【岐阜県大垣市】1744年(延享元年)創業の造り酒屋「武内酒造」を訪ねて

岐阜県には日本酒文化が根付いており、造り酒屋の蔵数が45ほどあり、全国ランキングでも10位以内に入っています。そのなかで、西濃エリア(西美濃)に位置する大垣市は全国でも有数の自噴帯に位置しており、豊富な地下水の恵みにより「水の都、水都(すいと)」と呼ばれ、栄えてきました。

俳聖・松尾芭蕉翁は、元禄2年(1689年)秋、約5か月の「おくのほそ道」の旅を、ここ大垣で終えました。そのおり、芭蕉翁は「蛤(はまぐり)のふたみにわかれ行秋(ゆくあき)ぞ」と詠んで、揖斐川の支流、水門川の船町港から桑名へ船で下ったと伝わっています。

現在、船町川湊の水門川沿いは静かな水面にソメイヨシノの並木が生える桜の名所となっており、毎年4月下旬~5月上旬には「たらい舟川下り」が体験できます。大垣駅近くにある「岐阜町道標」から水門川(大垣城外堀)に沿って「奥の細道むすびの地記念館」までの順路は、「ミニ奥のほそ道」と呼ばれる散策コースです。

さて、そんな大垣城下には、1744年(延享元年)に創業した老舗の造り酒屋武内酒造があります。武内酒造が日本酒のおいしさを支えるためにこだわっているのは、「米」「水」「杜氏」の3つ。
特にお酒の味を左右するお米にはこだわっており、純米酒・本醸造・普通酒の原料米には岐阜県産の一般米を、純米吟醸、純米大吟醸などの原料米には「山田錦」や「雄町」、岐阜県産の酒造好適米「ひだほまれ」など、全国から選び抜いた酒米を使用しています。

年間を通じて14~15℃を保つ硬度50程の良質な中軟水を地下150メートルの自社井戸から汲み上げ、街中にある製造蔵で仕込んでいるのは、水のまち大垣ならでは。湧水のベースになるのは木曽川の伏流水ですが、地下深くから汲み上げているため、木曽三川(濃尾平野を流れる木曽川、長良川、揖斐川の3つの川の総称)の水が絶妙に混ざり合っているといいます。
水の硬度により酒の味が変わることはよく知られていますが、中軟水で醸造する武内酒造のお酒は柔らかく滑らかな味わいが特徴です。

日本酒は醪(もろみ)の搾り方でも味が変わります。両側から圧力を加えてしっかりと搾る「ヤブタ式」と呼ばれる自動圧搾機を使った方法が代表的ですが、現在武内酒造では、「槽搾り(ふねしぼり)」と「袋吊り」で日本酒を搾っています。
手間がかかるうえ、とれる量はヤブタ式に比べると若干減ってしまいますが、優しく搾ることでお酒にストレスをかけず、雑味が出ないので、純米大吟醸などの繊細な日本酒を造るのには特に向いているのだとか。

槽搾りの場合、酒粕にはお酒がかなり残っているので、顔を近づけるとふわっとよい香りが広がります。タイミングがあえば、酒粕は店頭で購入可能ですが、ファンの方も多いので毎年売り切れることも。

武内酒造では見学(要予約)も受け付けているので、気になる方は問い合わせてみてください。

9代目蔵元の武内昌史さんに、武内酒造の主な銘柄について教えていただきました。
御幸鶴(みゆきつる)は、山田錦を35%まで磨き、丁寧に醸しあげた純米大吟醸「御幸鶴 純米大吟醸 山田錦35」と、山田錦と雄町の2つの酒米を50%まで磨き、双方の良さを引き出した「御幸鶴 純米大吟醸 山田錦&雄町」の2種類。ハイクラスの銘柄で、フルーティな香りと滑らかな舌触りを愉しめるので、純粋にお酒だけを飲みたいならこちらがおすすめとのこと。

美濃紅梅(みのこうばい)は、純米吟醸、純米酒、本醸造などで、ふくよかな味わいとつつましい香りで、食中酒にぴったり。大垣城は、純米酒や上撰などで、お米の味を感じられる骨太な味わいなので、燗酒でも美味しくいただけそうです。


店頭で試飲もできるので、ぜひ飲み比べをしてお気に入りの一本を見つけてみてください。店頭でしか販売していないお酒もあるそうですよ。

軟らかい大垣の水で仕込まれた日本酒をおみやげに買い求め、帰宅後に岐阜の自然や歴史に思いを馳せつつ盃を傾けてみるのも、きっと味わい深い時間になることでしょう。
名称:武内酒造
所在地:岐阜県大垣市伝馬町1番地
営業時間:9:00~18:00
定休日:日曜日
サイト:https://www.takeuchi-shuzo.com/
Post: GoTrip! https://gotrip.jp/ 旅に行きたくなるメディア