ヨーロッパで最も若い国、いまだ秘境感漂うコソボってどんな国?

2008年に独立を宣言したヨーロッパで最も若い国、コソボ共和国。いまだに紛争のイメージがつきまとうコソボですが、近年その文化遺産と自然に注目が集まりつつあり、少しずつ観光客も増えています。

日本人が一般にイメージする「ヨーロッパ」とはまったく異なる世界が広がる、コソボとはどんな国なのでしょうか。

・コソボ基本情報

東ヨーロッパのバルカン半島に位置するコソボ共和国は、面積が岐阜県と同程度のおよそ1万900平方キロメートル、人口約180万人の小国。旧ユーゴスラビア時代にはセルビアの一部でしたが、2008年に独立を宣言しました。

主要民族はアルバニア人で人口の約92パーセント、ついでセルビア人が5パーセント、トルコ人などその他の民族が3パーセントを占めています。

アルバニア人の多くがイスラム教を信仰しているため、ヨーロッパでは珍しくおもな宗教はイスラム教。セルビア人はおもにキリスト教のセルビア正教を信仰しています。

2018年1月現在、コソボはEUには加盟していないものの、通貨はEUの共通通貨であるユーロが使われています。

・コソボへの道

2018年1月現在、日本とコソボを結ぶ直航便はなく、オーストリアのウィーンやトルコのイスタンブール等で最低1回は乗り換える必要があります。バルカン半島を周遊する場合、マケドニアのスコピエやアルバニアのティラナなどからバスで入国する方法もポピュラー。

日本パスポート保持者は観光目的の場合、90日以内の滞在ならビザは不要です。

・いまだ解消されないセルビアとの対立

日本やアメリカを含む100ヵ国以上がコソボの独立を認めているものの、ロシアやスペインなどコソボの独立を認めていない国も少なくないのが実情。

なかでもセルビアは「コソボはセルビア共和国内のコソボ・メトヒヤ自治州である」という認識を現在も崩しておらず、「独立国家」としてのコソボの地位は盤石であるとはいえません。

1999年のコソボ紛争終結以降、コソボに住んでいたセルビア人のほとんどはセルビアへと避難しましたが、今も人口の5パーセント程度のセルビア人がコソボ内で生活しており、アルバニア系住民とセルビア系住民の対立は解消されていません。。

コソボを訪れれば、否が応でも「国家とは」「民族とは」と考えさせられることでしょう。

・コソボの治安

コソボの治安に対しネガティブな印象を与えてしまうようなことをお話しましたが、実際のところコソボの治安は一般に思われているほど悪くはありません。

スリやひったくり等の軽犯罪への警戒は必要ですが、所持品の管理に注意し、夜遅くにむやみに出歩かない、ひとけのない雰囲気の悪い路地に入り込まないといった当たり前の注意を怠らなければ危険な目に遭う可能性は低いといえるでしょう。

筆者は女性一人でコソボを旅しましたが、特に身の危険や恐怖を感じるようなことはなく、予想以上に平和な印象を受けました。

ただし、2018年1月現在、セルビアとの国境に近い北部の一部地域は、外務省海外安全ホームページ上で「危険レベル2(不要不急の渡航は止めてください)」に指定されており、この地域への旅行やセルビアからの陸路での国境越えはおすすめできません。

なお、首都プリシュティナを含む主な観光地に関しては、危険情報は出されていません。

・首都プリシュティナ

コソボの首都が、60万の人口を抱えるプリシュティナ。オスマン朝時代のイスラム建築や、社会主義時代の無機質で巨大な建造物、奇抜な現代建築などが混じり合い、独特の町並みを形成しています。

マザー・テレサ大通りの北側には旧市街が広がり、トルコ風のモスク「ファーティヒ・ジャーミヤ」や、コソボ博物館など、プリシュティナを代表する観光スポットが点在しています。

しかし、プリシュティナで最も面白いのは、歴史的建造物や博物館ではなく、アジア的な雑多さに圧倒されるオールドマーケットかもしれません。

ファーティヒ・ジャーミア周辺に広がる昔ながらの市場には、野菜や果物はもちろんのこと、食器などの日用品から衣類、タバコ、コソボグッズまで、あらゆるモノがごちゃ混ぜになったカオスの世界。

両側に露店が並ぶ道路を、たくさんの買い物客や台車、さらには自動車までが通り過ぎていく混沌とした風景を見ていると、アジアの市場に迷い込んだような気分になります。しかし、これも紛れもなく「ヨーロッパ」の風景なのです。

ヨーロッパの先進国に比べるとまだまだ観光客が少ないこともあって、コソボの人々は外国人に興味津々。地元の人々との楽しい交流が待っていることでしょう。

・古都プリズレン

オスマン朝時代の美しい町並みが残るのが、コソボ南部に位置する古都プリズレン。

ローマ帝国やセルビア王国、オスマン帝国、オーストリア=ハンガリー帝国など、さまざまな勢力に支配されてきた複雑な歴史から、異文化と異民族が混在するエキゾチックなムードが特徴です。

町を象徴する風景が、アルバニア語で「ウラグリ」と呼ばれるオスマン朝時代の石橋の向こうにモスクやなだらかな山が広がる風景。橋のたもとは、イスラム情緒薫る美しい町並みが見渡せる絶好のフォトスポットです。

端正な尖塔を見せているのは、プリズレンを代表するモスクである、スィナン・パシャ・ジャーミア。プリズレンで最も美しいといわれるモスクで、内部では、天井に描かれた幾何学模様に目を奪われます。

町の東にある丘の上にそびえる城塞からの景色も必見。オレンジ屋根の家々のあいだから、モスクの尖塔や教会のドームが顔をのぞかせるプリズレンのパノラマが楽しめます。

・聖地ペヤ

コソボ中西部のペヤ(セルビア語:ペーチ)は、セルビア正教の総主教座が置かれているセルビア人の聖地。

町のはずれには、ペヤ総主教修道院やヴィソキ・デチャニ修道院など、「コソボの中世建造物群」として世界遺産に登録されている建造物があります。セルビアがいまだにコソボを手放さない最大の理由のひとつがここにあるのです。

ペヤの町の西端にひっそりとたたずむのが、鮮やかな赤の外観が印象的なペヤ総主教修道院。緑に囲まれた敷地には、俗世間から隔絶された聖地の雰囲気が漂っています。

色鮮やかなフレスコ画や荘厳なイコノスタスで彩られた内部は、息を呑むほど神秘的なエネルギーに満ちた空間です。

いまだ秘境感漂うバルカン半島の小さな国・コソボ。この国を旅したら、今まで知らなかったヨーロッパの表情に驚かされることでしょう。

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