チェコの国境の町ミクロフにある「ファミリー・ワイナリー・ミクロフ」でおいしい南モラヴィア産ワインを味わう

ミクロフ(Mikulov)は、チェコの南モラヴィア地方のオーストリアとの国境に位置する、人口1万人ほどの小さな町です。

チェコは国民一人当たりのビール消費量が世界一で、ビールのイメージが強い国ですが、ここ南モラヴィア地方では、ぶどうの栽培が盛んで、品質の高いワインが多くつくられています。

チェコ国内で消費されるワインの大部分が南モラヴィア地方で生産されており、そのうち80%以上が白ワインです。

ミクロフでは、かつてディートリヒシュテイン家が税金として民からワインを集めてお城の地下の大樽に貯蔵し、そのワインを販売していたという歴史的背景もあるほど。

チェコ人に聞くと、「以前はボヘミア(チェコ西部~中部)の人はビールを好み、南モラヴィア(チェコ南東部)の人はワインを好む」というステレオタイプなイメージがあったそうですが、今日は流通量も増え、ビールとワインのどちらをよく飲むかは個人の好みによる、とのこと。

それでも、実際に南モラヴィア地方を旅してみると、ここの人たちは本当にワインが好きなんだなということを実感します。その理由は、ワイナリーが身近にあり、かなりクオリティが高いワインを手ごろな値段で購入できることにあるのかもしれません。

ファミリー・ワイナリー・ミクロフ・カタリーナ・シーロヴァー

今回はミクロフの家族経営ワイナリー「ファミリー・ワイナリー・ミクロフ・カタリーナ・シーロヴァー(チェコ語ではRodinné Vinařství Mikulov Kateřina Šílová)」におじゃまして、ワインづくりのお話を伺ってきました。

看板の「Vinařství(ヴィナスイトヴィー)」とは、チェコ語でワイナリーのこと。

カタリーナ・シーロヴァーというのはオーナーのお名前で、出迎えてくださったのはオーナーの娘さんのクララさん。偶然ですが、クララさんは日本に興味があり、流暢な日本語を話す方でした。

ファミリー・ワイナリー・ミクロフ・カタリーナ・シーロヴァーはレストランを併設したワイナリーで、手前に客席、奥にワイン製造をする工房があります。

奥に見えるのが貯蔵タンクとセラー。この建物は約300年前に建てられたもので、5~6年前に現在のオーナーが購入し、ワイナリーを始めたそうです。

ファミリー・ワイナリー・ミクロフのワインについて話をしてくれたPetrさん。

チェコには、およそ20,000ヘクタールのぶどう畑があります。もちろん、これはワイン大国として名高いフランスやイタリアに比べるとかなり小さいですが、チェコで生産されるワインの大部分がここ南モラヴィア地方でつくられているとのこと。

こちらは、ぶどうから果汁を圧搾するワインプレス機(搾汁機)です。

ミクロフ近郊のぶどう畑から集められたぶどうは、このコンテナでワイナリーに運ばれてきます。大きなコンテナを使わないのは、下の方のぶどうが重さで押しつぶされるのを防ぐためとのこと。

スーパーマーケットなどで安価で販売されている大量生産のワインは、ぶどうから限界まで果汁を搾ろうとするから、どうしても渋みや雑味が出てしまうそうです。

しかし、このワイナリーでは、やさしくぶどうを圧搾するので、渋みや雑味が出てきません。家族経営の小規模ワイナリーだからこそできることなのだろうな、と感じました。

圧搾した果汁をタンクに移し、発酵させる過程を説明してくれるPetrさん。ここの人たちが同じ志を持ち、ワインの作り手として誇りを持ち、おいしいワインを作ろうと心を砕いている様子が伝わってきます。

ワインの作り手がこの地で尊敬を集める職種とされているというのも納得です。

ミクロフでは、毎年8月下旬~9月中旬にかけて、発酵途中のぶどうを原料としたアルコール飲料「ブルチャーク」を飲めます。いわばワインになる前の飲み物で、この時期だけのお楽しみです。

オーナーのカタリーナ・シーロヴァーさんが、仕込んでまだ1日という、ブルチャークになる前のアルコールを含まない果汁を飲ませてくれました。アルコールを含まないなら、ぶどうジュースと同じかと思いきや、やっぱり単なるぶどうジュースとは違うのです。

ブルチャーク、そしてすべてのワインの発酵の様子をチェックし管理するのが、オーナーのカタリーナ・シーロヴァーさんの重要な役目とのこと。経験に裏打ちされた技能なのでしょう。

地下のセラー。現在は貯蔵用には使われていませんが、催しなどに使うことがあるそうです。

せっかくなので、夜にもおじゃましてワインとチェコ料理をいただきました。

おすすめしてもらったのは「Sylvánské zelené 2017 Rodinné Vinařství Mikulov」という白ワイン。ここでしか飲むことができないワインで、とても人気があるそうです。

雑味がなくすっきりとしていて、とても芳醇な味わい。こんなにおいしいワインが1本225コルナ(約1,125円)で飲めるなんて驚きです。

ワインといっしょにチェコ料理もいただきました。グラーシュはパプリカを使った濃厚な牛肉のシチュー。クネドリーキと呼ばれるパンが添えられています。キシキシとした食感のグリルチーズ(焼チーズ)もチェコでよく食べられるおつまみです。

また、今回初めて食べたのが、ラード(豚脂)のペースト。チェコ語では「Sádlo se škvarky (サードロ・セ・シュクバルキ)と言います。

「ラードをパンに塗るなんて、くどいのでは?」と思いきや、実際に食べてみると、しつこさはありません。ペーストの中にカリカリとした食感のもの(これも実はラードを炒ったものだそう)が入っていて、食感も楽しいです。

上に紫玉ねぎのスライスがのっているので爽やかな辛みも加わり、豚脂とは思えない味わい。

家族や友人が集まり、談笑しながら楽しそうにワイングラスを傾けつつ過ごす夕べ。ゆるやかで、親密な時間に、南モラヴィア地方の人たちのスローライフの一部を垣間見た気がしました。

チェコの南モラヴィア地方に行ったら、ぜひこの土地で作られるおいしい白ワインを味わってみてください。

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名称 Rodinné Vinařství Mikulov Kateřina Šílová
住所 Vídeňská 5 / 237 692 01 Mikulov
Webサイト http://pijuziju.cz/

[取材協力:チェコ政府観光局]