所在地 大分県由布市湯布院町川上1592-1
定休日 水曜日
営業時間 9:00〜16:30(オーダーストップ16:00)
公式サイト https://cafelaruche.jp/

まとめ

静けさの中で落ち着いた文学体験ができ、温泉旅館で湯けむりに癒される大分・湯布院は、読書リトリートの旅行先にぴったりです。行ってみたいなと思ったら、フライト、ホテル、レンタカー、すべてのリサーチと予約が1つのアプリで簡単にできるスカイスキャナーを使ってみてください。

料金別のおすすめに加えて、見落とされがちな旅行先を提案してくれる「すべての場所から探す」、大きく価格が下落した航空券を通知してくれる「DROPS」(アプリ限定機能)、お得な出発日を簡単に検索できる「カレンダー/チャート」といった機能で、最良の選択肢が見つかることでしょう。

参考:グローバル旅行アプリ スカイスキャナー 「トラベルトレンドレポート2026」

Post: GoTrip! https://gotrip.jp/ 旅に行きたくなるメディア