リトアニアの首都にあるもう一つの国!?「ウジュピス共和国」に行ってみた

リトアニアの首都ヴィリニュス。世界遺産にも登録されている旧市街で有名ですが、実はこの街の一画に一風変わった「共和国」があります。

それが、旧市街の東に広がる「ウジュピス共和国」。

共和国とはいっても正式に国家として認めているわけではなく、あくまでもリトアニアの一部ですが、ウジュピス共和国の独立記念日である毎年4月1日には検問が実施され、パスポートがないと「入国」できないのだとか。

独立記念日がエイプリルフールというところが、なんともジョークっぽい感じがしますね。

「ウジュピス」とは「川向こう」の意味。ヴィリニャ川によって旧市街と隔てられており、旧市街から川に架かる5つの橋を渡ってウジュピス共和国に入ることができます。

メインとなる入口が、マイロニオ通りに面して建つロシア正教教会の近くに架かっている橋。そこには「ウジュピス共和国」の看板が掲げられていて、ここから先は別世界なのだということをアピールしています。

橋には多くのカップルが愛を誓い合った証である、南京錠がずらりと並んでいます。

ヴィリニャ川のほとりには、見つけらたら幸せになれるという「ウジュピスの人魚像」も隠れています。橋を行き来するときは、人魚の姿を探すのをお忘れなく。

現在ウジュピス共和国となっているこの地区はもともと、15世紀ごろから労働者や職人たちが住み始めた場所で、16世紀に2つの橋が架けられるまでは、旧市街とは隔絶された存在でした。その後も旧市街の発展からは置き去りにされるような形で時が流れ、しだいにうらぶれた雰囲気が生まれていきました。

ところが、ソ連支配時代の後期から、そんな独特の雰囲気を好む芸術家や若者が住むようになり、パリのモルマントルにも似た芸術家村が形成され、「ヴィリニュスのモルマントル」とも呼ばれるようになったのです。

かつては治安が悪いところというイメージがあったものの、現在はいたって平和。特別な見どころがあるわけではありませんが、独特の世界観に触れようと、多くの観光客が訪れています。

橋を渡ってすぐ左手の倉庫街では、さまざまなストリートアートが訪れる人の目を楽しませてくれます。

共和国の国旗にデザインされている、「手」をモチーフにした作品も。

こうした光景を見ていると、こぎれいに整えられた旧市街とは一線を画し、自由でちょっぴり前近代的な空気をあえて残すことが、ウジュピス共和国の人々の誇りなのだと感じられます。

ウジュピス共和国のへそともいえるのが、ラッパを吹きならす天使の像が立つ広場。「共和国」の中心にしてはずいぶん控えめな街並みですが、この広場を中心にレストランやカフェ、ギャラリーなどが点在しています。

近年ではアートフェスティバルなどのイベントが開催されるようになったこともあって、新しいお店も増加中。

「ヴィリニュスのモルマントル」と言われるだけあって、ヒップなカフェや、こだわりを感じる小さなパティスリーなど、個性的なお店が目立ちます。

ちょっとアウトローな雰囲気を漂わせる人々の姿もあって、こぎれいに整えられた旧市街とはまた違った独特の空気を感じることができますよ。

近年まで発展から取り残されていただけあって、なかば打ち捨てられたような民家のあいだに、新しいレストランやカフェが顔をのぞかせる光景は、どこか幻想的な雰囲気さえ漂わせています。

ウジュピス共和国を訪れる人々が興味津々で見ているのは、共和国の憲法。41の項目からなる憲法は、25以上の言語に翻訳され、広場の近くの通りの壁に掲げられています。

残念ながら日本語はありませんが、この憲法、中身がとってもユニークなんです。

その内容は、たとえば「誰もがユニークである権利がある」「誰もが間違いを犯す権利がある」「誰もが死ぬ権利がある、でもこれは義務ではない」「犬は犬たる権利がある」「誰もが不幸せになる権利がある」などです。

そのほとんどが、普通の国家の憲法には書かれていないようなことばかり。そこには「どう生きるかは自ら決めることができる」というメッセージが込められているような気がします。

リトアニアにあるもうひとつの国、ウジュピス共和国。自由と個性を重んじるこの「国」で、自分の生き方を見つめ直してみるのもいいかもしれません。

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