【日本居酒屋紀行】神奈川県小田原市が誇る最高の居酒屋「大学酒蔵」
|どんな居酒屋にもそのお店に通う人々の思いが重なり、そしてそのたくさんの思いはそれぞれの居酒屋が醸しだす独特の雰囲気となっていく。それゆえ、日本各地に多く人々を虜にする居酒屋がキラ星のごとく数多存在しているのだ。
例えば、あの吉田類も絶賛する大衆酒場、東京・江東区南砂町の「山城屋酒場」に、新潟の郷土料理からラーメンや洋食まで味わえる新潟市・古町の老舗居酒屋「喜ぐち(きぐち)」、北海道随一の日本酒の品揃えと美味しいツマミのお店札幌市北区「味百仙(あじひゃくせん)」、食い倒れの町大阪では、鴨の焼き鳥が味わえる「とり平」、そしてあの開高健も愛したクジラのおでんが楽しめるたこ梅、さらには名古屋にいったら絶対に行っておきたい居酒屋「歓酒亭 大安(かんしゅてい だいやす)」などなど、数え上げればキリがない。
そんな全国にある美味しい居酒屋の中から、今回は、神奈川県小田原市にある最高のコの字居酒屋をご紹介したい。
お店の名前は「大学酒蔵」だ。
・まがうこと無き本物の酒場、それが「大学酒蔵」
こちらのお店、小田原駅からは歩いて15分程度の場所にある。
現在の多くの都市は駅が中心となった町づくりがなされているため、不便な場所だと感じるかもしれない。しかしながら小田原は江戸時代よりも前から小田原城を中心として成立していた町。
江戸時代になり東海道が整備されたため、旅人の往来によって東海道を中心とした発展を遂げていく。
さらに明治に入ると時の明治天皇が地引網漁の様子を行幸(ぎょうこう)したことから「御幸の浜」と呼ばれ、小田原の魚介類はさらなるブランドを得る。漁場は海産物による莫大な富を生み、当時の網元が創業した料理店「だるま料理店」は、現在国の有形登録文化財にも指定されているほどだ。
そんな小田原の歴史が積み重なっているエリアに鎮座するのが今回ご紹介する「大学酒蔵」なのだ。
ひとたび暖簾をくぐると、このお店が積み重ねてきた素晴らしい歴史を感じることができるだろう。
・何を食べても美味しい、それが「大学酒蔵」の流儀
こちらのお店、何を食べても美味しいのだが、日替わりの短冊メニューからオーダーしたい。
特にその日あがった魚の料理は、どれも絶品だ。
そんな美味しい酒の肴と一緒に、美味しい酒を味わう。飲兵衛にはたまらない、言葉にできない、つい笑みが溢れてしまう瞬間がここにはあるのだ。
小気味のいい包丁とまな板の音、テレビから流れる相撲の音、そして風格のあるコの字カウンター、常連さんとお店の方との会話、それら全てがこのお店の素晴らしい酒の肴だということに気が付く。
もし嫌いでなければ、小田原産のレモンを使ったレモンサワーを味わっておきたい。
美味しい酸味がキレよく味わえる、香り高いレモンサワーは、「大学酒蔵」のフライによく合う。
お腹に余裕があるのであれば、ミックスフライをオーダーしておきたいところだ。
この日、シメにオススメされたのは、アンコウ鍋。
相模湾の豊かな恵みをシンプルな醤油ベースのダシでいただくアンコウ鍋は素晴らしい味わい。
もし小田原を訪れる機会があるのであれば、こちらのお店を訪れてみてはいかがだろうか。
駅から少し離れていて旅人には少し不便かもしれない。ただ、この場所にあるからこその積み重ねを愛しく思える、そんな旅の目的地になる居酒屋かもしれない。
そんな「大学酒蔵」に入学したのなら、きっと季節ごとの美味しい相模湾の魚を肴に、定期的に小田原を訪れたくなるのかもしれない。
<お店の情報>
お店 大学酒蔵(ダイガクサカグラ)
住所 神奈川県小田原市本町2-14-3
営業時間 17:00 〜 21:00
定休日 日曜日・祝日