うどんマニアが最後にたどり着くと言われる聖地。岐阜県・多治見市「信濃屋」の香露かけうどん


うどんと言えば、讃岐うどんや稲庭うどんなど、全国各地にさまざまなうどんがあり、独自の進化を遂げている。

讃岐や稲庭だけでなく、長崎県には五島うどんがあり、群馬県には水沢うどん、富山県には氷見うどんなど、単純にうどんそのものの種類もたくさんあり、そのうどんに合うツユや具が、それぞれの地域でそれぞれの味を醸成してきたのだ。

そんな中でも、多くのうどんマニアが最後にたどり着くと言われる聖地がある。それが今回ご紹介するお店、岐阜県・多治見市にある「信濃屋」だ。

・営業時間が短すぎる
実はこちらのお店、営業日が水曜・木曜・金曜・土曜、そして営業時間が11時30分から15時頃の売り切れまで、と非常に限られているため、このお店を目的に早朝から岐阜県の多治見市に行く、という事が無い限り、味わう事が出来ないのだ。

特に平日に仕事があるという方にとっては無理難題と言われるほどのお店と言っても過言ではない。

・ツユが香るうどん「香露(ころ)」
こちらのお店で味わえる絶品うどんとは「香露(ころ)」。

東海エリアではよく目にするうどんの品書きに「ころ」というものがある。冷やかけうどんの一種でたまり醤油をベースにした冷たいダシがかけられたうどん、それが「ころ」なのだ。

その「ころ」の発祥のお店こそ、こちらの信濃屋。

うどんに冷たいつゆをかけて薬味のネギとおろしショウガとゴマのみ。うどんの味に絶対の自信が無ければ商品として出す事などできない、ごまかしの効かないうどん、それが「ころ」だ。

・メニューが3種類しかないうどん屋それが「信濃屋」
こちらのお店には、メニューが3種類しか存在していない。

うどん(温かいうどん)、ころかけ(冷たいうどん)、そして支那そばの3つだ。

通常のうどん屋にあるカレー南蛮や月見うどんのような様々な種類のうどんや、天ぷら、おにぎり、いなり寿司などのサイドメニューは一切ない。純粋にうどんだけで勝負するお店、それこそが「信濃屋」のスタイルなのだ。

・表現しようがないほどウマいうどん
こちらのうどんは食べた者だけにしか分からない、そういっても過言ではないだろう。

見た目は非常に太いうどんであるが、ひとくち口に含むと、うどんの表面がふわっと口の中で広がっていき、滑らかに溶けていく感覚を覚える。

そして口の中いっぱいに小麦の甘みとウマミがひろがり、喉の奥底へと何の抵抗も無く吸い込まれていく。

しかし、ただ溶けていくだけではない。噛めばもちもちとした歯触りの奥にしっかりとしたコシがあり、歯をぐいっと押し返してくる力強さがある。

・まさにツユが香る「香露(ころ)」
そんな絶品のうどんに合わせるのが、たまり醤油と鰹節のダシだ。

現在は4種類の醤油を合わせて昔のたまり醤油の味を再現し、鰹節のダシを加えて寝かせた香り高いツユは、これだけでも絶品の味わい。

そんな絶品のツユに絶品のうどんを合わせるのだから、ウマくない訳がない。

このどっしりとした香り高いツユに、絶品のうどんをしっかりと絡めて食べてもらいたい。そのうどんはこの信濃屋でしか食べる事が出来ない味である事を痛感する事だろう。

・想像を絶するうどん、それが信濃屋のうどん
実はこちらのうどん、そのうどんを作るための時間がその営業日と営業時間の短さになっているのだ。

閉店後、午後4時過ぎには、翌日のうどんの仕込が始まる。またこちらのうどんは、讃岐うどんでよく用いられる技法である足踏みは一切せず、手だけで捏ねるのだそうだ。

じっくりと粉と塩水を合わせるだけで1時間半、それから捏ねるだけで1時間。合計2時間半かけてうどんの生地を作り上げている。

さらにこの生地を一晩寝かせて翌日のうどんとして使うのだそうだ。

そしてさらに驚くのがゆでる時間。こちらのうどん、1時間かけて茹で上げられている。

この丁寧な仕込み、そして1時間かけて茹で上げられるからこその口溶け、そして2時間半ほど手でこねあげられたことによるコシの両方を堪能できるうどんは他では絶対にない、と言い切れるほどだ。

もちろんツユにも細かい調整が加えられて、晴れてお客様のもとに運ばれるのだ。途方も無い手間と時間をかけて作られるうどん、それが信濃屋のうどんなのだ。

名古屋で創業され、今の東海圏の「ころ」うどん文化の発祥となった信濃屋。

戦争によって昭和23年に多治見に疎開をし、この地から力強く発信されつづける「ころ」うどんの香りは、平成の現代になってもなお、人々の胃袋を魅了し続けている。

もし岐阜県を訪れる事があれば、是非こちらのお店を訪れてみてもらいたい。

そこにはきっと、戦前から多くの人々を魅了した東海地方の文化そのものを感じられる大切な何かがあるにちがいない。

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お店 信濃屋 (しなのや)
住所 岐阜県多治見市上野町3-46
営業時間  11:30~売切れ次第終了(14時には売り切れの場合が多い)
定休日 日曜・月曜・火曜












この記事のお店・スポットの情報

お店・スポット名 : 信濃屋 (しなのや)

住所 : 岐阜県多治見市上野町3-46