【新東方見聞録】東南アジア・カトリック教会巡りの旅へ!
|東南アジアは「宗教の宝庫」と言えます。キリスト教、イスラム教、ヒンズー教、仏教、土着信仰が同じ地域に混在している光景は珍しくありません。
その中で、ここではキリスト教を取り上げてみましょう。とくにカトリックは世界12億人の信者を有する国際宗派です。もちろん、東南アジアにおいても一大勢力を構築しています。
そしてこの地のカトリックは、日本にとっても「赤の他人」というわけではないようです。
・カトリックとプロテスタント
まず始めに、カトリックとプロテスタントの違いについておさらいしましょう。
キリスト教は、最初から諸宗派があったわけではありません。聖書の解釈の違いによってだんだんと細分化されていったのですが、それでも16世紀まではカトリック教会がヨーロッパで最も大きな勢力を維持していました。
しかし、ここでテクノロジー革命が起こります。グーテンベルク式活版印刷機の普及により、本の出版が容易になったのです。すると各地の聖職者が、独自の翻訳に基づく聖書を印刷するようになります。
今はともかく、昔のカトリック教会は無許可での聖書翻訳とその流通を禁止していました。ここで言う「無許可」とは、ローマ教皇庁の許可を得ていないということです。じつは現代でも、一聖職者が教皇庁の意に逆らう行動を起こしたら最悪破門されてしまいます。
ですがそれを大々的に行ったのが、ドイツのマルティン・ルターという人物。彼の確立した宗派は日本ではルーテル教会と呼ばれていますが、つまり16世紀以降にカトリックの教義に逆らって独立した宗派が総じて「プロテスタント」と呼称されているのです。
・ザビエルと東南アジア
日本にカトリックを伝えたフランシスコ・ザビエルは、東南アジアでも有名な人物です。
ザビエルはポルトガル人だと思っている人がたくさんいますが、そうではありません。彼はバスク人です。現在のスペイン領バスク地方は今も独立を呼びかける動きが活発ですが、ザビエルはそうした微妙な立ち位置にいる人物だったことは明記しておくべきでしょう。
彼がアジア布教に出ていた時代、今のインド以東の地域は「東インド」と総称されていました。もちろん、日本もその東インドの一部です。一方で南北アメリカ大陸は「西インド」という総称です。このあたりも、カトリック布教史を語る上で非常に重要な点と言えます。
さて、ここで手元にGoogle Mapがあればぜひご覧ください。どんな事業にも「拠点」というものは欠かせません。カトリックの東インド布教においてその拠点となったのは、インドのゴア、マレーシアのマラッカ、マカオ、フィリピンのルソン島です。とりあえずこの4ヶ所を確保しておけば、あとはどこにでも行けます。
現にザビエルも、マラッカを拠点に活動していた時期がありました。ここから現在のインドネシア東部にまで足を伸ばしていたりもします。スラウェシ島には「ザビエルのカニ伝説」というものがありますが、これは船上のザビエルが海にロザリオを落としてしまった際、後日砂浜を歩いていたカニがそのロザリオをハサミに持っていたという内容です。
・ローカライズしていく教会
カトリックが「勝手な教義の解釈を許さない」ということは先述しましたが、じつはそこに大きなゆとりがあったのも事実です。
塩野七生さんが『十字軍物語』の中で説明していますが、カトリック教会は基本的に事後報告主義です。広大な地域を福音宣教に出かける中で、いちいちローマからの了承を取っていたら時間がかかってしまいます。ですから、とりあえず現地の宣教師が決定してそれをのちほど教皇庁に報告し、問題があればそれを知らせてくれればいいというスタイルです。
そうなると、どうなるか。東インドに進出したカトリック教会は、その様式がどんどんローカライズされていきます。
現地の人に聖書の内容を教えようと思ったら、まずは口でその内容を話してやる必要があります。「本を読む」というのは、現代にたとえればJava言語でゲームが作れるくらいの高等技術です。ですが、単に読み聞かせるだけでは物足りないのも事実。だから絵を書いたり彫刻を掘ったりするのですが、そこへ土着宗教の様式を聖書の登場人物として組み込んでしまうのです。
インドネシア都市ジョグジャカルタの近郊に、ジャワの伝統様式で建てた教会があります。一見、かつて栄えたジャワ・ヒンズー寺院とほとんど変わりません。天使や十二使徒のビジュアルをそのままジャワ様式にすることで、地元の人にとって馴染みやすい教会ができるのです。
こうしたことは南米でも行われていて、十二使徒が現地で信仰されていた動物に置き換えられた例もあります。日本でも、和服を着た聖母子像やその絵画が教会で販売されていたりします。
・マナーには配慮を
アジア各地の教会を巡っていくと、こうした様々な差異に気づかされます。
ですが、ここで読者の皆様に注意していただきたいことがあります。神父さんの常駐する教会は基本的に開放されていますが、だからといって半袖Tシャツと短パンというようなラフな格好で赴くのはいいこととは言えません。
そして教会は祈りの場ですから、強引な写真撮影も禁物。常に地元の信者さんに配慮することが肝心です。
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