【日本麺紀行】知られざる岡山ラーメンの原点の1つ / 岡山市東区西大寺の「八方」
|日本人だけでなく世界でも認められているグルメの1つと言えばラーメン。
日本全国には数えきれないほどのラーメン店があり、もちろん知られざる名店がキラ星のごとく存在している。
例えば、西日本でいえば広島市民を魅了し続ける「陽気」、岡山市民を魅了し続ける「天神そば」、山口県周南市民が愛するスター系ラーメンの「第三スター」や岩国市民に愛され続ける「寿栄広食堂」 などが存在している。
甲信越地方では新潟県長岡市民が足しげく通う「青島食堂」や長野県松本市民が愛するイラン人が作る絶品ラーメン、「ラーメン藤」に、あの田中要次さんも愛すると言う長野県木曽町の「あすなろ」のチャーシューメンなどが挙げられる。
東海地方では、いまや全国区となった名古屋名物の「台湾ラーメン」を初め、一宮市民を魅了しつづける「ベトコンラーメン」に、知られざる岐阜県多治見市の「台南ラーメン」などが挙げられる。
もちろん北の大地・北海道にも、北海道ラーメンランキングで1位を独占し続ける味噌ラーメンのお店「彩未」や、あの北川景子さんを魅了したショウガラーメンの名店「信月」など、数え上げればきりがない。
首都圏でいえば、横浜市民が愛するソウルフード・サンマー麺の名店「玉泉亭」、に平塚市民が愛して止まない独自の平塚タンメン、日本で初めてミシュランの星を獲得したラーメンなど、もはや挙げていくことが困難なほど、さまざまな名店がひしめき合っているのだ。
そんな日本中にある美味しいラーメンの中から、今回は岡山市民がこよなく愛する岡山ラーメンの名店をご紹介したい。
お店の名前は「八方(はっぽう)」だ。
・お店の最寄りは岡山駅から5駅、西大寺駅
こちらのお店、岡山駅から赤穂線に乗って5駅の場所にある西大寺駅。
こちらの駅、あまり知られていないかもしれないが、毎年2月に行われる日本三大奇祭り「西大寺会陽」でも有名な場所で、明治から昭和初期、この地は西大寺市として西大寺紡績、西大寺織物、そして山陽板紙、西大寺製紙、など織物や製紙業で非常に繁栄していた場所であった。
しかしながら時代の流れとともに商店街を中心とした西大寺市の街は活気を失ってしまう。
しかしながら、時代の流れによって取り残されてしまった西大寺市の中心街は、風情ある町並が残っており、大ヒット映画「ALWAYS 三丁目の夕日」の撮影地にもなるほど、ノスタルジー溢れる、郷愁を感じられる街となっているのだ。
そんなどこか懐かしい街・西大寺を代表するラーメン店、それが今回ご紹介する「八方(はっぽう)」なのだ。
・多くの地元の方々が集う人気店、それが「八方(はっぽう)」
岡山の中心である市街地からはかなり離れているため、田舎のラーメン店と思ってしまうかもしれないが、それは違う。
こちらのお店は多くの地元の方々が集う人気店であり、平日ならランチタイムは非常に混雑しているし、休日ともなれば、ランチタイムを少し外してお伺いしたとしても、行列になっている事もあるほどの人気店だ。
その人気を裏打ちするように、多くの著名人達のサインがお店の中には存在している。
座席は、家族用のテーブルや小上がり、学生さんやサラリーマン向けのカウンター、そして、鉄板焼き専門のカウンターなど、用途に応じた座席が用意されており、お店側の配慮も感じる事ができるだろう。
・岡山ラーメンの原点の1つ、それが「八方(はっぽう)」
実はこちらのお店、もともとは「日の出」という屋号で岡山駅の西口にある奉還町で営業していたお店。
奉還町の名の由来は政奉還の際に、失職してしまう当時の池田藩の武士への手当である「奉還金」(家禄奉還金)が支払われ、その奉還金をつかって武士がこのエリアで商売を始めた事に由来している。
しかしながら武士が商売を行ったお店はほぼ全てが倒産、現在の奉還町で残っているのはほぼ第二次世界大戦後に開店した店がほとんどである。
岡山大空襲によって焼け野原となってしまったこのエリアで産まれた物の1つが岡山ラーメンだ。
そしてその岡山ラーメンの礎を造り上げたラーメン店の1つこそ、「日の出」(現在の八方)なのだ。
こちらのお店で味わえるメニューはたくさんあるのだが、是非味わって頂きたいのが、多くの人々から今なお愛されているラーメン。
注文して届けられるラーメンからは非常に香ばしい醤油の美味しい香りを感じる事ができる。
まずはスープだが、地元の醤油を使った三代つづく醤油ダレと豚骨スープの相性は抜群。
濃厚な中にも甘みとウマミを感じる事ができるスープはこれだけでもこちらのお店を訪れて味わう価値があると言えるほどのウマさだ。
麺はそのおいしいスープの味わいを絶妙に感じられる細打ちのストレート麺。
やや固めに茹でられている麺は、コシのある食感とともに美味しい喉越しも楽しめる麺となっている。
そして特筆すべきはチャーシューだ。
チャーシューメンと言っても過言ではないほどボリュームのあるチャーシューは、肩ロース1枚、豚バラが2枚と合計3枚のチャーシューがラーメンに提供されている。
しかもそのチャーシューの味わいも丁寧な仕事を感じられる味わい。
醤油のもつウマミや甘みそしてかすかに感じる香ばしい苦みは、このお店でしか味わえない味わいに違いない。
・お腹が空いている方にオススメしたい、へた丼
そんなおいしいラーメンに追加で注文したいサイドメニューそれが、へた丼だ。
へた丼は美味しいチャーシューの切り落としをつかったこちらのお店のオリジナルの丼。
ネギに味付け海苔、そして少し甘めでショウガの効いたタレで味付けされたチャーシューが載せられたヘタ丼は、それだけでも非常に美味しいことは言うまでもない。
そんな美味しい丼メニューに、こちらのお店特製のラーメンスープをかけてお茶漬けスタイル味わう。
まさに絶品の味わいがそこにはある。
多くの地元の方々に愛されている岡山県岡山市東区西大寺のラーメン店「八方」。
もしも岡山を旅行する事があるのであれば、こちらのお店に立ち寄って、地元の方と肩を並べて、美味しいラーメンを味わってみてはいかがだろうか?
そんな地元の方々の日常の中で味わう美味しいラーメンは、美味しいだけでなく旅情もたっぷりと感じる事ができるラーメンとなるに違いない。
そして、そんな旅情も楽しめる味わい深いラーメンを楽しんだのなら、西大寺という街が持つノスタルジー溢れる世界へと歩みを進めてみるのもいいのかもしれない。
きっとそこには、この地を旅するからこそ味わえる、そんな潮風が吹いているに違いないのだ。
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お店 八方 (はっぽう)
住所 岡山県岡山市東区西大寺上2-7-45
営業時間 11:00 ~ 20:00
定休日 日曜・第3月曜